第10章 人斬り
戦士たちはニーナの家に案内された。
彼女は病弱な母と二人暮らしだったが、今は岡田もこの家で暮らしている。
戦士たちは今後について話し合った。
その時、翔が客間の隅に置かれているあるものに気づいた。
あるものとは日本刀であった。
「翔さん?」
と、ハニーが言い寄ってきた。
「この刀、真剣だ。21世紀の人間が日本刀持ち歩くとは、やはり只者ではない。う~む。刃こぼれもしている。そしてこの刀と岡田からは血の匂いがする」
「スイマセン、その刀形見なんで」
「えっ?ああ……すまん。いい刀だなと見惚れていた。なあ、岡田さんよ、アンタはこの刀で人を斬った事があるか?」
「はあ?何を言い出すんですか」
その時だった。
外が騒がしくなった。
道の真ん中で3人の若者が女性を人質にして、金を要求していた。
戦士たちや岡田、ニーナも外に出た。
「あいつらはさっきのチンピラ共だ」
「助けて~」
「リリーちゃん!」
大声でニーナが叫んだ。
「知り合いか?」
「はい。幼馴染です」
「ピーラ、ニーナだ」
「ああ、あのフーアムもいやがる」
「もう、誰も殺したくないのに……争いなんかしたくないのに」
岡田が下を向いて小声でそう言った。
そして彼は家から刀を持ち出してきた。
「みんな、いいか、誰も手を出すな」
「翔さん、でも」
「いいから黙ってみてようぜ」
「その娘を放せ。僕はもう無意味な戦いはしたくない」
「はあ?てめ~のせいで、ニーナを逃がしちっまたから、俺らジョーカーさんから100万マーネ持ってこいと言われているんだ」
「僕がそのジョーカーを倒す。だから」
「うるせ~!俺たちも楽しんでいるからいいんだ」
「おい、そういえばコイツ、言葉が話せるようになったみたいだな」
「それがどうした。いいか俺たちはブーギョ隊も恐れね~人間だ」
ブーギョ隊……我々の世界の警察のようなもの。
国によって、リスポ隊、サーツ隊など、呼び方が違う。
「言葉は通じても、僕の想いは通じないか」
「当たり前だ。オラ~この女殺されたくなければマーネ持ってこい」
「最後のチャンスだ。10秒以内にその娘を放せ」
「うるせ~」
「1、2、3、4、5……」
「おい、あのフーアムを殺れ」
「ああ」
残りの二人が岡田に襲い掛かってきた。
「8、9、10……馬鹿共」
彼の目が鋭くなった。
気の質も変わった。
まるで別人だ。
「今からのお前らの相手は岡田半次郎じゃなく、人斬り夜叉が相手する」
そう言って、刀を抜くことなく、鞘のみで、敵の二人に重い一撃をそれぞれ与えた。
「ぐわ~」
「いて~」
「チーン、カース……クソ野郎」
「お前のその首を刎ねてやろう」
そう言って鞘から刀を抜いた。
「(や、やばいぞコイツは……ジャーカーよりやばい……)」
「どうするんだい?チンピラの兄ちゃんよ。夜叉と修羅のどちらかを相手するかい?」
「翔さん」
「(コイツも恐ろしい目をしている)分かった。俺の負けだ」
「ジョーカーという奴はどこにいる?」
「ここより西へ行くとボロイ小屋がある。そこにジョーカーと50人の仲間がいる」
「そうか。これからは更正してまともに生きろよ」
「あ、ああ」
3人はブーギョ隊に連行された。
野次馬たちも去っていき、いるのは戦士たちとニーナと岡田だ。
「さて、岡田さん。いや、人斬り夜叉、今度は俺とアンタとの戦いだ」
「僕は無意味な戦いはしたくないんです」
「じゃあ、何故人を斬ってきた?」
他の戦士たちは驚きのあまり言葉が出てこないようだ。
「岡田さんが人斬り」
「スイマセン。ニーナさん。こんな僕を助けてくれて……21世の頃僕は人斬り夜叉と呼ばれ、多くの人を斬ってきました。ジャッキー・リーさんもある組織から暗殺の依頼が来たので……でもそのとき暗闇、いや、時空に飲まれこの世界に来た……そして僕はもう人を殺さないと決めたんです。この世界で平穏に暮らしたい。ですから翔さん、あなたとも戦えない」
「だが、俺は戦いたい。天神流25代目としてな」
「天神流!そうでしたか……22世紀末まで伝わっているんですね」
「ああ」
「天神流17代目月形、いや、神威瑠奈さんはジャッキー・リーを除き、僕が唯一殺せなかったお方です」
月形瑠奈……天神流17代目。
神威龍一の師匠でもあり、妻でもある。
また、表向きは喫茶店を経営しているが、裏社会ではアルテミスと呼ばれるプロの始末屋でもある。
「そうか。17代目と戦ったことがあるんだ」
「はい」
「なら17代目を殺せなかった分、25代目を殺してみないか?」
「お断りします」
「そうか」
「それより、ジョーカーたちの退治に僕は行きます」
「もちろん俺も行くぜ」
「私も行きます」
「ニーナさん、いけません。危険すぎます。それにお母上の近くで面倒を見てあげてください」
「ジョーカーは、しつこく私を狙ってきました。ですから私はその男を見たい」
「おい、ハニー」
「はい」
「あと、マルスとジュピター、ゴットンたちはおばさんの面倒を診てやれ。俺と岡田とニーナとで悪者退治してくるわ」
「翔さん」
「ほら、行くぞ。ジョーカーの次は夜叉だから」
「えっ!?」
3人はジョーカーたちがいる小屋へ向かった。
だが、魔王が復活しようとしている。
だが、そのことをまだ戦士たちは気づいていない。