もらってくれますか?
短編です
最近休みになると近所の図書館に通っている。
もともと本を読むのが好きだったけど、社会人になってから、買った本はほとんど積読、新しい本を買うのも億劫になっていて、本を読む機会が減っていた。
そんなある日、通勤途中にあった、古民家が改装されて、小さな古本屋のような物になった。カフェが併設されていて、そこの本を借りて読むこともできる。カフェ併設型の図書館として、周辺住民に好まれ始めた。
初めの頃は忙しさにかまけて、前を通るだけだったんだけど、久しぶりにちゃんとした休みが取れてから、思い切って足を運んでみて正解だった。
まず、蔵書量が半端ない。店の奥まで本がずらりと並んでいるし、内容も手広く扱っているから、気になる本が沢山あった。
そして何より、店主が・・・若いイケメンさんだった。
いや、決して、その、店主が好みだったから通っているとか、そう言うのではなくですね!ただ、その、読みたかった本が置いてあったから!そう、ソレが目的で!
「お、いらっしゃい」
店主の笑顔に脳が焼かれました。
はい。そうです。店主が目的で来ています。やましい女ですみません。
いやでもさ、若いイケメンが、図書館カフェ開いてたらなんか気になるでしょう!?私含め、お客さんはほとんど女子だし!そして何より気さくなのよ・・・。客の顔を覚えてるみたいで、私は2回目にして「お、こないだ○○って本買っていた方!」って満面の笑顔を向けられてさぁ・・・・。疲れた社会人には、そう言うのが効くのよ・・・。
ま、まぁ!?本読むの、もともと好きだし!新しい本を買わずに出会えるから!通っているだけで!?他意はないって言うか!?推し活、そう推し活してるの!!それだけ!!
それに、他の人とのやり取り見てると、結構チャラいというか、新しいアクセとか、化粧変えたとか、髪の毛切ったとか・・・そう言うのにすぐ気づくから、女子のファンが増えている・・・。なんて女たらしなの・・・。まぁかく言う私も、その毒牙にかかった女なんだけど・・・。
「コレ、こないだ借りた本」
「えぇ!?もう読み切ったの!?早いねぇ!どうだった?」
多分私の方が年上なんだろうけど、まったく嫌みのないタメ口も・・・・良いんだよなぁ・・・。
「すごくおもしろかった~、君のおすすめ全部当たるんだよね~」
「へへ、気に入ってくれてよかった~。絶対気に入ると思ったんですよ~」
返却の作業をしつつ、へにゃへにゃと笑うこの顔・・・・こいつ、笑顔を何種類使い分ければ気が済むんだ・・・。全部好きだけどねぇ!?
「あ、この本もおすすめですよ!」
そう言って彼が渡してきたのは、恋愛系の小説。「名前、もらってくれませんか?」という題名で、去年映画化もされた、大ヒット小説だ。
「あ~、恋愛系か~。普段読まないけど、たまには良いかな?」
なんて、家にある本、ほとんど恋愛系なんだけど。
「えぇ、そうなんですか?あ、彼氏さんいるから、恋愛系はいらない感じですかね?」
「あぁ、いや、彼氏はいないよ!」
そんな彼には関係ないプライベートなことを口走ってしまう、哀れな女。
「えぇ~?そうなんですか~?」
「そうなのよ~、もう行き遅れだし、おひとり様楽しんじゃおうかなって!」
それこそいらない情報だっつの!私のバカ!!
「あ~、じゃぁ、俺の苗字、もらってくれます??」
——・・・・へぁ?——
ちゃ・・・・チャラ~い!!!




