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遊園地

 梅雨の合間の晴天は、雨に空気を洗われてなんとも心地のよいものだった。駅から遊園地へと続く通りには、様々な屋台が並び、りんご飴やら、綿菓子なども売っている。


「なんじゃあ、これはお祭りか?」


 せっちゃんが嬉々としてはしゃぐ。俺ははぐれないようにしっかりとせっちゃんの小さくて丸い手を握った。その横を、風船を持った子供たちが駆けていく。楽しげに笑い、親に抱きつくその光景をせっちゃんが静かにじっと見つめていた。


「どうした? せっちゃんも風船が欲しいのか?」

「ううん。そうじゃない。なんでもない、さあ久太郎早く行こ」

 せっちゃんは、俺の手を振り切って走り出した。

「あっこら、せっちゃん迷子になっちまうぞ」

 俺と萌菜加はせっちゃんを追いかけた。


「せっちゃんな、次あれ乗りたい」

 一瞬落とした影を振り払い、せっちゃんは元気いっぱいにはしゃぎまわる。

「ほら、はやく、久太郎、萌菜ちゃん」

「ちょっと……待って……、俺もうバテバテ」

 久太郎が肩で息をつく。

「なんじゃあ、久太郎だらしがないのう」

 せっちゃんはぷっくりと頬を膨らませる。

「でもまあ、もうすぐお昼だし、そろそろご飯にしよっか」

 遊園地に併設されている薔薇園に移動し、ビニールシートを敷いてお弁当を広げた。

 おにぎりを頬張り、せっちゃんが目をぱちくりとさせている。

「っていうか、久太郎……美味しい」

「そっか、そりゃ良かった」

 心地の良い初夏の風が頬を撫でた。


「おっ父とおっ母にも、食べさせてやりたかったな……」

 それは蚊の鳴くような声だった。


 日が西に傾く頃、「とうりゃんせ」の電子音が流れる。トラやパンダの形をした乗り物に子供たちがまたがり、通りを行進しているのである。


 楽しさと寂しさのないまぜになったような視線を遠くに据えて、せっちゃんがぽつりと呟く。

「なあ、久太郎は『とうりゃんせ』の歌詞の本当の意味を知っているか?」

「へ? 子供が七歳になったお祝いに、お札を納めにいくっていう歌なんじゃねえのか?」

「あの歌は『間引き』の歌じゃ」

「ま……間引きって……」

 そう問うた萌菜加の唇が微かに震えている。

 

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