途方もないエロスと教育実習生
あれは小学二年生の時だった。
俺の通う小学校に一人の女子大学生・七瀬璃々が教育実習生として訪れた。
その当時の俺は、今のように真面目まっしぐらではなく、どこにでもいる普通のちょっと女の子に興味のある男の子だった。
しかし、その教育実習生と出会ってから運命が大きく変わってしまった。
彼女からエロスが漏れていたわけではなかった。
むしろ、どちらかと言えば控えめで、大人しく、エロスとは対極に位置するような存在だった。
安心感。
安堵感。
母性。
そのような言葉がぴたりと当てはまる彼女に、児童も先生たちもまるで最初から彼女がその小学校の先生であるかのように、親密に接していた。
もちろん、俺もその一人であった。
時間が許す限り、彼女との時間を持ちたいと積極的に話しかけていた。
今思えば、ませていたのだと思う。
しかし、俺は見てしまった。
見てしまったのだ。
ある日の夕暮れ時。
宿題を忘れたことに気づいた俺は、夕日色に染まる街中を走り、学校へと急いでいた。
学校に着いたころには、既に周りには暗闇が広がり、校舎内も静まり返っていた。
そんな中を恐々と進んでいた俺は、職員室のドアから灯りが漏れていることに気づく。
こんな時間に誰がいるんだろうかと不思議に思いながら、窓からそっと覗いた。
そこには、普段のフラットな体型とは異なり、出るところは出て、引っ込んでいるところは引っ込んでいる七瀬先生がいた。
彼女の傍には下着が置かれていた。
「ううーん。今日もきつかった。やっぱり矯正下着つけるのはしんどいなあ」
そう、彼女は矯正下着でそのボディラインを隠していたのだ。
「でも、つけとかないと変に目立っちゃって、それは嫌だし」
悩まし気な先生。
真剣に悩んでいることが伺える声色と表情だった。
けれど、そんな先生の悩みよりも何よりも、俺は未知のボディラインにくぎづけとなってしまった。
そして、次の瞬間、俺の服は爆ぜた。
「……え? え? なんで? え?」
俺は意味がわからず、咄嗟に大事な部分を手で隠した。
本来であれば、母性溢れる教育実習生の意外な一面を知ってしまったが故の性癖の歪み、程度のもので済んだのかもしれない。
しかし、あまりにも普段とのギャップが著しい彼女の姿に、そしてそのエロスに俺の服は爆散してしまったのだ。
突然のことに、俺は慌てふためき、そのまま家へと足早に帰った。
幸い、夜の闇が俺の体と、そして尊厳を守ってくれた。
幼い俺は懺悔した。
服が爆散したのは、きっと、先生の見てはいけないものを見てしまった自分に対する罰なのだと。
翌日。
俺は昨日のことはもちろん誰にも言わないでおこう。
そう決めて学校へと向かった。
それは、七瀬先生のことを慕っていたからに他ならない。
彼女が必死に隠してるであろうことを、俺がばらしてはいけないと。
「おはよう、蓮君」
早朝の廊下で、俺の鼓膜に七瀬先生の声が届く。
昨日のことは忘れよう。
改めて、そう決意した俺は一度、大きく深呼吸をして彼女の方を振り返った。
「おはようございま……」
俺の視界に先生が入り込んだ瞬間、再び服が爆ぜた。
昨日と同様、一糸まとわぬ生まれたままの姿になってしまったのだ。
けれど、そこは朝の校内。
他の生徒よりも早く来ていたため、奇跡的にその時廊下にいたのは俺と実習生のみ。
あまりの衝撃と恥ずかしさに、俺の脳内は一気に真っ白になった。
そんな俺を見て、彼女は咄嗟に自身の上着を脱ぎ、被せてくれた。
「大丈夫。私がなんとかしてあげる」
目の前で起きた不可解な事象。
本来であれば、そのことに気をとられてしまうところ。
しかし、彼女はそうではなかった。
彼女はすぐに人目のつかない場所に俺を連れていき、両親に連絡を入れてくれた。
そして、そのまま彼女の加護のもとに、親の迎えを待った。
その間も、先生は服爆散など微塵も気にせず、「大丈夫だよ」「寒くない?」と俺の心配をし続けてくれた。
俺はそれが嬉しくてたまらなかった。
こうして、七瀬先生のあまりにも大きな懐に抱かれながら、一難去ったことは僥倖ではあった。
しかし、俺にとって、ここからが本当の苦難の連続であった。
この初爆散以来、少しでもエロいことを考えると、俺の服は爆散してしまうようになってしまったのだ。
TPOをわきまえることなく。
そのため、俺は家からでることができなくなってしまった。
その後、今の主治医と出会い、その指導の下、少しずつ日常を取り戻せるようになっていったのだ。




