ささやかな幸せ
1997年5月17日:午前8時、ニューヨーク市:
私たちは誰かの夢を見る。そこには、海の色のような青い服を着た女性がいる。彼女の髪は木々の色のような緑色だ。彼女は無力な様子でゆっくりとこちらへ歩いてくる。そして苦しみの中で私たちに訴える。
「お願い……私を傷つけるのをやめて」
すると邪悪な男たちが現れ、彼女をいじめ、苦しめ始める。彼女の青い服を引っ張りながら。彼女は涙を流しながら私たちに叫ぶ。
「お願い、私の服を汚すのをやめて!」
そして男の一人がヘアカッターで彼女の緑の髪を切り始める。彼女は再び叫び、私たちに懇願する。
「お願い、私の髪を切らないで!」
やがて彼女は怒りと絶望に満ち、苦しみの中で空を見上げて叫ぶ。
「神様、どうか私を助けて!!」
そこで夢は終わる。現実の人物が目を開ける。彼は起き上がり、目をこすりながら拭う。そして私たちはその人物の本当の顔を見る。彼は21歳の青年だ。その顔は世界のどの国にも属していないように見える。ただの人間、普通の人間のようだ。
作者注:彼を「ヒューマニティ」と呼ぶことにしよう。そしてなぜ彼をそう呼ぶのかは……しばらくすれば分かるだろう。
ヒューマニティはベッドから起き上がり、髪をかきながら急いで言う。
「時間までに行かないと」
そして彼はバスルームへ急ぐ。シャワーを浴びた後、サンドイッチとお茶の朝食を食べる。それから素早くきちんとしたズボンとシャツを着て、左手首に腕時計を巻く。そして自分が住んでいるアパートのドアを閉め、鍵をかける。
彼は急いでエレベーターへ向かうが、すでに満員で使用中だった。彼は苛立って言う。
「くそ……階段で行くしかない」
彼は急いで階段を降り、アパートの建物を出る。通りを歩き、たくさんの交通の中を進みながら、これから仕事を得る予定のオフィスへの道を思い出している。30分歩いた後、ついに午前9時ちょうどにオフィスへ到着する。彼は安堵して自分に言う。
「よかった……時間に間に合った」
彼は中へ入る。そこでは従業員やマネージャーたちが忙しく動き回っていた。
ヒューマニティはまっすぐ採用担当マネージャーのところへ向かう。人を雇う責任者だ。マネージャーはペンや書類が置かれた机の前に座っている。ヒューマニティは彼女の前に立ち、尋ねる。
「すみません、仕事を求めて来ました。ここで働けますか?」
マネージャーは答える。
「はい、ですがまずあなたの資格を見せてください」
ヒューマニティはバッグから書類を取り出して渡す。マネージャーはそれを確認し、微笑む。
「いいですね。では次に個人情報が必要です。名前や、お父さんの名前、お母さんの名前などです」
ヒューマニティは微笑んで言う。
「分かりました」
マネージャーは質問を始める。
「では、あなたの国と名前は?」
しかしヒューマニティが答えようとした瞬間、場面は彼の言葉が聞こえる前にオフィスの外へ切り替わり、ニューヨーク市の広い景色が映る。数秒後、再びオフィスの中へ戻る。
マネージャーは続けて尋ねる。
「では、お父さんとお母さんの名前は?」
その質問を聞いたヒューマニティは悲しそうな表情になり、寂しげな声で答える。
「僕は……孤児なんです」
彼がそう言った瞬間、マネージャーの目が大きく開く。彼女はすぐに謝る。
「あっ、ごめんなさい……そんなつもりじゃ……」
ヒューマニティは彼女を落ち着かせ、優しく言う。
「大丈夫です。ただ必要なことを言っただけですから」
マネージャーは微笑んで言う。
「分かりました。では明日から来てください」
ヒューマニティは嬉しくなり、明るい声で挨拶する。
「本当にありがとうございます!」
その後、ヒューマニティはオフィスを出る。
しばらく歩いた後、彼はティーショップに入り、椅子に座って店主に言う。
「ねえ、お茶をください。濃いのを」
店主はニヤッとして答える。
「いいよ、強くて美味しいのを出してあげる」
ヒューマニティは席に座り、お茶を待つ。
場面は空へ切り替わる。
鳥たちが飛んでいる。
人類は手に入れたささやかな幸せを楽しんでいる。
だが、あと数日のうちに何が起ころうとしているのかを知っているのは、私たちだけだ。




