気づき
戦闘機の姿が「人類」の中に希望の火花を散らした。「ついに、来たか」怒りに震え、ひりつくような声で「人類」は言った。「この外道を殺してくれ。自らが犯した罪の代償を、その魂にまで刻みつけてやるんだ」
ジェット機がマスムに群がり、あらゆる方向からミサイルと機関銃の嵐を浴びせた。マスムの皮膚の上で爆発が次々と花開き、ついに厚い煙の幕がその巨体を完全に飲み込んだ。「ハイブリッド」たちでさえ動きを止め、その破壊の光景を見ようと首を巡らせた。
「どうなった?仕留めたのか?」ノイズ混じりの通信でパイロットが尋ねる。
「ああ、やったと思う」別のパイロットが答え、その声には希望が滲んでいた。
突如、巨大な手が煙を切り裂いて現れ、空中のジェット機を一機ひっつかんだ。マスムはその機体を口元まで引き寄せ、噛み砕いた。パイロットと機体は、怪物の口の中で激しい爆発とともに消え去った。
「なんてことだ!」残されたパイロットたちと共に、「人類」が息を呑んだ。
「何が起きた!?」司令部が問い詰める。
「あの……あの怪物が……戦闘機を食いやがった!」F-22のパイロットが叫んだ。
「全員、離脱せよ!」司令官が命じる。「立て直して、別の作戦で攻撃を再開する!」
ジェット機は急旋回し、距離を取るために飛び去った。煙が晴れると、そこにはマスムの姿があった。体中にミサイルの傷跡が見えたが、わずか3秒から5秒の間に肉体は編み直されるように再生していく。筋肉は硬質化を始め、いかなる攻撃も通さないような有機的な装甲へと変異していった。
崩壊したビル群に囲まれた路上で、「人類」は軍の敗北を目の当たりにしていた。希望がひび割れ始める。「嘘だろ、軍ですらこの悪夢を止められないなんて言わないでくれ」
突然、マスムが巨大な電磁パルス(EMP)を放った。ジェット機と司令部の通信は瞬時に途絶えた。
「ハロー?ハロー!?司令部、聞こえるか?」パイロットが死んだマイクに向かって叫ぶ。
「強力なEMPを放ちやがった」別の者が悟った。「こんなことが可能なのか?」
「クソッ、野郎ども、これからどうする?」
部隊の隊長が息を呑み、沈痛な声で言った。「……司令部が出した最後の命令に従うまでだ」
ジェット機は編隊を組み直し、同期した一斉攻撃を仕掛けた。ミサイル、キャノン、そして絶望――持てるすべてを獣に叩き込んだ。「無駄だ!」一人のパイロットがパニックに陥り叫ぶ。「どうすればいいんだ!?」
「選択肢はもう一つしかない」隊長が言った。「我々の誰かが、重火器を投下するんだ」
数機のジェット機がより良い角度を取るため、マスムの至近距離を通過した瞬間、パイロットたちが悲鳴を上げ始めた。その叫びは苦悶に満ち、通信機を引き裂くような音から、やがて獣のような、濁った咆哮へと変わっていった。空中にいてもなお、マスムの影響力からは逃れられなかったのだ。「ハイブリッド」へと変貌したパイロットたちは、機首をかつての戦友たちに向けた。彼らは発砲し、仲間のパイロットたちを死の螺旋へと叩き落とした。
「おい、正気か!?緊急事態!メーデー、メーデー!制御不能だ!」
ジェット機は次々と墜落し、マスムの背後で巨大な火柱となって爆発した。隊長は、自らの部隊が変貌し、あるいは消滅していく様を恐怖に目を見開いて見つめていた。
「人類」の瞳が完全な絶望に染まった。「どうして、こんなことに……」
遥か上空で、隊長はF-22ラプターを操り、その顔は苛立ちと衝撃で歪んでいた。「この野郎……いいだろう、俺が刺し違えてでも殺してやる!」彼は最強の爆弾の投下スイッチに手をかけた。しかし、投下した瞬間、ハイブリッドが操縦する暴走機が彼に激突した。両機は空中衝突で粉々に砕け散った。落下した爆弾は爆風で軌道を逸れ、マスムの遥か後方で爆発した。
地平線が噴火した。怪物の背後の空は鮮烈な黄色とオレンジ色に染まり、煙と炎の色彩がマスムのシルエットを純然たる黒の空虚へと変えた。
混沌の最中、一瞬だけマスムの顔がアップになり、その瞳の奥にある深い苦悩と苦しみが映し出された。
最後の抵抗が潰えるのを目の当たりにし、「人類」の心の中で希望の糸がぷつりと切れた。その視線は、凍りつき衝撃を受けた顔に留まった。ゆっくりと、「人類」は廃墟となった通りの真ん中で膝をついた。目を閉じ、「人類」は祈るように囁いた。「神様……どうか、助けてください」
そして「人類」は顔を上げ、そびえ立つマスムの姿を凝視した。恐怖と混乱が入り混じり、震えるような囁きが漏れる。「あるいは……もしかしたら……彼は……」
そびえ立つ怪物の姿が、「人類」の瞳に反射して映し出される。マスムは長く、恐ろしい咆哮を上げた。それは支配者の叫びではなく、無理やり生かされている変異体の苦しみと、数千の復讐心の怒りが込められた、感情の叫びだった。
情景は広い視界へと収束していく。左右には、どこまでも続くハイブリッドの列が遠くに立っている。中央には、この世で最も巨大な存在としてマスムが君臨している。背後の空は地獄のようなオレンジと黄金の輝きを放ち、彼の姿を「壊れた神」の黒い影へと変えていた。そして画面の下部中央には、「彼」(人類)が膝をつき、巨神を見上げていた。神々しいまでの破壊の重みを前にした、小さく、打ちひしがれた一人の姿だった。
もしかすると、マスムはもうマスムではないのかもしれない。




