人類は生きている!
「人類」は自分自身の視点でそれを見た。鏡に映った己の姿を。
「嘘だ……そんな、ありえない」
彼は苛立ちの中で鏡を叩き割り、自分に何が起きたのかも分からぬまま立ち尽くした。独り言ちる。「俺は一体、何になってしまったんだ?」
助けてくれる者は誰もいない。ただ、彼の囁きだけが病院内に虚しく響いた。
「人類」は病院を抜け出し、何が起きたのかを確かめようとするかのように千鳥足で歩いた。目からは涙がこぼれ落ちる。悲しみと混乱に沈む彼の周囲では、他のハイブリッドたちが人々を自分たちと同じ怪物へと変え続けていた。都市には人々の泣き叫ぶ声がこだましている。
「人類」はその場に崩れ落ちた。
その時、「人類」は一体のハイブリッドが小さな赤ん坊に向かってゆっくりと近づいていくのを目撃した。赤ん坊の母親は死んだか、あるいは怪物に変えられた後だった。地面に転がされた赤ん坊は、絶望的な声を上げて泣きじゃくっている。
それを見た瞬間、「人類」の中に激しい怒りが燃え上がった。周囲の残酷な光景を目の当たりにし、彼は立ち上がって叫んだ。その声は半分は人間、半分は怪物のものだった。
「ルアアアアアアアアッ!!」
「人類」は赤ん坊へ歩み寄るハイブリッドに向かって突進した。そのハイブリッドが振り返る間もなく、「人類」は飛びかかり、その顔面を数え切れないほど殴りつけ、激しく叩き潰した。そして、胸と顔を切り裂く最後の一撃で、ついにそのハイブリッドを仕留めた。
彼は深い怒りと苛立ちの中で荒い息をついた。
しかしその時、傍らの地面に倒れている赤ん坊の泣き声が耳に入った。この過酷な状況にあっても、彼の心には深い同情の念が芽生えた。「人類」は腕の中に赤ん坊をそっと抱き上げ、慈しむように、深い思いやりを込めて語りかけた。
「大丈夫だ……泣かないで……。君のお母さんはどこだい?」
だが、周囲にいた他のハイブリッドたちが、彼の最初の咆哮を聞きつけていた。彼らの一味を殺した「人類」を見て、奴らはこれが自分たちと同じ怪物ではないことに気づいた。そして彼の腕の中にある赤ん坊を見て、怪物たちの目には飢えと恐ろしい好奇心が宿った。
「人類」は赤ん坊を腕で隠し、怒りと防衛本能を露わにして奴らを威嚇した。この子は絶対に渡さないという明確な意思表示だった。
追跡が始まった。「人類」は赤ん坊を安全に抱え、通りを駆け抜けた。約50体のハイブリッドが彼を追いかけてくる。突如、「人類」は素早く身を翻して奴らの視界から辛うじて消えると、理化学機器の店の中へと滑り込んだ。
彼は赤ん坊をパニックに陥らせないよう、自分を落ち着かせ、冷静さを保とうと努めた。すると、ドアのすぐ外に変異種たちの影が立っているのが見えた。「人類」は目を閉じ、赤ん坊をきつく抱きしめた。尻尾を自分の足に巻き付け、もう終わりだ、と覚悟した。
しかし、ハイブリッドたちは苛立ちの唸り声を上げると、それ以上深く捜索することなく立ち去っていった。
「人類」は安堵の息を吐き、赤ん坊の顔を覗き込んだ。
「よかった……君が無事で」
その頃、ニューヨークに最も近い(といっても数マイルは離れた)軍基地では、兵士たちが銃やロケットランチャーを手に備えていた。パイロットたちはF-35やF-22ラプターへと乗り込んでいくが、指揮官を含む全員がニューヨークで起きている事態に衝撃を受けていた。あのような巨大な怪物は見たことがなかった。
指揮官は急き立てるように言った。
「急げ、急げ!市民が助けを待っている。我々は未だかつて戦ったことのない相手と戦わねばならん。全兵装を整えろ!」
次々とF-35やF-22ラプターが飛び立ち、戦車も出撃の準備を整え、兵士たちが乗り込んでいく。
一方ニューヨークでは、「人類」が理化学機器の店の中で赤ん坊を抱きしめていた。
外では、苦しむ人々の悲鳴と、怪物へと変えられていく者たちの叫び、そして地響きを立てるマスムの足音が響き渡っていた。
軍はついに行動を起こした。しかし、マスムを殺すことができるのか?




