第1話 プロローグ
俺は、部屋のタンスの中でガタガタと震えていた。
「セドリック様! どこですか! すぐに出てきてください!」
メイドであるテレーズの怒声が聞こえる。
続いて、バタン、とドアを閉じる音がする。
びくりと肩をふるわす。
ダメだ、音を立てちゃダメだ。
音や声の感じから、この部屋から少し離れている。
まだ平気だ。
「私たちは、危害を加えるつもりはありません!」
そんなこと言っているが、実際のところわかったもんじゃない。
ズキリと肩に鈍い痛みが走る。
さっき、テレーズに掴まれたところだ。
なんでこんなことになるんだ。
ただの暇つぶしだったのに……。
そう暇つぶしだ。
貴族学院を卒業し、実家に戻ったら両親は消えていた。
俺に家督を譲り、両親は旅行に旅立っていたのだ。
両親の奇行をテレーズから聞いた俺は呆然。
そんな経緯で、俺はベニュロ領の領主になった。
経緯はどうあれ、やるからにはちゃんとしないと使用人たちや領民が路頭に迷う。
旅行が理由で、職を失うのは忍びない。
ということで、領主としての職務に取りかかった。
まあ、両親が手配してくれたおかげもあり、俺が領主になって当分は困らないようになっていた。
それからはただひたすら職務に励んだ。
その結果、暇になった。
俺には日本で生きていた記憶がある。
いわゆる転生者だ。
この世界は、古い。
俺が思った感想は「過去に生まれたのか?」というのと「部下からオススメされたWEB小説の世界みたいだな」だ。
日本での知識を駆使し、書類の形式をそろえたり、会社で習わされた簿記を導入したりと、いろいろとやった。
おかげで、屋敷の使用人たちは俺のことを本当の意味で領主として認めてくれた気がする。
というわけで、いまの俺の仕事は1日数時間もやれば十分になった。
暇をもてあました俺は、やることを探していた。
また魔法の研究でもしようかな……。
この世界には魔法がある。
日本にはない魔法に魅せられた俺は、幼い頃から魔法について調べ、研究していた。
魔法の研究は、貴族学院でも続けていた。
ある意味、趣味だったのかもしれない。
でもなあ……。
でも、魔法の研究をするなら王都に行くほうがいいが、俺はいま領主だ。
このベニュロを離れるわけにはいかない。
そこで考えた。
なにか暇を潰せることはないかと。
「あら~、なぜかしら、タンスがガタガタ揺れていますね」
ギィイと開く。
そこには、塗れた髪を肩から前に長し、タオルで体を隠しているテレーズが笑みを浮かべていた。
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