最悪の転生
さあ、私が転生した世界について軽く説明をさせて欲しい。
これを聞けばみな、この転生がどんなに酷いものか分かってくれるだろう。
私が転生したのは、「欲望と執着にとらわれて」という名前からしてやばそうな小説の世界である。
この世界のヒロインは、男爵令嬢のルピナスである。
物語は彼女がアイスレント公爵家の当主ルーベレンク・アイスレントに嫁ぐところから始まる。
なぜ男爵令嬢であるヒロインが公爵家に嫁ぐことになったのか。はなはだ疑問であるがこの小説では特に言及さえることなくおし進められた。
顔も見たことのない公爵との結婚式であったがヒロインは健気にも前向きに挑む。
とこらがあろうことに結婚式に現れたのは公爵の代理という男だった。
結婚式は公爵家の圧力で代理のまま推し進められ、有無を言わさず公爵邸に連れていかれた。
公爵家でやっと公爵に会えるかと思えばヒロインは離れの部屋に閉じ込められる。
一か月後ようやくヒロインに会いに来た公爵はヒロインの顔を見て、盛大なため息をつき一言も話さず部屋を後にした。
ホントになんでこんな奴がメインヒーローなんだ??とこの時点でだいぶイライラした私であったが、好きな作家さんの新作であったため、一応読むことにしたのが間違えであった。
公爵家で働く侍女の多くは貴族令嬢であり、中には伯爵家や侯爵家の次女や三女もいるため、もともとよく思われていなかったヒロインは案の定、この日を境に使用人たちから壮絶ないじめを受けることになる。
そのうえ公爵はいじめに気付くどころか、侍女の報告ばかりを信じ、「なぜ侍女にもっと優しくしてやれない?だいだい男爵令嬢風情が身の程を知れ。」とヒロインを罵る始末。ヒロインは家出を決意し成功させた。さらには別の公爵家の次男に拾われて求婚を受ける。さすがヒロイン、ご都合主義と思わなくもなかったが、その公爵家の次男があまりにもいい男であったため、そことくっつけ!押せ押せ!とだいぶ盛り上がりながら読んだ。そのまま次男とくっつくハピエンで終わってくれればよかったのに、やっぱりここで追いかけてくるのがメインヒーローである。ヒロインを見つけたヒーローはそのままヒロインを連れ去り監禁をする。「いじめていたやつも、みているだけだったやつもきちんと処分したから。これからは僕が守ってあげるから。」と使用人に責任を丸投げし、愛しているとか言い出しやがった。何言ってんだこの男?あんなに見下していたのにどんな情緒??と鼻で笑ったが、なんとここでヒーローに気持ちが傾くのがチョロインである。奪い返しに来てくれた次男を自ら追い返し、末永く監禁されましたとさ。というなにもすっきりしない、意味の分からないままおわった。
そんな世界のヒロインに転生してしまったのだ。
ロマンスファンタジーが大好きな私がせっかくヒロインに転生したのに嘆いているわけ。わかってくれただろうか?
あぁ、ほんと、どうしよう、、、泣