チャーハンさばく〜ラーメンの滝②
ラーメンの滝、続きです。なぞの声の正体、とは…
洞くつの穴に落ちてゆくぼうけんかさんの耳元で、かろやかな羽の音と共にかわいらしい声がしました。
「だあれだあれ、あなただあれ」
声と一緒にチリチリと鈴を振るような音がします。
「ラーメンの滝の竜さんに頼まれて『オウゴンのコショー』を取りに来たものだ」
「そうなの、そうなの。もうちょっとで地面だよ、ぶつかるよ」
「なにっ」
ぼうけんかさんは、あわてて受け身を取って地面にぶつかったしょうげきをやわらげると、そのままゴロゴロゴロ、と転がって、ごつん、とカベにもぶつかって、やっと止まりました。
「だいじょうぶ?だいじょうぶ?」
ぱたぱたしながら、チリチリの音のぬしが、ふたたび近づいて来ました。
「うむ、教えてくれてありがとう。キミのおかげで、大ケガをせずにすんだよ」
「ホントに?よかった、よかった」
あたりは、あいかわらずまっ暗で何も見えません。ぼうけんかさんは、ぶつかったカベに手をつきながら立ち上がりました。
「キミは『オウゴンのコショー』について、何か知っているかい」
「しらない、しらない。コショーってなあに?オウゴンってなあに?」
「コショーとは、料理の味をより辛く仕上げるために使う粉のことだよ。オウゴンというのは、そうだな、金色、や、ピカピカ光っている、と言いかえたら良いだろうか」
「そうなの、そうなの、コショーはしらない。キンイロ、もわかんない…でも、奥の方に、ピカピカ光ってる場所なら、あるよ」
「本当か!では、良ければ先ほどのように道あんないをしてくれると助かるな。私は、あちこちの宝物を探して旅をしている、ぼうけんかだ」
「ぼうけんかさん、ぼうけんかさん。…ここはまっ暗だから、ボク、自分のことをよくしらないの」
「なるほど……めいわくでなかったら、それも一緒に探させてくれないか」
「ほんとう?うれしい、うれしい!」
ぼうけんかさんは、かた手でカベをさわったまま歩き出しました。耳元で、チリチリのぬしが飛び続け、ぶつかりそうになると…つまり、曲がり角に来ると、教えてくれます。そうして、どんどん奥へ進んで行くと、はたして、ピカピカに光っているカベにたどり着きました。
「むむっ」
急に明るくなったので、かえって良く見えません。ぼうけんかさんは、手探りで、そのカベに継ぎ目があるのをみつけました。
「コレはもしかして…」
ぼうけんかさんは、その継ぎ目に両手をかけると、力いっぱい引っぱりました。
ゴゴ…ゴゴゴゴ
少しずつ、少しずつカベが動いていきます。
「すごい、すごい!ぼうけんかさん、何かあるよ!ピカピカの何かがあるよ!」
ぼうけんかさんも、少しずつ目が慣れてきました。
カベの中に、石の台のようなものがあって、その上に、光り輝くコショーのびんがのっています。
「コレだ!コレが『オウゴンのコショー』にちがいない!」
ぼうけんかさんは、はっしとびんをつかみました。が、何かで台にくっついているのか、なかなか取れません。
「ぐぬぬぬ」
「取れないの?取れないの?ボク、お手伝いする!お手伝いする!」
その声と共に、ふわ、とぼうけんかさんの目の前を白い何かがかすめ
ポキっ
と、コショーのびんが折り取れる感触がありました。
「え?折れたあああ?」
と同時に、今までの数倍まばゆい光がパァァァとあたりに満ちあふれました。
そしてびんが勢いよく飛び上がったものですから、びんにふれていたふたりも、洞くつの外まで一気に吹き飛ばされてしまったのです。
シュポーン
つづく
大まかな流れは変わらないのですが、やはり口に出して語るのと文字にして見られる前提の物は違うな、と思いながら、語り聴かせに用いられる童話のテキストの偉大さを思い知ります。