チャーハンさばく〜ラーメンの滝①
ぼうけんかさんシリーズ第2弾、チャーハンさばくの巻。第1夜のラーメンの滝だけで3部構成になってしまいました。
ぼうけんかさんは、暑い暑い、さばくに来ていました。
ここは、チャーハンさばく。秘宝『オウゴンのチャーハン』をさがしに来たのです。
見わたすかぎりの砂、砂、砂。
しゃく熱の太陽に温められた砂は、フライパンの上のように熱くなっているので、とても自分の足では歩けません。ぼうけんかさんは、きたえ上げられた足を持つラクダさんの背中に乗せてもらって、このさばくを進んでいました。
ラクダさんが一ぽふみだすごとに、かたいひづめと、熱い砂がこすれて音がします。
ちゃーはんっ、ちゃーはんっ、ちゃーはんっ、ちゃーはんっ
さいしょの一ぽの時には、ぼうけんかさんは、この音にたいへん感動したものでした。
「おおおっ、さすがチャーハンさばく!この音にこそ、『オウゴンのチャーハン』のヒミツがかくされているのではっ」
しかし、行けども行けども、砂しか見えず、持ってきた水とうも空っぽになってしまい、ずっと同じ音が聞こえながら、じりじりと太陽が照りつけるので、今はもう、ノドがかわいた、ということしか考えられなくなっていました。
と、その時。遠くに何かがキラリと光って見えました。
「あの光は、水面のきらめきでは…オアシスがあるのかもしれないぞ。ラクダさんっ、あそこまでがんばって歩いてくれ!」
ちゃーはんっちゃーはんっちゃーはんっちゃーはんっ
ラクダさんの足取りも、心なしか軽くなったようでした。
砂の音も、ふたりをはげましてくれるように感じられました。
ドドドドドド
たどり着いたオアシスには、滝つぼがありました。
ぼうけんかさんは、ラクダさんに滝つぼの水をあげ、自分でもすくって飲みました。
「さばくのまん中に、滝があるとは。山やガケがあるわけでもないのに、どこから流れてきているんだろう」
水とうに水をつめながら、落ちてくる滝を見上げますが、滝の落ちてくる先は、もやもやしてよく見えません。
勢いよく流れる水は、まっ白い糸のように見えました。
「ふうむ、ふしぎだ」
つぶやきながら、ぼうけんかさんは、もうひとすくい、水を飲みました。
そのとたん
ゴゴゴゴゴ
うなるような音がして、滝の糸をかき分けて大きな白い竜が姿を現しました。
「へい、らっしゃい!」
竜がしゃべると、ジャーンとどこからか銅鑼の音が鳴り響き、ぼうけんかさんたちの立っている地面までグラグラと揺れました。
「こんにちは!私は『オウゴンのチャーハン』を求めて、このさばくにやって来たものです!何かご存知ありませんか」
ぼうけんかさんは、負けないように大声で話しかけました。
「久方ぶりのお客人に、我がラーメンの滝のラーメンをふるまいたいのはやまやまであるのだが」
竜はまたも銅鑼の音と共に、しゃべり続けます。しかし、ぼうけんかさんの質問の答えには、なっていません。
ああ、聞こえていないんだな、と思ったぼうけんかさんは、竜の言葉に耳をかたむけることにしました。
(ふむふむ、ここはラーメンの滝、というところなのだな)
「あいにく、ラーメンの味変に欠かせない『オウゴンのコショー』を切らしているのだ!あのコショー無くして、ラーメンの滝のラーメンとは言えぬ!」
長い長いツメの生えた三本指の両手で頭を抱えながら、竜はぎゅっと顔をしかめました。
やはり、しゃべるたびに銅鑼の音が鳴っているので、うるさくて頭を抱えているようにも見えます。
(『オウゴンのコショー』……『オウゴンのチャーハン』と何か関わりがありそうだな)
「お客人に頼みごとをして申し訳ないが、『オウゴンのコショー』がある洞くつは、せまくて、われが入ることはかなわぬ!かわりに取ってきてはくれないだろうか!」
わかりました、とこたえる代わりに、ぼうけんかさんは、竜の方をむいてコクコクとうなずいて見せました。
「おお、行ってくれるか!それはありがたい…さあ、入口はここである!」
ジャーン
ゴゴゴゴゴ
言うと同時に、滝つぼまん中を竜が爪で指すと、銅鑼の音と共に竜が出て来たときと同じうなるような音がして水が割れ、ぽっかりと穴が開きました。ちょうどぼうけんかさんが一人で通れるほどの穴です。確かに、竜の体では通るのが無理そうでした。
「では、行ってまいります!」
せいいっぱい大きな声をはり上げましたが、やはり聞こえないだろうな、と思ったので、ぼうけんかさんは、ぺこりとおじぎをしてから、滝つぼの穴に向かって、大きくジャンプしました。
耳のわきで、シューシューと空気の鳴る音がします。中はまっ暗で、何も見えません。
「ううむ、あとどのくらいで地面につくのか分からないな」
ぱたぱたぱた
とつぜん、かろやかな羽の音と共に耳元でかわいらしい声がしました。
「だあれだあれ、あなただあれ」
つづく
このお話、実際に語る時は端折れる部分がかなりあるのですが、再構成してみると、荒く「これ、伏線だったことにして設定引用しよ」みたいにつなげて話を作っていったことをきちんと押さえねばならず、長くなってしまいました。