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短編

友人の様子がおかしかったので後をついて行ってみた

作者: 空途

 ホラーに初挑戦してみました。



「ば、バレてないよな……?」


 そう、息を潜めて独り言を呟きながら、そっと顔だけを角から出す。


 俺は今、人生初の尾行をしている。


 俺は普通の一般男子高校生である。趣味はゲーム。圧倒的インドア派。

 もちろん彼女なんてものはできたことない。

 だけど、それは小学校からの友達も同じだったから特に気にしていなかった。


 ──一週間前までは。



『なー、一緒に帰ろうぜ』

『今日は用事があるから』


 帰りにいつも、とはいかないでも、誘えば必ず一緒に帰っていたそいつが、こんな風に断ったのだ。


『あ、そう? じゃーな』

『うん。また明日』


 なんだ珍しいなと思いつつ、その時は大して気にも止めていなかった。


 しかし、次の日も、その次の日もそうだった。理由を聞いても何故か最近あまり表情の変わらなくなった顔で濁すのだ。


 少し気になって、少しだけ後をつけたら、明らかにそいつの家の方向ではない道を進んでいた。


 俺とそいつは、普段隠し事なんてしたことがない。あっても、すぐ自分から言うかしてた。


 これは……あれだよな?


 人には言えないこと。言ったら恥ずかしいこと。つまり。


 彼女が出来た。


 ……許せん。

 全くもって許せんッ。


 親友(と俺は思っている)が抜け駆けしたのもなんだか憎いし、そもそもそんなことを隠すのが許せん。


 祝うよ、俺は。親友だもの。たとえ俺が気になっているあの先輩と手をつないで『実は……付き合ってるんだ』なんて告白されても泣かないよ。殴るけど。


 いやまあ、別に彼女が出来たと確定したわけではないが。全く別のことかもしれないが。


 それでも気になって仕方がないから、水曜日、つまり今日の放課後。俺はそいつのことを尾行することにした。




 そして今に至る。


 歩いて歩いて、途中勘付かれたのか振り向かれたときにはヒヤリとしながら身を隠し、なんとか追って着いたのは、近所でも有名な場所だった。


 XX霊園。

 なんか霊が出るらしい。そんな噂を聞いたことがある。


 あいつも知っているはずなのに、躊躇も見せず、人っ子一人いない霊園にズンズンと入っていく。


 ……なんか、不気味だなあ。

 俺はゴクリと唾を飲み込み、あーうー唸って、最終的に覚悟を決めて、追いかけた。


 あいつが心配だから、とかではない。


 興味が湧いた。

 なんであいつは、ここに来たのだろう、と。





 進む、進む。どんどん進む。


 霊園に入ってから何十分か経って、やっと、おかしいな、と思い始めた。


 この霊園、こんなに広くなかったと思う。

 しかし、俺の両側にはちゃんと墓が存在している。少し、汚いのが気になるが……。


「うおっ」


 十メートル先のあいつが急に止まった。慌てて墓の陰に隠れる。隠れてから、心の中でこの墓に眠っている方、すいません、と謝る。


 何をしているんだ……?


 俺はひょっこりと顔だけを出してあいつを見て──。


「──ッ!」


 俺は思わず叫びそうになるのを、手で押さえる。


「はっ、はっ、はっ……」


 心臓が暴れている。嫌な汗が滝のように流れて、震える。


 あいつは笑っていた。


 最初から分かってたなんて言いたげに、俺を見ながら、裂けるような笑みを浮かべていた。


 なんだ、あれ(・・)


 あれ(・・)は、違う。あいつではない。


 誰なんだ。


 気づけば俺は走っていた。

 走れど走れど周りには墓ばかり。空も茜色のまま。


 なんだあれ。なんだよ、あれ。


 走る。走る。走る。

 そのうちに、足が痛くなってきた。


 走りながら振り向くが、誰もいない。少し安心して、足を止める。


「……っ、はーっ……」


 酸素が足りない。

 激しい運動による汗と、別の汗が混じり落ちる。


 それを熱に浮かされたまま、ぼうっと見て。


「どうしたの、そんなに走って」


 全身が凍りつく。


 顔を上げると、目の前にいつもの笑みを浮かべたあいつがいた。久しく見ていなかった顔だ。


 しかし、そこに懐かしさなんてものはなく、ただ俺は固まった。


 後ろに倒れた俺に、あいつは近づく。息が荒くなるのが分かる。


 やめろ。


 やめろ。


 やめ



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