生きているのが面倒くさい
昔、「面倒くさい王国」がありました。
ここの国民は、なにをするのも「面倒くさい」といってから仕事や遊びをする習慣がありました。
「面倒くさい王国」の王子は、王様になるのも面倒くさいと常々思っていました。
ある日のことでした。
王子は、朝起きると、周りにだれもいません。王子は、思い出しました。
今日は、1年に1回の、家来の休みの日であったことを。
ということは、今日は、全部、自分でやらなきゃならないんだ。「ああ、面倒くさい。寝ていようっと。」しばらく寝ていることにしました。しばらくは、惰眠をむさぼり、気持ちよかったのですが、でも、だんだん、寝転んでいるのも飽きてきました。「寝転んでいるのも面倒くさい。」
起きることにしましたが、ガウンをきて、靴下をはいて、スリッパをはいて、ベッドからでて、まあ、そこまではよかったのですが、今日は、休日で家臣はいないので、食事の用意もありません。
おなかがすいてきましたが、食事の用意をするのも、面倒くさいことです。そのへんに、なにか食べられるものはないかと、冷蔵庫のなかをあさりました。
ハムと、チーズと、パンはありましたので、ハムとチーズを電子レンジであたためて、パンの上にのっけて食べることにしました。
牛乳とコーヒーも冷蔵庫の中にあったので、探し出して、これもまた、電子レンジであたためて、チンしました。
とりあえず、おなかは満たされたのですが、なんだか、おかしいぞ。
暇なので、家臣達の本棚で何か暇潰しになる本はないかと、探すことにしました。
本と本の間に隠されるようにして、置いてあった、
『生きているのが面倒くさい人のための本』というのを見つけた。
まさに、自分が思っていることが書いてあるのだと、王子は思いました。
手にとって、読んでみることにしました。
『この本を手にしたあなたは、心が疲れています。あなたの心の状態は、かなり悪いですね。』
王子は、これまで、心が疲れていると思ったことは、なかった。衣食住については、事足りていた。
家臣や親族達からは、『王子は幸せものだ。羨ましい』とさえ言われ続けたわけだ。
しかし、よくよく考えると、自分はカゴの鳥で、自分の自由になることは、なにもないわけだった。
たまたま、今日は、家臣の休日で、自分で考えて、自分で行動しなくてはいけないが、それ以外の日は、あらかじめ決められたものを食し、決められた服を着て、決められた行いをしなくてはならなかった。
そして、城の外へ出るな、下位の身分のものと口をきいてはいけない、立派な王様になるため、修練を積まなくてはならないと、言われ続けてきたわけだった。
『あなたは、毎日が楽しいですか?』
楽しくなんてない。生きているのが面倒くさい。
でも、みんな同じではないか?
みんな生きているのが面倒くさいというし。
面倒くさいが、暇だし、しばし、本を読み進めていくと、違和感を感じた。
なんと本と本の間に、手紙が隠されていたのだった。
なんと手紙には、翔んでもないことが書かれていた。
「この手紙を読んでいる頃には、昔の記憶も失われ、毎日が退屈で、生きているのが面倒くさいと思っているのだろう。」
「自分が、何をしようとしてきたのかの記憶はないのだろう。」
「私は、核兵器を作ってしまった。いつでも発射できる。」
この記述に、なんとなく見覚えがある。
「核兵器の製造は簡単。原料同士をくっつけるだけ。」
「原料を手に入れば、、、」
ーそういうことかー
面倒くさい王国のような、吹けば翔ぶような小さな国が、アメリカ、ロシア、中国などの列強国に対抗するには、核兵器開発こそ必要不可欠。
そうでなくては、侵略されて、植民地化されるのが、関の山。
核の先制攻撃を行い、世界の王者になるのだ。
それで、核兵器開発を行った。
王子の封印されていた記憶が蘇りました。
今日は、休暇を取っていた家臣達が、ざわめき始めました。
せっかく、戦い大好きな王子の記憶を封印して、やる気をなくして、毎日、平和な日々を過ごしていたのに。
この戦いの王子が核兵器による先制攻撃を実施すると、アメリカ、ロシア、中国が黙ってみているわけはなく、やがて世界中で戦争が始まり、核兵器の相互攻撃により、世界が滅亡がしてしまうわけです。
だからこそ、家臣達ば、面倒くさい、面倒くさいと言っては、王子の記憶を消して、衣食住の不自由なく、祀っていたのに。
面倒くさいと感じる平和と、生きがいを感じるかも知れない戦争、戦争を知らない平和の中で生きてきる現代の日本人、ベストな選択はなんだろうね?
ベストな選択に明確に答えきることができませんでした。困ったら、「神さまの言うとおり」金城宗幸を読んで、考えてみるのも良いかもと思ったのですが、さらに、わからなくなるかも知れません。
でも、毎日のちょっとした幸せがあると、あると言うより幸せを感じさせすれば、退屈からは逃れられるように思いました。