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私は帰宅した後、魔法生物のレパートリーを増やす鍛錬をする事にしました。
「魔法生物を造る上で内部のディテールまで拘るには既存生物ベースの奴を造る事が一番手っ取り早いけど、人間ベースだと人間が可能な超能力くらいしか能力を持たせられない……まあ、逆に言えばテンプレートな部類の超能力を魔法生物に持たせるのは余裕、と言う事ですね」
と、確認を兼ねて口に出します。もう一度例のリッチを生成して弄る事にしました。
「この世界での定義だと電気を操る寄生虫等の他人依存の知能の低い動く死体がゾンビ。魔法や能力とかでアンデッドの能力や体を得ただけで肉体の主がそもそも死んでいないのがリッチ。……つまりリッチにはアンデッド化能力、より具体的に言えば対象の肉体の変換能力が有る……と言う設定をリッチに盛った所でリッチの設定に破綻は無い、と。……盛るとしますか……」
そしてリッチの能力をアップグレードして行きます。まあ、メインはサイコキネシスと肉体変換能力の二つなのですが、リッチの定義上ではそもそも死んでは居ないので、人に化け直すのも行けると思いますから、どんどん盛って行きましょう。としていたらリッチが能力を解除してもその場に残留して来ました。……盛った結果、私の能力に生存を依存しなく成ったようです。そしてそのリッチは言います。
〔我が名はマグナ=ヴァルカン。主殿にとこしえの忠誠を誓おう〕
「……喋りますか……」
〔我は一応人間なのだが、喋る事がそんなに可笑しいか?〕
「いえいえ、可笑しくは無いですが、こう言う例は何分初めてな物で」
〔カカ、そう言う事か、なら、許そう。……我は何をすれば良いだろうか〕
「……特にそう言う事は決めて無いですが、明日に有るだろう事件に介入するので、それに着いてきて参戦して貰えれば、と」
〔なるほど、斥候をやれと言う訳だな、承知した〕
「……一応実験させて貰いますね?」
〔……どうぞ〕
それで私はヴァルカンさんが嫌がるだろう幾つかの指令をした結果ヴァルカンさんはちゃんと従ってくれた為、ヴァルカンさんに私の不利益に成る事を出来ない制限を付けた後、今日は休む事にしました。
……しかし、マグナ=ヴァルカン、か。マグナはラテン語で偉大な、だし、ヴァルカンはローマ神話の神様の名前の表記揺れの名前です。確か、火と火山と鍛冶の神様の名前だったはず。但し、英語読みの、なので、恐らく語源は銃器の方のヴァルカン砲だと思われます。……明日スプリンガーさんに顔見せついでに説明しないとだし、もっと調べる為にやった方が良かった気もしますが、まあ、何とか成るでしょう。そして翌日の朝、私が眠りから覚めるとヴァルカンさんは近場で此方を凝視して居ました。
「……ヴァルカンさん?」
〔……不寝番をして居ただけだ〕
「そんな必要は無いので、休んでくれて良かったのですよ?」
〔そうは言うがね、我は必要最低限の事情しか知らんので、此処で主殿に雲隠れでもされたら堪った物じゃ無かろう〕
「……朝飯にしましょうか」
〔了解した。我は娯楽的な意味以外で食べる必要は無いが、料理する事は手伝おう〕
朝食をコーンフレークで軽く済まし、スプリンガーさんの所に移動した所。
「……おはよう、ってもう昨日の魔法生物をまた出しているのか。やる気満々だな」
「スプリンガーさん、その事に付いてなのですが……」
スプリンガーさんにヴァルカンさんの事情を説明し、ヴァルカンさんに仕事を手伝わせる事を了承させ、今日も今日とて魔法生物を世界各地に派遣して行くのでした。