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正直、三十万人を救え、と言われた割には防げた件数が少ないと思いますが、それをスプリンガーさんに言うとこう言われました。
「そもそも強い恨みとか依存症とか刑罰なぞ知るかって形で犯罪をやって居る場合を除き、犯罪をやった結果逮捕まで行っている検案の犯人の大半が犯罪を自粛しているから、時間巻き戻しを全員記憶引き継ぎでやる事が開示されている事自体の犯罪抑制効果は絶大だよ。今日一日で起きるはずだった世界の犯罪の七割くらいはそもそも行われようともしなかったし」
「……えぇ……」
「これは完全犯罪を出来ないと犯罪者にはいくらなんでも分が悪い条件だから、だね」
「……居るだけで犯罪抑制とかぶっ飛んでいますね」
「そもそも逮捕まで時間巻き戻しが無くてもされた人達は逮捕されても良いから犯罪をやるのだって覚悟でやらない限り他人に依頼しないともう既に犯人が割れているから、捕まる前提の覚悟でやった奴以外は改めて犯罪はやらんし」
「……あー、既に犯人が割れている事件を改めて起こしても簡単に特定されて逮捕される、ですか……それ狙いで他の奴がそう言う事件を起こすとかも有り得ますが、基本的には捕まる前提の覚悟でやらないとそりゃあやりませんよね。……えげつない効果が出ている訳ですか」
「全部の犯罪や事件を事前に潰せる訳では無いが、結果として七割の犯罪をされる前に抑制する効果とか絶大過ぎるからな」
「……そりゃ救世主とか言われる訳ですよ。まあ、ハリボテの、なのですが……」
「手前は明日もこの調子を頼むよ。実際は殆ど魔法生物任せで楽をしては居るけど、居るだけで効果絶大だしな」
「……救世主って戦争の英雄とかを言うのだと思っていたのですが」
「言うほどの事をやって無くて拍子抜けしているのか? だが、実際時間巻き戻しを全員記憶引き継ぎの状態でやる手段が有るって事は効果絶大だからな」
「……それ、やった人は創造主様で、私じゃ無いですよね。過去の時は私も一枚噛んだ形に成ったとしても今回は噛んですら無いですし」
「過去の件的に君がやったとした方は都合が良いらしいね」
「……なんか捨て駒みたいにされる前振りですかね、これ」
「現状で手前を捨て駒にしたら流石に君の信者からルド様へのヘイトが高く成りすぎるから無いと思うよ」
「……そうだと良いのですが」
「しかしまあ、君は今年以内に数千万人は救うかも?」
「……犯罪抑制効果七割とか聞いた後だと冗談に聞こえないのですが」
「冗談じゃ無いからね」
「……本当、私が何で祭り上げられたのか」
「……実際に君がそうするに足る事をしたからだよ」
「記憶封印前の私が、で、有って、今の私が、じゃ無いのですがね」
「……パラレルではなく、手前自身の記憶の中に有る話なのだけどな」
「……スプリンガーさんがそれを言うとスプリンガーさんと私が性的な事をやった事を認めろと言われている気分に成りますね」
「……そんな事を言ったつもりは無い訳だが」
「……でも、そう言う記憶も記憶封印前の記憶に含まれていますし、セクハラを受けている気分です」
「……はぁ、明日にでもルド様にちょっと用意して貰うか。ワールドシミュレーターで記憶を追体験して貰うか?」
「……物語を見たからと私自身は作品の主人公には成れませんが」
「……はぁ……どうせこれでセクハラを受けていると感じて居るなら今追加でセクハラしても変わらんはずだし、言うぞ。記憶が嘘なら君はまだ処女なはずだと」
「変態、変態、変態、変態ぃ」
「……やった事が嘘ならやって無いはずだからそれを見ればシンプルに解るネタだと思うがね?」
「……今はもう帰らせて貰います」
「それじゃあ、また明日な」
マンションに帰宅し自分が処女かを確認すると処女膜が無くなって居ました。…………嘘ぉ……。