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それから二ヶ月が経ち、ブリッジズさんが仮組みしたAIのエレメントソフィアと言うシリーズを数体持って来ました。
「さて、ルクトさん。ワシの成果としてはこんな物かの」
『もう出来たのか』
「機械学習の手間を大幅短縮したのだから、これでも時間が掛かった方に成る。まあ、過去に様々な創作で扱われて大流行した性格の奴以外を造るのは少々骨が折れたが、根幹と成る人格データを造れた後は楽だったの。……根幹の人格に性格の変数を入力しまくる方法にしたので、マイナーな性格の奴は造れて○○風な性格と言う程度に収まるが……」
『……聞くのはやぼかも知れないが、何に使う気だ?』
「嫁扱いにする」
『……頭痛いな。つまり、性交渉を出来る自律機械を造る、と?』
「同人誌とかもデータの根拠にしたのでな。そう言う方面が無難かと」
『……キャラ崩壊している奴は適用外だよな?』
「当然、そうなる。まあ、ワシから見て造りたい人格の系統と矛盾し無い物は出来うる限りブチ込んだが」
『……はぁ、じゃあ、追加でこれだけ。グロ系やリョナ系とかの購入者に甚大な被害を与えるタイプのデータは全部除外な。購入者を害してしてしまいかねないし、そしたら流石に販売元の此方が訴えられかねん』
「だが、自衛するくらいの学習は必要だろう」
『……んー、なら、セーフティを入れよう。只、他所の奴がセーフティを起動出来ない形で、な。ゴーレムとか創作だとセーフティを起動させるのが攻略みたいな構図はよく有るし』
「解った。そう言う風に調整する」
そして更に一週間後。問題に成りそうな要素を全部潰した、エレメントソフィアシリーズの受注生産が開始に成りました。
「……私からすれば性交渉目的の奴が買うのが目に見えて居るのが何とも言えないわね」
「……ですが、ロマンは有るのでは?」
「この件には全く関わらなかった水霧はどう言うかしらね」
「水霧さんがどうしたのですか?」
「彼だと多分販売を止めろと言うもの。事情的にしょうが無いけど」
「……別に人が奴隷に成る様な話では無いですよ?嫌悪感を抱く人が居るのは解りますけど」
「……まあ、只の性的奴隷って訳じゃ無いけど、セーフティを使えば、一方的にアレコレする事は可能だもの。そう言う目的で使う奴が居ない訳は無いわね」
「嫌なら何故ゴーサインを出したのですか?」
「メイドロボに家事を全部やらせる、とか、昔から有るネタでは有るもの。セーフティ的に無理矢理に性的な事をやれば色々と抵抗する様にはしてあるみたいだけど、ちゃんと接してあげて居れば突破出来る程度の物な様だし」
つまり、リアルでリセット不可能なギャルゲーをやれと言う塩梅の調整と言う事、ですね。……抜きゲー好きにはちょっと話が違うと取られる奴ですか……。
「……何だかなぁ」
「まあ、只の性処理道具扱いにして来る奴にはなびかないと言うだけね」
「……なんかヤバイ気がしますが」
「修理とかは此方がする訳だから、酷い扱いで壊したとか成るとその時に発覚するし、酷い扱いをする前提で買う場合、修理を非公式の所に任せるか自分で修理するくらいしか出来ないもの。で、自分で零から全部修理なり造るなり出来る奴は購入する事は手間賃に大量なお金を無駄に払う人だけでしょう」
「解体して技術を盗むとか、されたらどうします?」
「セーフティでそれをされたら自壊する様にした上で改造修理は受け付けません、かな」
……脆弱性をわざとセーフティとして造る、か……鑑定的な能力が有ったら無駄な気がしますけど。
「鑑定能力とか如何するのですか?」
「……ゲーム世界ならデータベースの情報を引っ張ってくる能力と定義出来るけど、科学でやれるかしら?」
「一応レントゲン写真とかスキャンとか内部を見る技術が無い訳では無いので、そう言う物を纏めて使うツールを造れば手間を簡略化する、くらい迄なら行けるかと」
「……健康診断や身体能力測定的な事を機械で簡略化、か。思いっ切りスカ○ター、ね」
「アレはいわゆる対象の内包エネルギー測定器で、ゲーム的な鑑定とは違うと思いますが」
「……中々に難しそうね」
「……目利きでの推定の事を鑑定とうそぶく奴はともかくとして、まあ、様子見してみますか」
「ぶっちゃければ手軽に買える値段では無いわよ。ある会社だと月額80万円〜250万円×人月(機械学習に掛かった人数とヶ月)が、学習型AI単体での相場らしいもの。まあ、色々と付け足して居るしエレメントソフィアの市場相場は五千万円くらいなら軽く行くわね」
「……富豪とか宝くじを当てた人くらいにしか無理ゲーな値段過ぎませんか?」
「まあ、無理ね」
「……うわぁ……ブリッジズさんは良い能力を貰いましたね」
「まあ、買い手が沢山付くかは解らないけど、数十億円くらいの純利益得る程度は行きそうね。単体が高すぎるから、顧客に成り得る所が少ないけど、ブリッジズさん的には自分で使えれば十分だろうし」
「値段を下げるとか出来ないのですかね」
「……薄利多売を出来るとは思えないわね。ま、機械学習に掛かる期間はかなり削れる訳だから、手間賃側は最小限で済んで安くは出来るだろうけど、そうすると能力を使わず真っ当に機械学習させている他所の会社に喧嘩売る事に成るし……」
「……AIを積んでいる機械は安い物は既に有ると思いますが」
「まあ、そうね。先の計算式だと要は機械学習させる量を減らせば安く出来るもの。それに音声検索機能や読み上げ機能とかも有るのだから、それを使えば検索代行は出来るわよね」
「……なら、安く済ませられませんかね?」
「けど、身も蓋もない事を言えば、定型文を喋るだけで良いならゲームのシナリオボイスだけで良くないかしら?」
「……流石にある程度は安くないと売れないかと」
「仮に人間と遜色無い自律学習AIロボットが二千万円で売れるとして、それを二コピペで大量販売するとしたら十一体は売れないと行けないし、二十万なら百十体は売れないと元が取れないわ」
金額が合わないかとも思いましたが、AIではなく、周りの機器の代金分の上乗せ額ですかね。
「……それくらいなら売れるかと」
「需要の把握をしてからなら出来るけど、市場調査も無しに最初からある程度以上売れる前提で売るのはちょっと」
「……あー、つまり、初期投資に見合った売り上げが出るかが解らないので、少数だけ高値で売って市場の様子を見てから判断しよう、と」
「そう言う事ね」
「……何だかなぁ……。それだと最初に買う人がババを引く事に成りませんか?」
「安価な奴は機能的にデチューンするつもり。それにそもそも造りたい人格に添ったデータ集めをするのだもの。先行で買う人はオーダーメイド基準の価格よ」
「……うーん、機械学習の手間を能力で大幅短縮しているのだから手間賃側の大幅削減が可能で、それの分だけ安値で出せるとは言え……安値で出し過ぎても能力無しで造って居る所との間で色々と問題が有る、かぁ……」
「オーダーメイドとは言え、造れる人格データの選択肢はある程度以上世界で大量に量産された物が基本……と考えると限界も有るけどね」
「とは言え、ツンデレヒロインとかママ味の有る人とかそんな感じの人格データを造る分には問題無さそうですが」
「高クオリティーの、と言う前置きさえ満たすのなら、ある程度以上人気な作品の同人誌が膨大に書かれているキャラクターもワンチャンだけど、他所に類似の性格の人が居ないと不足分を補った部分に違和感が出るかもね」
「……エレメントソフィアはあくまで独自人格存在として出すから画像生成AIと同じ理屈を通せるので有って、意図的に既存のキャラクターに全力で被せに行ったらアウトですよね」
……まあ、画像生成AIがこの先規制されて整合性が取れない発言に成るかもしれませんけど。
「非売品として造るだけならともかくとして、ね」
「……ブリッジズさんは自分用に造れる、と。……良い能力を貰いましたね」
「シェイプクリエーターズ社として能力を与える都合に合わせた上ではかなり良い物だと思うわ」
「……ま、ユニット生成能力とか直接二次元存在を生成召喚する能力とかの方が本来手っ取り早いですしね……」
其処で久々に水霧さんからスマホに連絡が来ました。
『会議室に来い。クラフトライト社が次の奴を出して来た』
「……マジですか?」
『ああ、大マジ。じゃあ早く来いよな』
そして通話が切れました。
「行ってみますか……」
「そうね、そうしましょう」
……ほんまこいつ……。




