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携帯端末で地図を見ながら東洋風の街並みのコロニーを移動し、目的地のマンションに辿り着くと入り口の両脇に阿吽像的な人の形をしたオブジェが飾られて居ました。……細部が動いているので、内部にカメラなり何なりが仕込まれて居ると思われます……気にせずマンションに入ろうとすると、オブジェから声がしました。
「おう、ネイト様、か。今度はどうするつもりなのかと」
内部にマイクでも仕込まれて居るのでしょうから特にそれにリアクションはせず、返します。
「……こんにちは。管理人さん、で良いのですよね?」
「そんな大層な者じゃない。只の警備員だよ」
「……お仕事お疲れ様です。中に入らせて貰っても」
「事前に聞いているからどうぞ、お入りください」
「では失礼して」
すると中に荷物が積み重なって居て、人が二人傍らに立って居ます。一人は液体が人型を取っている様な見た目で、もう一人は猫耳や猫の尻尾等のパーツが軽く付いている程度のレベルの猫の獣人が居ました。その内、液体の人が言います。
〔……あ、来た、来た。ネイトさん。移動お疲れ様、ようこそ、ツバメの止まり木へ。私が管理人です〕
ええと、管理人さんの名前は確か、
「確か、甲原ミチルさんですよね。今日からお世話に成ります」
「ルド様とかから事情は聞いているよ。スプリンガーさんから変な勧誘をされたらしいね」
「ああ、変な事を言わない人がやっと来ました……」
〔……うーん、事実がどうであれ、スプリンガーさんの話は貴女の視点からすれば変な事、よね。スプリンガーさんが不憫に思えて来た……〕
「……? あんな変質者が、ですか?」
〔……はぁ……不憫……けど人命に関わるから悠長にやって良い話じゃ無いはずなのに、貴女の封印を即解かないとかルド様は何を考えて居るのやら〕
「そもそもそう言う封印が存在しないからじゃないですかね、知りませんけど」
〔……はぁ、頭痛い。なら知らない前提で説明するけど、このコロニーには魔法や異能持ちが沢山居るの。それとそう言う力を他人に与えられる奴がある程度の人数ね〕
「マジですか?」
〔マジです。それで諸事情から契約書にサインした人には派閥に入る事を条件に能力をばら撒いている人も居ます〕
「……その人の所に行っても良いですか?」
〔貴女はもう持って居ます。……と言うか、昔に既に貰って居ますよ〕
「またまたー、今回が初なはずですよ」
〔……本来やらなくて良い作業的な意味で面倒臭いですね……良いです。私がやりますよ〕
すると甲原さんは私に力をぶつけました。すると私から力が溢れて来ました。え?
「……甲原さんは力を与える力でも有るのですか?」
〔記憶周りは触るのは失敗したらアレだったから触りませんが、それは私が与えた力では無いです〕
「……ですが、これは……」
〔繰り返し言いますが、私が与えた力では無いです〕
「……なら私にこんな才能が? 今なら何でも出来そうな気がするのですが」
〔いえ、貴女はある事件の対応で貴女の能力を盛らないと死ぬレベルにキツイ条件に成った為、皆に貴女の能力を盛って貰った結果だそうです〕
「……嘘臭いなぁ……」
〔……ルド様、今聞いているか知らないけど、真面目に速くこの人の記憶の封印を解いてよ……。説明する度にこの人の思考が脇道にずれてわざわざ補正の為の説明をするのが面倒過ぎるよ……〕
「まあ、解釈がどうであれ、とりあえず力をありがとうございます」
其処でもう一人の喋って無い側の猫の獣人の人が喋り出します。
「……ちょっと良いかな」
「どうぞ。何でしょうか」
「なら言うけど、救世主活動をやるなら速くやってね。疑似戦争の事をやって居る所が数字を押し上げて居るとは言え、戻った期間中の死亡事故なり殺人事件等の死が絡む話はで世界平均 で考えると一国につき千五百人くらいは居るのだし、貴女の能力ならそれを全部救えるから」
「……世界の平均値を持ち出すとか世界中の国が二百其処らと考えるなら三十万人其処らの人数を私に救えと?そんな無茶な」
「貴女の能力なら問題無く出来る、はず。既に貴女はそれ以上の人を助けた後だから」
「……意味が解らないのですがね。皆私に期待し過ぎですよ」
〔……〕
「……はぁ……貴女の能力は魔法生物を出せます。私が知っている範囲でもそれこそ数千単位で」
「……私を他の誰かと間違えていませんか?」
〔……駄目だ、父さんに連絡しますね。ちょっと待ってください〕
そして甲原さんは父さんとやらと電話をすると、落胆してこう言いだしました。
〔……ネイトさんの記憶を封印して居る理由の方との兼ね合いで問題が有るため記憶封印は解けない、か〕
「証明はどうなるのですか?」
〔とりあえずネイトさんの能力マニュアルを送って貰ったから、言った通りにしたら色々と使えるよ〕
「さっきの奴が能力覚醒なら与えた能力を説明しているだけでは?的な感じが有りますね」
〔……何でも出来るって認識なのだよね?なら、ネイトさんが今日のこのコロニーに入る前、もっと言えば、睡眠から起きた時間の事を調べてみて〕
「……解りました」
調べた結果。
「……なんですかね、これ。世界中が光に包まれて組み変わって居るのですが」
〔お父さんが言うにはそれは平たく言えば世界の再構築だけど、貴女の記憶がそれをやる上で邪魔だったから封印されました、だって〕
「……え、世界が既に滅ぼされていたとかの落ちですかね、これ」
〔いえ、やった人は創造主らしいので、只の世界のアップデートですね〕
「……」
〔光が世界に溢れる前を見て。ルド様が貴女に要点の説明をしているらしいから〕
「……解りました」
言われた通りに該当部分を見ます。すると。
「……半分他人が原因の全員が記憶引き継ぎのままの時間巻き戻しの首謀者に私が認定された結果、犯罪者達とかから盛大にヘイトを買ったので、自衛の為に皆から力を貰いつつ、時間巻き戻しで利益を得た人達と勢力を造った結果、ですか」
〔そうそう〕
「……これ、救世主活動って慈善事業と言うかそれでの支援者達への還元作業ですよね。やらないと不味いタイプの奴じゃないですか……」
〔まあ、そう言う事だね。嘘だと思うなら更に昔の情報も閲覧しておくと良いよ〕
「……勘弁してくださいよ」