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 ある日、私は幾つかの寝て見る夢を見ました。使えるはずも無い力で化け物を倒す夢、新しい見た目を手に入れる夢。実際には会った事も無いイケメンを性的に襲う夢。まあ、私的には良くあるなんて事の無い夢でした。……光学迷彩に依る見た目変更アイテムの、極光役者オーロラキャストを皆が使う場所に私も使う為に引っ越すその日の朝迄は。その問題の日、私は朝起きたと同時にチャイムを鳴らされた為急いで対応に出る事にしました。

「はーい、ちょっとお待ちください」

着替えた後玄関の扉を開けた私は自分の目を疑う人物に会う事に成りました。……名前は解りませんが、自分が夢の中で襲って居た面識の無いはずのイケメンの男性が玄関先に立って居たのです。

「……えっ……夢でも私は見ているのですか?」

「……真面目に記憶無くなって居るのな。……そうだ。ならこう言おう。救世主活動に興味無い?」

「お帰りください」

私は扉を直ぐさま閉じようとしましたがその男性は扉に手を挟み、慌てた声を出します。

「待て、待て、冗談だ、悪かった。君が今日引っ越す予定の先のコロニーからの出迎えだよ」

「……本当に?」

「本当だって。証拠に何を出せば信じる?」

「……では引っ越す際の契約書を」

「ほい」

すると引っ越し先のツバメの止まり木と言うマンションの契約書の写しが渡されました。

「……うわぁ、真面目に本当なのですか」

「冗談言って悪かったな」

「……本当ですよ、もう」

「冗談じゃ無くする事も手前次第で出来るけどね」

「いやですね、教祖に成れと言う事ですか?」

「……」

「……それで何故黙るのですか?」

「手前の信者は既に数百万人くらい居るよ」

「……は? 冗談にしても加減が無さ過ぎるのでは?」

「……うーん、駄目だな、テンプレ導入で宗教勧誘扱いされるならどう言おうか」

「……朝起きたら宗教の教祖に祭り上げられて居ましたと言うのが事実だと?」

「実際には紆余曲折有ったけど、君が諸事情で忘れているって言うだけの話だが」

「……嘘臭いですね……」

「……はぁ、なら、引っ越し先のコロニーに行ったら色々と解ると思うよ……」

「……不穏過ぎませんか?」

「……まあ、事前に警告しておくと迂闊な事は喋らない事をお勧めするよ」

「……不穏過ぎませんか? 行く事を辞めたく成って来ましたよ」

「それで辞めるならそもそも契約書にサインしていないと思うのだけど?」

「……そりゃあ、契約書に警告的な事も書いてありましたが、教祖扱いされるのは流石に予想外ですよ?」

「ま、信じないなら信じないで良いさ。だが、信じないなら行く事を辞める理由も無いだろう? ……コロニーに行ったら解るから、さ」

「……そろそろ引っ越し業者が来るので、お引き取りくださいよ」

「解った。じゃあ、今は帰ろう。只、これだけはしておくぞ」

すると私に何かがされた感覚が有りますが、それが何かは解りません。

「……何をしたのですか」

「護符的な物を貼り付けただけだよ。嘘だと思うなら実演して見せるけど?」

「……嘘臭いですね……」

「手前がやらせたのだからな?」

するとその男性は私に手投げナイフを投げましたが、私が何もしなくとも何かに阻まれました。

「……嘘じゃないみたいですね」

「じゃあ名前だけ名乗ったら帰らせて貰うよ。俺はナイト=スプリンガー。引っ越し先のマンションで会おう、河合二凪かわいになさん」

 それでその男性は帰って行きました。……不審者感が凄いですが、不審者が普通護符なんてくれますかね? ……とりあえず現地に行けば解る、でしたね。……嫌な予感しかしないけど、行くとしますか……。


 そして暫く待つと引っ越し業者が来たので荷物を引き渡し、電車で現地に向かったのですが、……コロニーの中に入る際に警備会社の人が何故か私の事をネイト様と呼んで来ましたね。……一応ネイトって私のコロニーで使う予定だった仮名なのですが、何でもう知られて、と迄考えて、警備会社なら住人と不審者を見分ける為に事前に情報をちゃんと把握しているか、と言う事に思い至り、お仕事お疲れ様ですと返すに留めます。

 コロニーに入場する前に数枚の契約書に改めてサインをする様に求められますが、コロニーに使われている技術の悪用防止の為らしいので一通り情報を確認してからサインをします。使用用途次第では更に何枚かの契約書にサインしないといけない様ですが、今は必要無い為今はしないで済ませます。すると契約書を渡して来た人が私に言います。

「ネイト=エポニム様。今度は誰をお救いに成るつもりで?」

「……あはは、私は確かにその名前を名乗る訳ですが、元ネタからすれば名前負けも良い所なのですがね」

「ご謙遜を。あの大抵の事を出来るナイト=スプリンガーを仲間に加えて居て何を言うのですか」

「……あの変質者がなんだと言うのですか」

「ふふ、またそう言われて、微笑ましい限りです」

「……良いです。コロニーの居住エリアにはもう入場しても良いのですよね?」

「ええ、どうぞ。色々とこれからも大変だとは思いますが、今後ともよろしくお願いします」

「……お世話に成ります」

「……いえいえ。では、これが極光役者オーロラキャストとその取り扱い説明書です。良き別の人生を」

 斯くして私はコロニーへと足を踏み入れました。


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