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【ちょっと長めのss】裏口入学失敗【初投稿】

【1】

ある日のこと、俺は高校時代の友人Bに飯に誘われた。


同窓会に顔を出していなかった俺は、Bの近況を知りたかったので一つ返事でOKした。


翌日、何年か振りに会ったBは黒い高級車に乗って現れた。


奴は俺が受験に失敗したことを知っていて、自慢でもしたいワケなのか。


そうネガティブなことを考えていた俺はBの発言に驚いた。


B「お前、東大に入りたくないか?入れてやるよ。」


Bはネズミ講かなんかかもしれない。俺は反射的に気難しい顔をした。


Bはこう続けた。


B「裏口入学だよ。もちろん入学金はこっちが持つ。お前、コンビニバイトなんだってな。地元のやつから聞いたぞ?変えたくないのか?人生。」


落ちぶれている俺をコイツは救済しにきたのだろうか。


Bに対する不信感は消えなかった。

が、俺はこんな人生だから試して見たいと思った。


上手く行けば東大生。それにBが信頼できる人間なのか試したい。ダメならコイツとはオサラバすればいい。


そして俺はOKした。


【2】

それから3ヶ月がたった。東大もBのことも完全に忘れていた。そんなときBから電話がかかってきた。


B「そろそろ学校始まるぞ。学校から手紙が来てるハズだ。確認しておいてくれ。それと学生証は赤い封筒に入れてある。それがお前の学生証だ。」


面倒見のいいやつだ。感心しながらも、俺はパンパンに膨れ上がった郵便受けから書類を探した。


赤い封筒はすぐに見つかった。


中には案の定、東大の学生証が入っていた。


しかし、若干顔写真が俺に似ている以外、名前も年齢も違うものだった。


それに、印字の"編入学生"。俺は編入学扱い。いきなりハードモードだ。心配だ。


東大からの手紙も入っていたが学生証と同じ宛名だった。


これが裏口入学。罪の意識と共に、東大ブランドとBに対する安心があった。


そうして俺は、真っ先にコンビニバイトをやめた。


どうやらBという小さな歯車のパーツが埋まることで、俺の人生の歯車は回り始めたようだ。




【3】

入学式が終わると編入生は強制的に補習を受けさせられた。補習が難しすぎて昼休憩でBに電話をした。


意外にも、Bは裏口入学を怪しまれない方法を教えてくれた。


B「その補習には留年した奴もいる。そいつらは、ヤケに勘が鋭い。お前から牽制をしなければ裏口入学がバレるぞ。」


それもそうだ。コイツは実に頭が冴えてやがる。


Bはこう続けた。


B「補習にはCって奴がいる。そいつは東大の情報通だ。そいつにバレたら一瞬だ。奴には必ず牽制を入れておけ。」


Cの名前は俺も知っていた。

奴は午前の授業でやけにチャラチャラしていやがったからだ。


放課後牽制を入れよう。そう決めた。


いつ電話しても対応してくれるコイツは何の仕事をしているのか。不思議でたまらない。



【4】

放課後、奴は補習があった教室に残ってバカそうな女どもと談笑してやがった。


こんな奴でも才能があれば東大に入れるのか。


怒りと共に奴の方向に歩みを進めると。


C「なんだよ」


俺の視線と向かってくる気に、奴は気づいた。間髪いれずに俺はこう言ってやった。


A「お前、やけにアタマ悪そうだな。"裏口"か?」


奴の顔は、意外にも拍子抜けしたような表情を浮かべていた。


Cは気分を悪くしたのか、俺にキッと睨み付け奥に消えていった。


女もキッとしてついていった。が、Cが戻ってくると金魚のフンのように女どもも戻ってきた。


どうやらCが一服しただけのようだった。


そしてどういう風の吹き回しか、Cは俺を飯に誘ってきた。




【5】

奴は俺より一つ二つ若そうだったが、体格がよかった。


奴の半端じゃない威圧感が俺の口の筋肉を強ばらせる。


しかし、怖じ気づいたらバレる。俺は"裏口入学"というワードを何度も入れて捲し立てた。


チャラチャラした見た目とは裏腹に、俺の言葉をただひたすらに受け止めるCを見て、俺は我に帰ったように黙った。


不気味さといい、しーんとした空気に耐えられなった俺は、トイレに駆け込みBに電話をかけた。


が、奴は電話に応じなかった。


その時初めて、彼も仕事をしているのだと悟った。


すぐに戻るのは怪しまれるので、大便をしたというテイで少しゆっくり戻ってきた。


席に座るといきなり、奴は重い口を開いた。


C「"お前も"裏口なんだろ?」




【6】

ん?


こいつ、ホントに裏口なのか?


いや。


全てが見透かされた気がした。


俺が捲し立てたことで奴は勘づいたのか?

奴は自身が裏口だということにして俺の懐に入ろうって魂胆なのか?


ふと自分の表情が気になった。すると、呆気とした表情を浮かべていたのだった。


どうにか奴の本意を知らなければいけない。


俺はこいつの話を真に受けて同じ裏口をしたという立場として心を許すべきなのか、バレているのかもしれない嘘を押し通すべきなのか。


情報通のコイツにバレていたら一貫の終わりだ。


こいつは逃せない。本能だ。




【7】

補習が遅くまであったせいか、飯を食べ終わる頃には外は暗くなっていた。


暗い夜道を奴と、とぼとぼと歩いている。


会話はない。


牽制し合っているからだ。


正直、奴が何時どうしてるのかさえ俺は監視したい。


奴が今ポケットに入れているスマホを握ったとき、それは自分にとっての死を意味するかもしれないからだ。


ただ、Bにも電話がしたかった。助けが欲しかった。


Cが本当に裏口なのか。

裏口入学させてくれたBに聞けば、それが解決するかもしれない。


この気が抜けない状況で、あと数分の帰り道で、どうにかBと電話を、それもCにバレずに、それもCを逃さずにしなければいけない。


住宅街における残りのアクションは…


少し先に公園が見えた。


奴に俺の荷物を持たせてトイレに籠り、そのうちにBに電話をする。


やや強引かもしれないがそうすることにした。




【8】

事は案外順調に運んだ。


Bに電話をかける。


B「どうした?」


A「なぁ、Cって裏口なのか分からないか?奴が裏口じゃないとするなら、俺が裏口だとバレたかもしれない。」


B「奴は裏口じゃない。」


ドキッとした。


B「奴は腕利きの情報通だ。きっと今必死にLINEなり、電話なりでお前の裏口入学を拡散してるに違いない。確かめてみろ。」


そう言われた俺は電話を切ってトイレから外に出て奴を探した。


奴はトイレの外壁にもたれかかり、トイレの入り口を監視しながらスマホで電話をかけているようだった。


俺は突発的に奴の方へ向かい、こちらに気づいて逃げる奴に、落ちている花壇用のレンガで頭をクリーンヒットさせてやった。


たちまち、奴の頭から流れ出たどす黒い機械油が地面に染みていった。


やってしまった。俺は恐怖のあまり、信頼のできるBに電話をかけることにした。


A「もしもし?、Bか?なぁ、俺やっちまったよ。」


B「おう。場所はどこだ?」


Bはヤケに落ち着いていた。だからこそ少し落ち着いて喋れた。


A「○○にある○丁目の公園のトイレだ。なぁ、出頭した方がいいよな?俺。」


B「まぁ、焦るな。とりあえずそっちに行くから。見つからないように近くで待ってろ。」


3分くらいでBの車がやってきた。


どうするのだろうか。この高級車にCの野郎を載せて死体遺棄でもするのだろうか。

Bは俺をどう助けるつもりなのだろうか。


いろんな思案が浮かぶ中で、Bのかすかな声が入ってきた。


B「くそ…。お前が留年したら俺の商売が危うくなるだろうが。手間とらせやがって…。」


Cの学生証を拾い上げたBは足早に運転席に向かった。


助手席に駆け寄った俺を見向きもせず、黒い高級車は闇夜に消えていった。


Cの手にあったスマホにはBの電話番号が表示されていた。

あの、難しかった方のためにヒントっていうかほぼ答えを与えます。

CはBと電話してたんですよ。

つまりはCはBの客って分かると思います。

で、Bとしては留年してるCは裏口入学がバレる要因になりうるんですよ。そうしたら邪魔だと。

じゃあどうするかって話。

最初からAはCを始末するために送り込まれてるんですよ。

裏口入学ビジネスをBはしてるってことなんですよね。

電話が繋がらなかったのはCがBと電話していたからで、CもAと同じくBに助けを求めていた。そんで二人ともいいように操られていたって感じですね。

個人的にはAが裏口入学ビジネスの歯車が上手く回るようにするための役割を果たしていたっていう。

あとは、Aが信頼していたBは結局はビジネス優先だったっていうのも感じ取って欲しいです。

残されたAの空しさみたいな。Aの立場になって心情を読み取ってくれたらより深い作品になるかと思います。

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