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9 うらやまのどらごんさん③

1000年の封印から開放された元魔王ゴルディは冒険者のユーシアと出会い冒険者として活動をすることになった。

ギルド長からの依頼はとある調査依頼だった。

「ちょっともっとゆっくり進んでくださいよーゴルディさーん!わかってます?私1人でここマッピングしながら進んでるんすよ?そんなにすぐに書けるわけないじゃないですかー!」

手に持ったペンをブンブン振りながら後ろでわーきゃー言ってるので仕方なく足を止める。

「ユーシアよ。このような狭いところでそのように声を張らずとも聞こえる。それにこういったところで大きな声を出すと…」

「え?なんですかー?」

自分のしたことを全く理解していないようだったのでゴルディは頭を抱える。

「こういったところでそのように大きな声を出すのは、自殺行為と言えよう。なぜならば…」

ゴルディは背後から近づいてくる音に対して足を向け話を続ける。

「ユーシアは我よりも冒険者としては先輩に当たるが、戦闘経験としては我の方に軍配が上がるようだな。こういった場所で大きな声を出すのは自分自身の場所を敵に伝えているようなものだ」

「敵ですか?まさか例のドラゴン?」

「いや、それに比べれば随分とかわいい客であるぞ」

もともと薄暗い洞窟の中を手に持っていた松明の明かりに光る何かが目の前に集まる。

「えーと…ピンチってやつですかこれ?」

「お前が引き寄せたものであることを忘れてはおらんだろうな?」

たははーと笑っているユーシアを横目に集まってくる敵の方を再び向く。

「こうなっては仕方が無い。ユーシア少し暴れるぞ」

「了解っす!任せましたゴルディさん!」

これまでに無いスピードで洞窟の端にあった岩の後ろでゴルディを応援し始める。さすがは経験のある冒険者と言うべきなのかどうなのかは…やめておくことにしよう。

「数は…そうさな6匹といったところか。別に我は逃げも隠れもするつもりは無い。そうもったいぶらずにさっさと出てこい」

ゴルディの言葉に反応するかのように獣たちは姿を表す。

体長は1メートルをゆうに超える大型の犬のような姿の獣たち。一般的な犬に比べ大きな体と松明の光に光る大きめの犬歯が彼らを獣であることを表してくれる。

「ユーシアよこやつらを見たことはあるか?」

「えーっと、見たことは…無いですけど、知ってます!こいつらは聖獣の中でも下級のシャインウルフという種類の聖獣です。小さな体ですが意外と力が強いって話です!」

シャインウルフと言う割には小汚い見た目をしているが、そのあたりは気にしないでおくのが正しい判断であろうとゴルディは考えるのをやめた。

ひゅっと群れの中から2匹が抜け出し壁を伝ってゴルディに向けて向かってくる。

「左右からの同時攻撃か…悪くはない…だが!」

ゴルディはばさっと身につけていたマントをたなびかせ両手を広げ、手に魔力を集め左右から噛みつこうと飛びかかってきたシャインウルフを受け止める。

「この程度を止められずにどうして冒険者などできるよ言うのだ?」

「いや、普通はそれ避けるんですよ?冒険者でも片手で受け止められる人なんて…普通に居ないですよ?」

どうもゴルディとユーシアの間には冒険者というものに対しての大きな認識の差があるようだが、ゴルディの中にある冒険者の普通はあの勇者が基準であるのだからこの差は当たり前といえば当たり前なのであろう。

「ユーシアよ。こやつらの弱点などは無いのか?うるさくてかなわん」

「えーっと、聖獣はみんな体の一部にその力の源である結晶を持っているはずです!」

体のどこかにとは随分と曖昧な助言であるなと心のなかでぼやきながらも必死に魔力で作った手に噛み付いてくるシャインウルフの体を注意深く観察する。

「これか?」

ゴルディは手にまとっていた魔力を止め、バランスを崩したシャインウルフの胸のあたりを手で突く。

ギャンと小さな悲鳴のような声を上げたかと思うとシャインウルフたちの体が光の塵になり姿が消えてしまった。ゴルディの手の中には白っぽい光を反射するきれいな石が残っていただけだった。

「それです!聖獣たちは基本的に勇者たちの魔力から生まれた獣なのでその結晶が体から離れると体が今みたいに塵になって消えるんです!ちなみにその結晶は割と高く売れるんでちゃんと持っておいてくださいね!」

いい笑顔で説明をしてくれているユーシアの目線は一切結晶から離れようとしていないのは気の所為ではないだろう。

「弱点さえわかればこの程度」

「ゴルディさん行っけー!って消え?」

目の前に居たはずのゴルディの姿を見失いキョロキョロとあたりを見回すユーシアは目の端に光を捉える。

「ふむ。この程度か」

シャインウルフが消える時に出す塵に包まれたゴルディがそう言いながら姿を表す。

「ゴルディさんって瞬間移動も使えるんですねー」

あーそういうことと不思議と納得しながらユーシアは岩の影から出てくる。

「瞬間移動?そのような術は使えん。普通に移動しただけなのだが」

手には6つの結晶を持ったままユーシアに近づいていくゴルディにはユーシアが何を言っているのかよく理解が出来ないといった表情をしている。

ゴルディとしては久しぶりに戦闘中に見せる移動術を使っただけであり、当たり前のことをやっただけであったためユーシアの言っていることがわからなかった。

「いや、人は普通に考えたら目の前から消えたりしませんから」

我は人ではないからその概念からは外れるのだが…とは言えないため自然と沈黙するゴルディ。

「そ・れ・よ・り・も!ゴルディさんゴルディさん!」

目をキラキラさせながら近づいてくるユーシアに少しのけぞるゴルディ。

「すごいじゃないですかゴルディさん!聖獣ですよ聖獣!できるんじゃないかなってどっかで思ってましたけど!冒険者活動の初日に倒しちゃうなんてすごいですよ!」

ユーシアはそう言うが、先程シャインウルフは聖獣の中でも下級と言っていたと思ったのだが…

「あやつらは下級の聖獣だと言っていたではないか。下級のものを狩ったところでそれほど武勲にはならんだろう」

「そんなことないです!聖獣はそもそも普通の獣とは違うんです。そもそも最下級とも言われるシャインウルフでもシルバーランク最上位である4級の昇格試験課題になるくらいなんですから!私もまだ倒したこと無いんですよ?」

最下級であっても人類にとっては脅威なのだろう。あの程度でも。そして、お前が呼び寄せたのだがな!

ふと、ゴルディは自分以上の力を有していた人類のことを思い出す。

あの勇者はどれだけの研鑽を積んで我の元に来たのであろうか…

それほどの力を有していたのであればどれほどの人類の期待を背負って我の前に現れたのであろうか…

同じ状況にあったとして我はあやつと同じ選択をできたのだろうか…

「やはりかなわんな」

武力もさることながら1人の大人として大きさを有していた古き友を思いゴルディは自然の笑みを浮かべていた。

「どうしたんですかゴルディさん?すごく楽しそうですね」

「いや、なんでも無い。すこし懐かしいことを思い出しただけだ」

「ふーん?そうなんですか。それにしてもこの依頼結構ヤバそうですね〜。最初に出てくるのが聖獣ってことはこの洞窟は確実にゴールドランク相当の実力者じゃないと普通は攻略できないですよね〜普通は」

どうやら我は嫌味を言われているようだ。

「普通じゃないと言われているのはなれているとはいえ、直接言われるのはなかなか来るものがあるな」

「すいませ〜ん。別にそういうつもりで言ったわけじゃないですけどー、ゴルディさんなら別にできちゃんじゃないかなっていう期待ですよ期待!」

「そういうことにしておこう。それよりマッピングとやらは進んでおるか?」

「あーそのへんはもう諦めました〜。私はゴルディさんの後ろついていくんで!」

こやつ面倒だと思って諦めたな。まぁ、必要は無いものだと思っていたから別に問題は無いであろう。

再び洞窟の先へ歩みを進めるゴルディとユーシアの2人。

…とここまでは問題はなかったのだが、それはただ単に我らの運が良かっただけだったらしい。

洞窟内で迷い始めてどのくらいの時間が経っただろうか。自然と表情には疲労の色が出始める。

視界の悪い洞窟内というのは常に何かしらに意識を向けなければならない。例えば分かれ道である。目的はっわかっているがその過程が一切わからない状況での判断は1つ間違えることで時間と体力を奪っていく。さらにはいつ敵に狙われるかわからないためありもしない可能性を考慮しながら行動し続けなくてはいけないのだ。普通は。

「なんでそんなに元気なんですかゴルディさん」

「元気も何も疲れる要素が無いからな」

「普通はこういう状況って疲れるんですよ?今の私みたいに」

もともと魔族というのは暗闇の中でも視界が悪くなることは無い。確かにちょっと見えづらいかなーくらいらしい。

ちなみにメアリーはあまり得意ではないらしいが、子供の魔族以外は闇に怯える魔族はほぼ居ないと言っていいだろう。

「それにしてもここってどこらへんなんですかねー?進んでるのか戻ってるのかもわっかんないですよ〜」

「ちゃんと進んでいるぞ?」

「なーんでそんなこと言えるんですか?マッピング出来ないって言ってたじゃないですか」

「道など歩いていれば自然と覚えると思うのだが…」

「はぁ…もうゴルディさんなんでもありですね。私は楽ができるんで良いんですけど〜。それでいまってどのくらいの位置にいると思います?」

そのようなことは知らんと言いたそうなゴルディだが、これ以上ユーシアに何かを言うと無限毒吐き装置になりそうなのでゴルディは自然とその言葉を飲み込んだのであった。

9話目もありがとうございました〜!

ゴルディさん強すぎてイメージしているとおりに伝わってるかがよくわかんないっすね。とりあえずめっちゃ強いことは伝わりましたかね?

ちなみに今回出てきたシャインウルフですが、僕の中での扱いは…始めの村を出てからすぐに現れる青い生物的な…草むらに入ったら出てくる鳥的な生き物Lv2くらいなテンションです。

なんて凶悪な最初の的なんでしょうか…

ま、元魔王ですからこれくらいが丁度いいはずです。きっとたぶんおそらくめいびー…

さてさて、今の所おふざけキャラでしか無いユーシアちゃんですけど彼女の実力はいかに!

今後の期待ですね!僕としては年内にまた更新したいと思ってまーす!

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