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感情希薄なモルモットは二重人格者  作者: 識友 希
第5章「協力者編」
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第95話「ロイヤ族の姉妹と白黒少女」

 数十分ほどカロスの話を聞いた後、オレはその場を後にする。

 そしてそのまま次の目的地であるミールの研究室に向かっていると、とある知り合いと出くわした。


「あっ」


 オレと目が合うと、相手の方がぽつりと声を漏らす。


「偶然ね。もしかしてあんたも姉さんのところにいくの?」


 出くわしたのはミールの妹でありトリスカーナイエローの生徒でもあるミスト・アーケディアだ。

 口ぶりからして、どうやらミストの目的地もミール研究室らしい。

 ミールから頼まれたのか、ミストの両手にはショッピングモールの袋がぶら下がっている。表に出ている物しか分からないが、パっと見た感じだと袋の中には魔道具開発のための道具が大量に入っているようだ。

 ちなみに、ミストはリダンに対してあまり強い感情は持っていないようで、刺さってくるのはプラスのものとマイナスのものが少しずつといった感じだ。

 マイナスのものは恐怖心や懐疑心といったもののようだが、プラスのものはいまいち分かっていない。


「ああ。貴様も呼び出されていたのか」


「まあね」


 同じ目的地に別々で行く理由もないため、オレは少し間隔を空けてミストの横を歩くことにした。

 ミストとはミールの研究室でたまに顔を合わせる程度の仲で、それ以外の場所での関わりは一切ない。当然、今までこんな風に二人きりの状況になったこともないわけで、二人の間に少し気まずい沈黙が訪れる。

 数分すればミールの研究室に着くわけだし無理に会話をする必要もないのだが、オレは折角の機会なので話を振ってみることに決めた。

 オレは話題にできそうなものを探し、ミストが両手に持った袋に視線を向ける。するとこちらの視線に気づいたのか、意外にもミストの方から口を開いてくれた。


「姉さんから買い出しを頼まれたのよ。相変わらず妹使いが荒くて困るわ」


 ミストはそう言いながら両手に持ったショッピングモールの袋をぷらぷらと揺らして見せてきた。ミストはミールから何か頼まれる度に、いつもこうして愚痴を言っている。だがなんだかんだで研究の手伝いをしていることからも、ミールから頼られるのは満更でもないのかもしれない。


「随分と量が多いな。今日の要件と関係のあるものなのか?」


「たぶんそうなんじゃない?詳しくは聞いてないけど、新しい魔道具を開発するって言ってたし」


「新しい魔道具?以前から話をしていた、『セアリング』とかいう奴とは別件ということか?」


『セアリング』というのはミールの研究室で開発しようとしている魔道具の仮称だ。初めてミールの研究室に行った際に聞かされた、マナの感覚を共有する魔道具の事で、現在ミールの研究室ではそれを開発するための理論について色々と調べて検証している。


「そうだと思うわよ」


 ミストも今日呼び出された要件についてはあまり把握していないようで、この話題はこれ以上広がることもなく終わってしまう。

 流れのままに次の話題に移ることもできず、再び沈黙が訪れた。ミールの研究室まではまだもう少しかかる。

 オレは次の話題を探すため、もう一度ミストの方へと視線を向ける。だが、先ほど話題にしたショッピングモールの袋以外、話題にできそうな物は見当たらなかった。

 正直、これまでの人生でまともなコミュニケーションをとってこなかったため、こういう状況で何を話せばいいのかが全く分からない。相手に対して何か明確な要件でもあれば話を振っていけるのだが、生憎と今は何もない。

 仕方なくオレは話題探しを諦め、数分の間この沈黙を受け入れることに決めた。


 少ししてミールの研究室へとたどり着き、そのまま中へと入る。


「あれ?二人とも一緒だったんだ」


 リダンとミストが一緒に来たのが意外だったのか、ミールがそうこぼす。


「さっきそこで偶然会ったのよ」


「あ、なるほどー」


「それよりこれ、頼まれてたやつ。今日はやけに量が多かったけど、何に使うわけ?」


「これはこの前発注があったポータブルを作るための道具だね」


 どうやら、この大量の道具と今日の要件は関係なかったらしい。


「いつもありがとねミスト。ほんと助かってるよー」


 ミールはミストからショッピングモールの袋を受け取る。袋は結構な重量だったようで、受け取ったミールは一瞬だけ態勢を崩した。


「うわ、思ってたより重たいねー。大丈夫だった?」


「魔法で軽くしてたからそうでもなかったわ。まあ少し疲れたけど」


 ミストはそう言いながら研究室の中にある冷蔵庫の方へと向かう。そして中にあったジュースを近くにあったコップに注ぎ一気に飲み干した。

 オレはそれを見て、先ほどの沈黙の中で自分が取るべきだった行動に気付く。

 今にして思えば、ミストが隣で重い荷物を持っているのであれば手を貸してやるべきだったのだ。そうした方が気が利く人間として多少は好印象が稼げただろうに、みすみすその機会を逃してしまった。

 まあ今更何を思ったところで意味はないため、この失敗は次回の機会があれば活かすことにしよう。


「リダン君も来てくれてありがとねー」


「構わん。...それで、今日の要件は何だ。そいつの話だと、セアリングとは別に新しい魔道具を開発すると聞いているが」


 オレはミストの方を視線で指しながらミールに問いかける。


「その通りだよ。とある子からお願いされて、急遽作ることになったんだ」


「貴様は普段からそういった請け負いもやっているのか?」


「ううん、普段はやってないよー。今回は特別」


 どうやら、今回の魔道具作りはどちらかというと研究ではなくミールの個人的な事情で受けているらしい。


「ちなみに、とある子...というのは今そっちの部屋にいる奴の事か?」


「あ、気づいてたんだ」


「誰かいるという程度だがな」


 研究室には客が来た時用の応接室があるのだが、そこから普段は感じないマナの反応があって気になっていた。今応接室にいる人間のマナにはなんとなく覚えがあるため一応知っている人物だと思うのだが、このマナが誰のものだったかまでは思い出せない。


「何?誰か来てるの?」


 水分補給を終えてオレとミールの下に戻ってきたミストが会話に入ってきてそう口を開く。


「ミストも良く知ってる子だよ。リダン君にも紹介するから、とりあえず二人とも中に入ってくれるかな?詳しい説明はそれからするね」


 ミールに促されてミスト、オレの順番で応接室の中に入ると、そこには椅子にちょこんと座ってお茶を飲んでいる幼い容姿の少女がいた。


「あれ?メリア?」


「ん、ミスト。お邪魔してる」


 部屋の中にいたのはトリスカーナイエローのメリア・モノクローム。ミストに名前を呼ばれると、自身の白黒の髪を軽く揺らしながらこちらを向いた。


「リダンも、久しぶり」


 メリアはミストに向けていた視線をオレに向けると、軽く会釈をして声をかけてきた。オレもそれに軽く反応を返す。


「リダン君とメリアちゃんって面識あったんだ?」


「一度軽く話をした程度だがな」


 前に会ったのは、確かオレが初めてこの研究棟に来た時だった。話をしたと言っても、あの時は一緒にいたナディアに紹介される形で軽く名乗る程度の会話しかしていないが。


「そうなんだー。じゃあ、お互い紹介は必要ないかな?」


「ああ」


「ん、大丈夫」


 オレとメリアはミールからの問いかけに頷く。


「それじゃ、紹介も無しで大丈夫みたいだし早速本題に入ろっか」


 ミールが両手を合わせてパンっと小さく音を鳴らし、顔合わせの流れを終わらせる。


「先ほどの話では新しい魔道具を開発すると言っていたな」


「そうだよー」


「どんな魔道具を作るつもりなんだ?」


「それが、実はまだ具体的には何も決まってないんだよねー」


「決まってない?そいつの頼みで魔道具を作るのではないのか?」


 メリアから頼まれて魔道具を作るという話なのであれば、作る魔道具の仕様については大体決まっていそうなものだが。


「そうなんだけどねー。メリアちゃんの要望は結構抽象的なものだから、具体的な性能についてはこれから考えるところなんだよ。二人を呼んだのもその意見を聞きたかったからなんだ」


「そういうことか。...それで、その要望とやらはどういう内容なんだ?」


 ここまではオレとミールの間だけで話していたが、その問いに対してはミールではなくメリアが口を開いた。


「ん、私が作ってほしいのは、人を元気にできる魔道具」


「一応聞くが、それは身体的な傷を治療する魔道具ということか?」


「ん、そうじゃない。元気にっていうのは体のことじゃなくて、心の方。私が欲しいのは、傷ついて塞ぎ込んでる子の心を少しでも軽くしてあげられるような、そんなやつ」


 つまりは、人間を精神的に癒す魔道具が欲しいということか。確かにミールの言う通り抽象的な要望だ。


「なるほどな...」


「大体どんな魔道具が作りたいかは分かってもらえたかな?」


「ああ。だが、現状ではオレから言えることはあまりないぞ」


 精神的な傷を癒すというのはオレにとっては苦手分野でしかない。

 一応、一般的な知識として人間の精神がどんな時に癒えるのかはなんとなくわかるが、今回の場合はそんな知識大して役には立たないだろう。

 ある程度使えそうな手法はいくつか思い付きはするが、どれもあまり効果があるとは思えない。


「それでも大丈夫だよ。とにかく、何か使えそうなものとか思い当たることがあれば何でも意見を言ってほしいんだよね。今のところだと、方向性もまだ決まってないから」


「そうか。ならば...」


 ミールから意見はなんでも言ってほしいと言われたため、オレはとりあえず頭に浮かんだ適当な意見を述べる。

 その後はオレに続くように他の三人も各々の意見を言い、話し合いが進んでいった。


「ねえメリア。もしかしてこれって、あの例の子にあげるための魔道具なの?」


 話し合いが始まってから2時間ほどが経ち、そろそろ意見も出尽くしたかという頃、ミストが唐突にメリアにそう問いかけた。


「ん、まあ。『ラル』に何かしてあげられないかと思って」


「そういうことね...」


 メリアの言葉を聞き、ミストは深刻そうな表情を見せる。


「ならあたしも全力で協力するわ。とは言っても、どれだけ力になれるかは分からないけど」


「ん、ありがと、ミスト」


 会話の流れからして、ラルというのは人名だろうか。

 少し気になるところだが、あまりずかずかと踏み込んでいい雰囲気ではないと判断したため、この場は黙っておくことにした。

 その後少しして解散となったが、ミストとメリアはこのまま何か話していくそうなので、二人を残してオレは研究室の玄関へと向かう。


「あ、そうだ。今日の朝礼で話した、学園の周辺で怪しげな集団が発見されたって話を覚えてるかな?」


 別れ際、玄関までオレを見送りに一緒に席を立ったミールが、突然意外な話を振ってきた。


「ああ。それがどうかしたのか?」


 今朝の話はそれほど真剣に聞いていなかったが、その話はしっかりと覚えている。


「噂程度の話だから信憑性はないんだけど、その集団っていうのが『フィフス』なんじゃないかって話があるんだよね。リダン君の適正は闇属性だし、一応気を付けた方がいいかもしれないよ」


『フィフス』というのは、確か闇属性の人間を排斥することを目的に作られた組織だったはず。人魔戦争の際、その首謀者であるヴィルス・エリアルードに恨みを持った人間達が集まってできた組織だと、学園に入学した頃にリダンから教えられた覚えがある。

 その当時にほとんど壊滅したらしいが、今でもたまにその残党や意思を継ぐ者が暗躍しているのだとか。


「そうか。まあ、雑魚共が何をしたところでオレの脅威ではないがな」


「リダン君らしいねー。大丈夫だと思うけど、あまり油断はしないようにね」


「ああ」


 もしも本当にフィフスとやらが学園の周辺で何かをしているのであれば、リダンを狙っている可能性は十分にある。

 襲ってきたとしても大した脅威にはならないだろうが、一応頭の隅には入れておこう。

話が面白いと思ってくれた方や続きが気になると思ってくれた方は、

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面白かったら星5つ、まあまあだと感じたら星3つ、つまらなかったら星1つなど、正直に感じた気持ちで気軽に評価してほしいです。

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