表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
感情希薄なモルモットは二重人格者  作者: 識友 希
第5章「協力者編」
93/111

第93話「裏切り者の探し方」

 三連休が終わり、今日は週明けである6月5日。

 今は朝礼が始まる少し前で、オレは教室の自分の席で小説を読みながらチャイムが鳴るのを待っている。ちなみに、この本は先日レイアに会った時帰り際に勧められて図書館で借りたものだ。

 今日はいつもより早めに教室に来て、読書をしながら横目でクラス内の雰囲気、より正確に言うならば裏切り者候補の三人の様子を観察していた。

 たった十数分ほど観察した程度で何か手がかりが見つかるとは思っていないが、三人の表情や人間関係などを観察することで使えるものが何か見つかる可能性もある。

 エリスやソフィーリアはクラスメイトと談笑しており、ダルクは自分の席に座って一人で何か調べものでもしている様子。

 エリスが一緒にいる相手はミア・フェスター、エマ・ニューベル、ネス・グリッドの三人で、ソフィーリアが一緒にいるのはイヴだ。

 ちなみに、一応裏切り者候補以外のクラスメイトの様子も軽く観察してみたところ、いくつか小さな発見があった。

 例えば、意外とリダン以外にも一人でいるクラスメイトは多いという事。先ほど挙げたダルクの他にも、タイア・ムードルという生徒とシモン・テリジアスという生徒も今は一人でいる。

 タイアというクラスメイトは机に突っ伏して寝ているようで、シモンというクラスメイトは机に置いてある紙に何かを書き込んでいる様子だ。

 これらの情報は現状では特に役立つものではないが、クラスメイト達の情報は小さなものでも把握しておくに越したことはない。


「みんなおはよー。朝礼を始めるよー」


 少ししてチャイムが鳴ると、ミールが教室に入ってきて朝礼が始まる。


「今日から6月の授業が始まるね。普段ならまずは今月の特別演習の話をするところなんだけど、今日は大事な連絡事項があるからそっちから話しちゃうよ」


 ミールはいつもよりも少しだけ真面目な顔でクラス内を見回す。


「知っている人もいるかもしれないけど、ここ最近物騒な事件が良く起こってるみたいなんだよね。具体的には、帝国の方で新種の魔物が発生したり、連合国の方で虐殺事件があったり、学園の周辺で怪しげな集団が発見されたりしてるよ。それ以外にも小さな事件がたくさん発生してて少し治安が悪くなっているみたいだから、みんな学園の外に出るときは十分に注意するようにしてね」


 帝国の事件はイーガル湖のグリフォンの件、連合国の事件は以前にエルトシャンが言っていた件だろう。

 学園の周辺で見つかった怪しげな集団の話は初耳だ。学園周辺で何か事件があったのならエルトシャンから一報があっても良さそうなものだが、特に何も聞かされていない。

 そこまで重大な件ではないのか、あるいはリダンに関わらせたくない事件ということなのだろうか。それか、最近起きたばかり事件だから単純にまだ連絡が来ていないだけという事も考えられる。

 まあ、そもそもあまり頼りにされていなくて話す必要がないと思われているだけの可能性もあるが。


「それでここからは特別演習の話なんだけど、こういう現状を加味して今月の特別演習の内容はシンプルな学力テストってことになったよ。本当は先月のマナ資材採取訓練みたいに学外に出て行う予定だったんだけど、この状況で学外での特別演習は危険だって話になってね。かといって今から学内で行う特別演習の準備をしようと思っても時間が足りないってことでこうなったんだ」


 どうやら、今月の特別演習は実質的に中止になってしまったらしい。まあ、学園側の判断は割と妥当だと思う。

 先日のマナ資材採取訓練の際にイヴが攫われたことを考えると、学外で行う特別演習は中々実施しにくいだろう。あの時はリダンのおかげで事なきを得たが、生徒に対して取り返しのつかない危害が及べば学園の信用にかかわるからな。

 かといって学園内で特別演習をしようと思っても、学園内で使えそうな場所と言えば前哨戦を行った闘技場かクラス対抗戦を行った仮想訓練場くらいなもの。闘技場だとできることが限られてくるし、仮想訓練場で何かしようと思っても準備期間が足りないのだろう。


 ただ、学園の判断は仕方がないと思うがオレ個人としては少し困る状況になった。特別演習の内容が単純な学力テストなのであれば、裏切り者が動いてくれない可能性が高いからだ。シンプルな学力テストでは戦略も何もあったものじゃないからな。

 裏切り者を吊し上げるためにその証拠を手に入れるには、裏切りの現場を押さえたり裏切りを利用して罠に嵌めるのが一番手っ取り早い。一応、そのための手段も色々と考えていた。

 例えば、裏切り者とアイゼンが密談している会話を記録できればそれ自体が証拠として使える。これはオレの手にかかれば造作もないこと。会話を盗聴するための魔道具を作り、裏切り者候補の持ち物にそれを忍ばせるだけでいい。

 他にも、裏切り者候補たちにそれぞれ別の偽の情報を与えてどの情報が漏洩するのかを見れば、その中に裏切り者がいた場合はその正体を特定できる。

 ともかく、特別演習の内容が変更になってしまったことで裏切り者を探すための手段が少なくなってしまった。これは少し痛手だ。


「日程についてはいつもの特別演習と同じで月末に行われるよ。ちなみにテストの内容については基本的にマナについての知識が問われるからね。具体的なテスト範囲については今から配るプリントに書いてあるから各自で確認してね」


 オレが考え事をしている間もミールは特別演習についての説明を続ける。オレはそれを他所に、今後やるべきことについて考えていた。

 裏切り者が動かない可能性が高く、これまで考えていた現場を押さえて証拠とする方法や罠にはめるような方法が使えないとなると別の切り口を考える必要がある。


 現状でオレが思いついている方針は三つ。

 一つは裏切り者本人に自白させるやり方。言葉巧みに誘導して裏切り者しか知り得ないような情報を言わせたり、シンプルに脅して自白を促してもいい。

 二つ目はアイゼン側に接触するやり方。裏切り者とアイゼンがどういった関係なのかは分からないが、互いに何かしらの利があるからこそ手を組んでいるはず。ならば、アイゼンに裏切り者から得られる以上の利を提示してやることができれば裏切り者を売る可能性がある。

 そして最後に三つ目は、相手の記憶を覗き見る方法。人間の記憶は脳に蓄積されるわけだが、その蓄積は脳周辺のパーソナルマナによって行われる。つまり、その脳周辺のパーソナルマナをいじってやればその人間の記憶を覗き見ることができる。ちなみに、これと似た要領で記憶を改ざんしたり、意識を書き換えることもできる。

 ただ、これはあくまでも理論上の話。人間の脳という器官は不明瞭な部分が多く、オレの知識と技術をもってしても脳周辺のパーソナルマナをいじる方法にはリスクと不確実性が伴う。

 記憶を覗き見ることができると言っても知りたい情報だけをピンポイントに探すことは困難で、見ることができるのは断片的な情報となってしまう。記憶の改ざんや意識の書き換えについても同様で、記憶については基本的に直近のものしか改ざんできないし、意識についても自由自在に書き換えられるものではない。

 正直なところ、不確実でリスクも伴うためこの三つ目の方法については使うつもりはない。これら三つの方針から採用するのなら、基本的には自白させる方法かアイゼンに接触する方法をとるつもりだ。

 具体的な戦略はまだ思いついていないが、どちらの方針をとったとしても裏切り者を特定できる可能性はあるだろう。


「さて、それじゃあ朝礼はこれくらいにして今日の授業を始めるよ。まずは...」


 オレが色々と思考を巡らせている間に朝礼が終わり、いつの間にか授業が始まってしまう。

 授業中に上の空だと変に目立ってしまう可能性があるため、オレは一度裏切り者に関する思考を辞めて授業の方に意識を持っていくことにした。

話が面白いと思ってくれた方や続きが気になると思ってくれた方は、

下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援をお願い致します。

面白かったら星5つ、まあまあだと感じたら星3つ、つまらなかったら星1つなど、正直に感じた気持ちで気軽に評価してほしいです。

また、『ブックマークに追加』という黄色いボタンからブックマークをしていただけると、とても励みになりますので、良ければそちらもよろしくお願いします。

感想もお待ちしております。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ