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感情希薄なモルモットは二重人格者  作者: 識友 希
第4章「侯爵令嬢編」
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第78話「魔物襲来」

 特別演習が始まってから4時間ほどが経過した頃、リダンとイヴはモック山の山頂まで来ていた。

 意外なことに、ここまでリダンは特別演習に割と真面目に取り組んでおり、既に結構な量の資材を採取している。

 他の2グループがどの程度採取できているのかは分からないが、あの2グループの初動の動きから考えると、このまま順当にいけばこのエリアでの1位は獲得できるだろう。

 モック山の山頂は広場になっており、簡易的な椅子や机が置いてある。


(リダン、一息入れたほうがいいんじゃないか?イヴが少し遅れ始めてる)


 オレにそう言われ、リダンはイヴの方を見た。顔には出していないが、イヴの様子からは少し疲労の色が見える。


(...そうだな)


 リダンは素直にオレの提案を受け入れ、イヴの方を見て口を開いた。


「ここでしばらく休憩を入れる」


「...分かりました。ありがとうございます」


 リダンは近くにある適当な椅子に腰掛け、イヴもその近くの椅子に座る。


「すみません、足を引っ張ってしまって...」


「気にする必要はない。貴様は十分に役割を果たしている」


 この言葉は気休めや世辞の類ではなく、リダンから見た素直な評価だろう。リダンと比べれば少ないが、イヴもしっかりと資材を採取できている。


「そう...ですか?それなら良いのですけど」


 イヴはリダンの言葉に少しだけ安堵の表情を見せた。もしかしたら、足を引っ張らないようにと少し気を張り詰めていたのかもしれない。


「あの...リダン様。特別演習の最中に申し訳ないのですが、少しよろしいですか?」


「何だ」


「以前、レクル村に向かうマナカーの中でお話したことを覚えてますか?私がリダン様と仲良くしたいと言ったら、その理由をお聞きになられましたよね」


「...ああ」


 質問をしたのはオレだが、それを説明することは出来ないしする必要はないため、リダンは素直に肯定する。


「あの時は答えられませんでしたが、最近ようやく私の中で気持ちの整理ができたんです。なので、その話を今から聞いて頂けませんか?」


「勝手にしろ」


「ありがとうございます」


 イヴは深く礼をして、リダンを方を真っすぐに見つめる。

 まるで今から愛の告白をするかのような、あるいは罪の告白をするかのような、イヴはそんな雰囲気を纏っている。


「私は...」


 イヴが話し始めようとしたその時、突如としてリダンの前方100mほどの位置に巨大なゲートが現れた。


「リダン様...あれはっ...」


「貴様は下がれ。それと、邪魔が入らんよう下にいる奴に連絡して他の連中にも状況を知らせておけ」


 いち早く状況を察知したリダンはイヴに指示を出し、すぐさまゲートのほうへと向かう。


「...分かりました。お気をつけてくださいね、リダン様...」


 突然の状況に動揺しているのか、大事な場面に水を差されたからか、イヴの表情は少し硬くなっていた。

 巨大なゲートからは色々な魔物がぞろぞろとその姿を見せる。以前にリグレクト領のアスタの森で見た鳥型の魔物や熊型の魔物、それに俊敏性の高い狼型の魔物なんかもいるな。

 ざっと見た感じ、数としては8種ほどの魔物が合計で50体といったところだ。結構な数だが、現状見えている範囲にはネームドの魔物はいないため、リダンならばすぐに片づけてしまうだろう。

 リダンは魔物達との距離を詰め、まずは先頭を走ってきた狼型の魔物を一刀両断にした。胴を真っ二つにされた魔物は体の断面から光る粒子を放出する。そして露出した魔石をリダンに斬り付けられて、その形を失った。

 リダンはそのままの勢いで周囲の魔物達を一掃する。

 しばらくして移動の速い魔物達による第1波が終わり、リダンの周囲10m程に魔物がいなくなった。だがリダンの前方にはまだ30体以上の魔物が残っている。

 次にリダンは闇の第1位魔法『ダークネス』を発動して闇の弾を30発ほど出現させ、それを魔物の群れに向けて一斉に放った。いくつかの弾が命中し、また魔物達の数が減っていく。

 それから魔物が全滅するまでにそれほど時間はかからなかった。

 リダンが最後の1体に止めを刺した時にはゲートもいつの間にか消えており、周囲には大量の魔石だけが残る。


(今回も魔石はオレが貰っていいか?)


(好きにしろ)


 今回はどれも大したことのない魔物だったため周囲に転がっている魔石は質の低い物ばかりだが、これだけの量があれば色々と使い道も多い。

 少ししてリダンは魔石の回収を終え、イヴの方へと足を向けた。イヴは安堵の表情でリダンが戻ってくるのを待っている。

 それにしても、今回は何が目的だったのだろうか。順当に考えれば、これはリグレクト領やイーガル湖にケルベロスやグリフォンを送った奴と同一人物の犯行だろう。

 以前のリグレクト領やイーガル湖の件については、詳細は分からないが何かしらのデータを取っていたという事で、正否はともかくとして一応の納得はできる。

 だが今回の件は目的が読めない。いや正確には、何となく目的は想像できるが、その通りとするならば腑に落ちない点が多いというべきか。

 恐らく、タイミングからしてリダンを狙っての犯行なのだとは思う。流石にリダンが居る場所に魔物の群れが現れたことを偶然では片づけられないだろう。

 仮に仕掛けてきているのが施設の人間で、尚且つオレの想像通りの人物だとするならば、リダンを狙う理由は色々と思い浮かぶ。どこかからオレの存在がバレたのかもしれないし、そもそもリダンの力を欲しているだけの可能性もある。

 しかし、リダンを狙っているのだとしたらぶつけてきた戦力が少なすぎる。ケルベロスやグリフォンがやられた事を知っているならば、少なくともネームドの魔物を複数体用意しておくのが普通だろう。

 現れた魔物はリダンが全て撃退したが、まだ油断はできないかもしれない。

 オレがそう思った瞬間、リダンを待っているイヴの後方にゲートが出現した。

 ゲートの中からは魔物...ではなく紫色の鞭のようなものが出てきてイヴの体を絡めとり、そのままイヴをゲートの中に引きずり込もうとしている。

 リダンはすぐさま加速してイヴの下に行き、ゲートに飲み込まれかけているイヴの手を掴もうとする。

 だが、ゲートの中から鞭のようにしなる剣が現れてリダンを攻撃してきた。リダンは咄嗟に長剣を具現化してそれを防ぐが、イヴとの距離が開いてしまう。


「チっ!」


「リダン様!」


 その隙にイヴはゲートの中に完全に引きずり込まれてしまった。

 リダンは迷わずイヴを追おうとするが、リダンが跳び込む前にゲートは跡形もなく消えてしまった。


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