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感情希薄なモルモットは二重人格者  作者: 識友 希
第4章「侯爵令嬢編」
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第74話「侯爵令嬢との帰り道」

 オレがジークを見送ってから教室を出ようとすると、教室の出口付近で今度はイヴが話しかけてきた。


「リダン様。今からお帰りですか?」


「ああ」


「ご一緒してもよろしいですか?」


「構わん」


 イヴがオレの横に並び、そのまま二人で寮へと向かう。


「同じグループになりましたね、リダン様。よろしくお願いします」


「ああ」


「リダン様と同じグループになれて良かったです」


「本気で言っているのかは知らんが、そんな事を言うのは貴様だけだろうな」


 他のクラスメイトのほとんどはリダンとだけは同じグループになりたくないと強く思っていたことだろう。

 イヴだって口ではこう言っているが、多少はそう思っていても不思議ではない。最初の頃からは少しずつ薄れてきているが、今だにリダンに恐怖を抱いているようだからな。


「私は本当に良かったと思ってますよ。リダン様はとても頼りになりますから」


 イヴの瞳は真っすぐにこちらを見ており、その様子からは発言の本気さが伺える。伝わってくる感情からも、イヴがお世辞や嘘でこんなことを言っているわけではなさそうだ。

 100%純粋な言葉かと言われたらそうではないようだが。


「...まあオレとしても貴様ならば都合はいい。貴様はその辺の雑魚共とは違って身の程を弁えているようだからな」


 特別演習の日程的には、このまま何事もなければ当日はリダンに所有権があるため、余計な衝突を心配しなくていいのは助かるところだ。

 ジークの考えたグループ分けでは最初からリダンはイヴと二人グループだったため、恐らくジークがクラスの現状を見て気を遣ってくれたのだろう。


「...。...リダン様はクラスの皆さんはお嫌いですか?」


 クラスメイトを貶すような発言が引っかかったのか、イヴが少し小さな声でそう聞いてきた。


「別に嫌っているわけではない。煩わしいから関わりたくないだけだ」


「そうですか...」


「オレが奴らを貶したのが不服か?」


「あ、いえ...すみません...。そういうわけではないんです。クラスの皆さんは、あの噂のせいで最初からリダン様を良く思われていないようでしたので、リダン様が皆さんと関わりにくいというお気持ちは良く分かります。ただ、リダン様もクラスの皆さんもどちらも良い方なのに、お互いにいがみ合っているのが少しやるせなくて...」


 何が目的かは知らないが、イヴはリダンとクラスメイトの関係を何とかして改善したいと本気で考えているようだ。


「つまり、貴様はオレと奴らの間にあるわだかまりを解消したいという事か?」


 クラスメイトとの関係改善はオレとしても望むところであるため、ここは話を掘り下げる。しばらくは様子を見るつもりだったが、向こうからチャンスが転がってくるのであればその限りではない。


「そうですね...。私は、リダン様にはクラスの皆さんともっと仲良くしてほしいですから」


「ならば、仮にオレがその協力を要請したら貴様はどうする?」


「...!」


 オレの言葉に対して、イヴは驚きと喜びが混じったような反応を見せる。


「それはもちろん協力します。リダン様は、本当はクラスの皆さんと仲良くしたいと思っているんですか?」


 何かを期待しているような表情でイヴはオレにそう問いかけてくる。

 正直、食いつきは想定外の反応だ。リダンとクラスメイトを繋ぐ架け橋としてイヴを使えないかと思ったが、これは無理かもしれないな。やはり、イヴのお人好し過ぎる人柄は、その役割としては使い勝手が悪い気がする。

 オレは別にクラスメイト達との仲を深めたいわけじゃない。ただ単に、周りの人間達にリダン・ブラックヘローという存在を認めてもらいたいだけだ。そこを勘違いされて余計な事をされては意味が無い。


「オレは馴れ合いをする気はない。あくまでも今のは仮定の話、貴様がどれだけ本気なのかを確認しただけだ」


 オレがそう言うと、さっきとは打って変わってイヴは残念そうな表情を見せた。


「不服そうな顔だな」


「あ...すみません。私、またそんな顔をしていましたか?」


「ああ。そんなにオレに馴れ合いをしてほしいのか?」


「はい...。ですがあまり気になさらないでください。そうしたいのは、私の勝手な都合ですから」


「オレと奴らの仲が改善されたら貴様に都合が良くなるのか?もはやお人好しを通り越してよくわからんな」


 正直、イヴの考えていることが全く理解できない。リダンとクラスメイト達の仲を取り持つことによってイヴが何か得をするというのなら話は分かるが、様子を見る限りだとそう言うわけでもなさそうだ。


「すみません...」


 イヴは俯いて小さな声で謝る。そういうつもりはなかったが、少し責める形になってしまったな。

 悪い印象を残さないように少しフォローをしておこう。


「別に責めているわけではない。むしろ貴様のそういう所は評価している」


 オレがそう言うと、イヴは少し表情を明るくした。


「ありがとうございます。リダン様からそう言われると、とても嬉しいです」


 イヴは微笑みながらオレの方を真っすぐに見てそう言う。

 それでも少し重い空気が流れたが、それを嫌ったのか、イヴがすぐに特別演習の話題へと切り換えた。

 しばらくその話をしている間に寮へと到着し、別れの時間となる。


「ではリダン様、失礼します。また明日もよろしくお願いしますね」


「ああ」


 その後部屋に戻ったオレは、寝る時間まで魔石の解析を行った。

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