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感情希薄なモルモットは二重人格者  作者: 識友 希
第4章「侯爵令嬢編」
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第73話「採取訓練の作戦会議」

 翌日は昼休みにミールの研究室に顔を出した以外はいつも通りの時間が流れ、すぐに放課後が訪れた。

 放課後にも関わらず、月末の特別演習についての話し合いをするためにシュトラールブルーのクラスメイト全員が教室に残っている。

 ちなみに、昼休みにミールの研究室に行ったのは、先日した約束があったからだ。思いついたという新しい魔道具のアイディアについて色々と話を聞かされた。

 ミールの魔道具に対する発想は中々に斬新で、ミールとの議論は結構有意義になることが多い。まあ、今は他に優先したいことがあるためあまりそっちに時間は割けないが。


「さて、それじゃあ話し合いを始めようか」


 教室前方にある教卓の前に立っているジークが、そう話を切り出す。


「今回の特別演習、マナ資材採取訓練は、2~4人で構成された5グループに分かれて、それぞれが別の採取エリアでマナ資材を集めるという内容だったね。当然、どういうグループを作るのか、そしてどのグループがどの採取エリアを担当するかが重要になってくると思う。まずはその中でも一番重要なグループ分けを考えていきたいんだけど、どうかな?」


 ジークからのその問いかけに対して、クラスからちらほらと賛成の声が挙がる。特に反対意見も出なかったため、ジークはそのまま言葉を続けた。


「ありがとう。じゃあまずはグループ分けの方針から考えていこうか。僕としては、決めるべき方針は2つあると思ってる。1つは、グループ毎の人数や戦力を均等にするのか、あるいは偏らせるのかについて。もう1つはグループ分けは能力面を重視するのか相性面を重視するのかについてだよ。この2つについて皆の意見を聞きたいな。まずは1つ目の戦力のバランスについて、皆はどう思う?」


「俺はバランス良くグループを作るのがいいと思うぜ。人数や戦力を偏らせるってことは、捨てグループを作るってことだろ?そんなのそのグループになった奴が可哀想じゃねぇか。それに、強いグループを作ったってそのグループが勝つ保障なんか無ぇしな」


 意見を募ったジークに対して、最初に口を開いたのはオスカーだった。オスカーの意見からは、リダンへのちょっとした嫌味が感じられる。


「理由は違うが、俺もオスカーと同じく人数や戦力は均等にしたほうがいいと思う。偏らせればいくつか1位を拾えるかもしれないが、その一方で他のグループが点を取れないのでは意味がないからな。それならば、均等にしてどのグループも1位を狙えるようにした方が期待値は高いと俺は思う」


「わ、私もルフト様の意見に賛成です...」


 オスカーに続いてルフトと、その従者であるカノンも意見を落とす。カノンに関しては自分の意見というよりはルフトに同調するだけだったが。

 次第にオスカーやルフト以外のクラスメイトも各々の意見を述べ始め、話し合いは活性化していく。

 ジークはそれぞれの意見に対して頷きながら、自分の意見を交えて話を回している。


「リダン君やダルク君はどうかな?先生たちの研究を手伝ってる二人はマナ資材についても詳しいだろうし、二人の意見も聞いてみたいな」


 ジークから話を振られ、ダルクが落ち着いた様子で口を開く。


「ボクかい?...そうだね。勝ちを狙うならボクもバランス良くグループを作るのがいいと思うよ。体力的な差は仕方がないにしても、マナ資材の採取は知識さえあれば誰でもある程度はできるものだからね。一部のグループの得点を捨てるよりも、きちんとした資料を作って全員で高得点を狙いに行く方が勝てると思うな」


「なるほど...。ありがとうダルク君。...リダン君はどうかな?」


 ジークがオレに強い視線を向けてくる。


「そいつと概ね同意見だ」


 オレは特に意見を言うつもりは無いため、ここは角が立たない程度に適当に答えておく。


「そっか...ありがとう。...他に意見のある人はいるかな?...いないようだったら、グループはバランス重視で作る方針でいきたいと思う」


 ジークのこの発言に異論を唱えるクラスメイトはおらず、そのまま次の議題へと移る。


「次は、能力面を重視するか相性面を重視するかについて皆の意見を聞かせてほしい」


 ジークがそう言うと、先ほどと同じように何人かのクラスメイトが各々の意見を述べ始める。

 意見はそれぞれ違っていたが、色々と話し合いを重ねた結果、基本的には能力を重視して問題のありそうな箇所だけ相性を考慮する、という結論になった。


「これでグループ決めの方針は大体固まったね。この方針を基にして具体的にグループを作っていこう。とりあえず、僕が今決まった方針からグループ案を幾つか考えるから、それを基にして詳細を詰めていくっていう感じでいいかな?」


「ジークがクラスの事一番わかってるだろうし、いいと思うぜ」


 当然のようにジークの提案は承認され、それからしばらくして特別演習のグループ分けが決まった。


 ・Aグループ

 ジーク・シュトラール

 オスカー・プレイド

 ネス・グリッド

 シモン・テリジアス


 ・Bグループ

 ナディア・シュトラール

 エリス・ミューラー

 ソフィーリア・メイサル


 ・Cグループ

 ルフト・ブラックヘロー

 カノン・ノアール

 タイア・ムードル


 ・Dグループ

 ダルク・トリオンロード

 エマ・ニューベル

 ミア・フェスター


 ・Eグループ

 リダン・ブラックヘロー

 イヴ・リグレクト



「今決まったグループ分けはあくまでも仮の物だから、もし後から何か思うことがあったらいつでも言ってほしい」


 ジークはそう言ってグループ分けに関する話を締めた。


「時間も丁度いいし、今日の話し合いはここまでにしようか。次回は担当する採取エリアについて話をしよう」


 解散が告げられ、クラスメイト達は各々立ち上がって好きなように動き出す。

 オレもそれに続くように席を立とうとすると、ジークがこちらに近づいて来た。


「リダン君。今日は話し合いに参加してくれてありがとう」


「構わん。まあオレが参加する意味はなかったように思えるがな。オレがこの場にいなかったとしても、結果は何も変わらなかっただろう」


 今日の話し合い、ジークから何度か期待のこもった質問を投げかけられたが、オレは全て無難な回答しかしなかった。これは別に話し合いに参加するのが面倒だったとかそういう理由ではなく、そうするべきだと考えたからだ。

 最初はクラスメイトとの関係を改善するために何かアクションを起こそうかとも思ったが、それはやめた。クラスメイトとの間に生まれている軋轢は悪魔の子の噂だけではなくリダン本人への不満によって発生したものであるため、今回は下手に目立たない方がいいと判断した。

 とりあえず今回は、オレが介入できる範囲で特別演習に真面目に取り組んで結果を出し、クラスメイトからの不満をほんの少しでも解消できれば十分だと考えている。


「そんなことはないよ。リダン君の意見はとても参考になるからね。少なくとも僕はとても頼りにしているよ」


 頼りにしているかはともかくとして、ジークがリダンに何かを期待しているのは確かだろう。


「そうか。貴様がそう言うのであれば、次回以降も都合がつけば参加してやる」


「本当かい!?ありがとう、リダン君。じゃあ、次回はいつがいいかな?」


「昨日もそうだったが、オレの都合に合わせるつもりか?」


「もちろん他の皆の予定も聞いてから考えるけど、リダン君の予定を一番に優先しようとは思ってるよ。僕としてはリダン君には絶対に参加してほしいからね」


「言っておくが、過度な期待はするなよ」


「相応の期待はさせてもらうけど、もちろん一方的に期待を押し付けるような真似はしないよ。...それで、いつなら参加できそうかな?」


「近い日であれば明後日の放課後だな」


「分かったよ、ありがとう。ちなみに、明日が駄目なのはディアとの約束があるからかい?」


「そうだ」


「...そっか。リダン君がディアと真摯に向き合ってくれてるみたいで嬉しいよ。これからもディアのこと、よろしく頼むね」


 そう言ったジークは少しだけ複雑そうな表情をしていた。その表情は一瞬だけで、すぐにいつもの爽やかな笑顔に戻ったが。


「それじゃあ、予定が決まったら連絡するよ。次回も頼りにしてるからね、リダン君」


 ジークはそう言うと、教室に残っていた他のクラスメイトの下へと去って行った。


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