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感情希薄なモルモットは二重人格者  作者: 識友 希
第4章「侯爵令嬢編」
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第72話「ナディアとアース」

 昼休みの後は平穏な時間が流れ、あっという間に放課後になった。

 現在リダンはシュトラールブルーの訓練場におり、周りにはナディア、イヴ、アース、ラースの四人が集まっている。あと、ついでに言えば離れた所にルフトと、その従者であるカノンも居る。

 先ほど、ほとんど初対面だったナディアとアース達の挨拶や紹介が済み、今から訓練を開始するところだ。

 アース達とはクラスが違うため訓練場は使えないのではないかと思ったが、その訓練場を所有するクラスの誰かが一緒ならば問題なく使えるらしい。

 一応、訓練場を一緒に使うルフト達にも承諾は得た。まあ話をつけにいったのはリダンではなくイヴだが。


「まずは貴様ら三人の今の実力を見てやる。ナディア、相手をしてやれ」


「何で私が?リダンが教えるんだからリダンが相手すればいいじゃない」


「俺がやるよりも、実力の近い貴様の方がこいつらの力を測れるだろう」


「そうかしら?差があり過ぎてリダンでも私でもあまり変わらない気がするけれど」


「それは俺が判断することだ。いいからつべこべ言わずに従え」


「はぁ...相変わらず勝手ね...」


 ナディアは呆れたようにため息をつきながら、リダンに対して軽く苦言を呈する。


「...まあいいわ。それで?相手をするって、具体的にどうしたらいいの?単純に模擬戦でもすればいいわけ?」


「ああ。フィールドは狭いが、基本的には前哨戦の時と同じルールで模擬戦をしてもらう。但し全員3分以内には決着をつけろ。これはナディアの訓練も兼ねているからな。不甲斐ない結果を見せてくれるなよ」


「そういう事ね...。分かったわ。なんなら3分と言わず1分以内で終わらせてあげる」


 ナディアがそう発言すると、ここまで黙って話を聞いていたアースが小さく口を開いた。


「なあラス、俺達かなり舐められてないか?」


「みたいだな、アス」


 アースとラースは自分達への評価が少し不満なようで、静かに闘志を燃やしている。

 イヴの方は素直に受け入れているようで、特別な反応はなくいつものように穏やかな雰囲気で静かに話を聞いているだけだ。


「リダン、まずは俺からやらせてくれ」


「好きにするがいい」


 アースの表情からは絶対に一泡吹かせてやるというような気概が感じられる。


「二人共準備はいいな?さっさと始めるぞ」


 ナディアとアースは位置に着き、模擬戦用の魔道具を起動する。


「俺たちの事随分舐めてるみたいだけど、そう簡単にはいかないからな。リダンやアイゼンならともかく、ナディアに簡単に負けるほど俺たちは弱くないぜ?」


「言うじゃない、アース。あなたこそ私の事を見くびり過ぎなんじゃないかしら?私の素晴らしさをしっかりと教えてあげるから覚悟しなさい」


 数秒後、魔道具によってマナ障壁が展開され、戦いの幕が上がる。


「悪いけど、時間が無いから最初から本気でいくわよ」


 ナディアは試合開始と同時に瞳を青く光らせ、水の第1位魔法『アクア』を発動して3つの水球を生成した。そしてすぐさまそれらをアースの足下と胴体と頭に向けて放つ。先手必勝のスピード重視の攻撃といった感じだ。


「うぉっと!」


 アースはナディアの放った水球をギリギリの所で右に跳んでかわしたが、その勢いのまま地面に倒れてしまう。

 ナディアはその隙を逃さないように、もう1度アクアを発動して追撃した。

 アースも追撃が来ることは読んでいたようで、身体強化をしながら地面を転がってそれを避ける。

 そしてアースは素早く立ち上がり、体勢を立て直した。


「危ねーっ!いきなり負けるかと思ったぜ」


「言ったでしょ?私の事を見くびり過ぎだって」


「確かに思ってたより強ぇけど、リダンやアイゼンほどじゃねぇ。まだまだやれるぜ?ここから反撃開始だ!」


 アースはそう言って右手に槍を具現化しながらナディアとの距離を詰める。先ほどのやり取りで遠距離での打ち合いはできないと判断して接近戦を仕掛けるつもりのようだ。

 ナディアはアースの接近を読んでいたのか、冷静に水の第4位魔法『アイスピラー』を発動してナディアとアースの間に大量の氷柱の壁を作った。


「マジかよ、対応早ぇな!でも、このくらいじゃ俺は止まらねぇぜ?」


 アースは瞳を黄色に光らせ地の第2魔法『ロックフォーリング』を発動し、氷柱の上から岩を落とす。それに加えて手に持った槍で氷柱を薙ぎ払い、あっという間にアースの進行を阻む壁はなくなった。

 だが、それでも多少の足止めは食らってしまったため、その間にナディアの次の攻撃の準備が済んでしまったようだ。

 ナディアは再びアクアを発動しており、ナディアの周りには20個の水球が漂っている。


「ヤベッ!」


 危機に気が付いたアースは地の第3位魔法『アースウォール』を発動して防ごうとするが、二人のマナの量の差もあり、全ての攻撃を防ぐことは出来ずに5発ほどまともに食らってしまった。アースが攻撃を食らった箇所のマナ障壁がダメージを受け、その周辺に光る粒子が舞う。


「そこまでだ」


 リダンから試合終了の合図が告げられる。

 試合時間は約50秒といったところか。ナディアの宣言通り、1分以内に決着がついてしまった。


「負けた負けた!ナディアが強いのは分かってたけど、まさかこんなに強ぇとは思わなかったぜ」


 手も足も出ずに負けたアースだったが、そこまで悔しそうにはしておらず、素直に力の差を認めている様子だ。


「これで私の素晴らしさを理解したかしら?」


「ああ、悔しいけど身に沁みて分かったぜ。リダンとアイゼンがいるからそこまで目立ってねぇけど、やっぱナディアもすげえな」


「目立ってないは余計よ。私はいずれリダンもアイゼンも超えて見せるんだから。...まあ、素直に私の凄さを素直に認めた所は高く評価してあげる」


 ナディアはアースからの誉め言葉に満足している様子だ。アースはそのお気楽な性格から素直に人を褒めるタイプみたいだから、案外ナディアとの相性はいいのかもしれない。


「さて、次はどっちが相手かしら?二人にも、アースと同じように私の素晴らしさを教えてあげるから、ありがたくかかって来なさい」


 その後はラース、イヴの順番でナディアに挑んだが、どちらも1分以上生き残ることはできなかった。

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