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感情希薄なモルモットは二重人格者  作者: 識友 希
第4章「侯爵令嬢編」
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第68話「腹黒少女の誘い」

 レイアから聞きたいことを聞き終えたオレは、さっき持ってきた本を読むことにした。

 レイアも再び読書に集中し始めたため、しばらくは静かな時間が続く。レイアと図書館で過ごす時はこういう時間も結構多い。

 本を読み始めてから40分程経った頃、オレのポータブルが光り出した。一旦無視して後からかけ直そうかと思ったが、オレは考えを改める。ポータブルの表示には少し面倒な相手の名前があったからだ。


「少し出てくる」


 オレはレイアにそう伝えて、急いで図書館の外に出る。

 外に出るまで30秒ほどかかってしまったが、その間もずっとポータブルは光り続けていた。

 オレがポータブルにマナを流すと、すぐに声が聞こえてくる。


『あっ、やっと出てくれた!』


「何か用か?」


『えー何その素っ気ない態度。一昨日からずっと出てくれないから寂しかったんだよー?』


「そうか、それは悪かった。昨日と一昨日は学園を出て帝国に行っていたからな。それで繋がらなかったのだろう」


『へぇー、そうだったんだ。良かったぁ。声も聞きたくないくらい嫌われたのかと思って心配したよ』


 通話の相手はクラスメイトのエリス・ミューラー。リダンに大して強い嫌悪感を持っている人間の一人だ。何が目的かは分からないが、リダンをひどく嫌っているくせに積極的に距離を詰めようとしてくるから扱いに困っている。

 嫌われたと思って心配したなどと言っているが、リダンから疎まれていることは自分でも分かっているだろう。リダンがどれだけ酷い態度を取っても、懲りずに何度も接触してくるその姿勢は面倒さを通り越して少し関心するところだ。


『ちなみに帝国には何しに行ったの?』


「魔物狩りだ」


『そういえば前に良くやってるって言ってたね。一人で行ってきたの?』


「いや...」


 オレは少し言い淀む。別にイヴと一緒だったことや、行った先でアース達に会ったことを隠したいわけではないが、わざわざ素直に答える必要があるわけでもない。


『え?誰かと一緒だったの?誰々?もしかして女の子?』


「...そんな事どうでもいいだろう。さっさと用件を話せ」


『ここではぐらかすなんて、なーんか怪しいなぁ』


「貴様に話す必要はないと判断しただけだ」


『ふーん?』


「これ以上無駄話をするつもりならもう切るぞ」


『あーごめんごめん!すぐ話すから切らないで!』


 オレが通話を切るふりをすると、エリスは慌てた様子で用件を話し始めた。


『リダン君、今日はこの後時間ある?折角の休みだしデートしようよ』


 エリスからは何度か同じような誘いを受けているが、毎回適当に理由をつけて断っている。リダンがエリスを酷く嫌っているため、オレもあまり友好的な態度は取らない方がいいと判断したからだ。

 それに、エリスはオレとリダンの違いを直感的に感じ始めているようだからあまり距離を詰めたくなかったというのもあった。

 だが、オレの目的の為にはそうも言ってられないだろう。どんな形であれ、このエリス・ミューラーという人間に向き合わねばなるまい。


「構わんぞ」


『えっ?ホント?付き合ってくれるの?』


 エリスは自分から誘っておいて驚いている。


「ただし条件がある。今日付き合ってやる代わりに、今後はオレに必要以上に付きまとってくるな」


『えーなにそれ。それじゃ意味ないじゃーん』


「この条件が呑めないなら話は終わりだ」


『意地悪だなぁ、リダン君。でも、必要以上にってことは時々ならいいってことだよね?』


「そこは勝手にしろ。貴様が煩わしいと感じたら相手をしないだけだ」


『じゃあ仕方ないけど呑んであげる。この条件を呑まないと、どの道リダン君は今後も相手してくれそうにないしね。だったら今日デートできた方があたし的には嬉しいから』


「決まりだな。それで、何をするつもりだ?」


『んー、リダン君と出かけたいってだけで、何をするかは決めてないんだよねぇ。正直今日もまた断られると思ってたし。リダン君は何かあたしとやりたいことある?』


「特にないな」


『うわぁ、そんなに即答されると少し傷つくなぁ』


 エリスは全く傷ついてなさそうにそう言う。


『あ、じゃあリダン君の好きな魔物狩りにでも行く?』


「今は魔物の情報がない」


 ギルドに行けば何か情報があるかもしれないが、そこまでする必要はないだろう。それに、今日はあまり遠出はしたくない。


『そっか。...そういえば、リダン君は今日は何しようとしてたの?』


「それが今関係あるのか?」


『一緒に出来ることだったらそれもいいかなって思って』


 今日は午後まで図書館で調べ物をして、その後ケルベロスとグリフォンから手に入れた魔石を解析しようと考えていた。調べ物の方はともかくとして、魔石の解析は他人にあまり知られたくはない。


「今日は図書館で過ごす予定だった」


『図書館かぁ。図書館でデートっていうのも悪くないよね。リダン君はどう?』


「オレは何でも構わん」


『決定だね。リダン君はいつ図書館に行くの?もしかしてもう居る?』


「今は図書館の前だが、この後一度寮に戻る予定だ。次に来るのは13時頃だな」


 エリスと会う前に、元々午後から予定していた魔石の解析の準備を済ませておきたい。


『そうなんだ。それまではずっと寮にいるの?』


「戻る前に少し別の場所によるが、その後はそうだな」


『なら迎えに行っていい?』


「好きにしろ」


『じゃあ13時にリダン君の部屋に行くね』


「ああ。...そろそろ切るぞ」


『うん、また後でね、リダン君。デート、楽しみにしてるから』


 ポータブルの光が消え、エリスの声が聞こえなくなる。

 オレはすぐ図書館へと戻り、レイアの下へと向かった。


「レイア、予定が入ったからもう行こうと思う」


「今日はもう戻って来ないんですか?」


「図書館には昼過ぎにもう一度来るけど、たぶんこの席には来ないな」


 流石にエリスを連れてきたらレイアは落ち着かないだろう。それに、オレとしても何となく気まずさがある。


「分かりました。またゆっくりお話ししましょうね」


 レイアは少しだけ寂しそうな顔をしていた気がするが、小さく手を振ってオレを見送ってくれた。

 オレはさっき本棚から持ってきた二冊の本の貸し出し手続きを済ませ、そのまま図書館を出た。


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― 新着の感想 ―
修羅場の予感…いやむしろエリスに何か利用されそうで怖
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