第66話「悪趣味なレイ」
首尾よくやるべき事を1つ済ませたオレは、続けてポータブルにマナを流す。
(今からナディアに連絡するが、何か言っておくことはあるか?)
(あいつに?何か用があったか?)
(メンバーが増えることを伝えておいたほうがいいだろ。当日急に伝えたらたぶん愚痴愚痴と何か言われるぞ)
(今連絡したところで大して変わらないだろう)
(まあそうかもしれないけど一応な。それで、何かあるか?)
(特にはないな)
(分かった)
一応リダンにも何か用件がないか確認してからナディアに連絡を入れる。
だが、30秒ほどコールを続けてみるが一向に繋がる様子はない。まだ結構早い時間だから寝ているのかもしれないな。
そう思いコールを止めようとしたタイミングで通話が繋がった。
『はーぃ、もしもしぃ』
ポータブルから、ナディアの声でナディアらしからぬ甘ったるい声が聞こえてくる。
「リダンだ。少し用がある」
『えぇー?リダンー?」
「大丈夫か?大分寝ぼけているようだが」
『だーいじょーぶよー。話を続けてちょーだーい』
あまり大丈夫ではなさそうだ。一旦通話を切ってもいいが、折角繋がったのだからできればこのまま済ませたい。
とはいえナディアが寝ぼけたまま話を進めても内容を忘れてしまいそうなため、完全に起こしてから話を進めることにする。
「おい、寝ぼけてないでさっさと起きろ」
少し大きめのボリュームでナディアに声をかける。
『え?』
「目が覚めたか?」
『リダン?あれ?なんでリダンと通話が繋がってるの?』
「ちょっと伝えておくことがあってな」
『そうじゃなくて、いつの間にポータブルが起動してるのかって聞いてるの』
「知らん。ナディアが自分で起動したんだろう。まだ寝ぼけているのか?」
『寝ぼけ...って、え...?私、寝ぼけたままリダンと話してたってこと!?』
「そうだな」
『なっ、何か変なこと聞いてないでしょうね!?』
ナディアは通話越しでも分かるくらい動揺している。
「何も聞いてはないが、かなり腑抜けた声だったな」
『っっ!!、わっ、忘れなさい!』
「別に貴様の醜態になど興味はない」
『それでいいけど、何よその言い方!...ふぅ...ふぅ...。はぁ、もう、最悪だわ...』
ナディアは息を切らしながら深いため息をつく。オレからしたら大して気にする必要はないと思うが、ナディアは結構ダメージを負っているみたいだ。
『...それで、朝早くから何の用?伝えておくことがあるって言ってたけど』
「ああ。昨日の訓練、急に中止して悪かった」
『別にいいわよ、ちゃんと前日に連絡してくれたしね。...もしかして、それを言うために連絡してきたの?』
「いや、これはついでだ」
『ついでって...わざわざ言う必要ないじゃない。私の感心した気持ちを返してくれるかしら』
「実際にそうなんだからいいだろう。それより本題だが、今後の訓練に関することだ。明日以降の訓練はメンバーが三人増える」
『はぁ!?どういうことよ!』
オレが連絡事項を伝えると、ナディアが大声を出して驚く。何かしらの反応はすると思っていたが、予想以上のリアクションだな。
「そのままの意味だ。貴様以外に後三人、面倒を見ることになった」
『それは聞いたわよ!なんでそんなことになったわけ!?』
「昨日帝国で色々あってな。言いたいことはあると思うが、オレの決定に従ってもらう。最初からそういう約束だったはずだ」
オレがそう言うと、ナディアは少し落ち着いて答えた。
『...確かに文句を言わずにリダンのやり方に従うって約束したけど、せめて相談くらいしてほしかったわ。私にも関係あることなんだから』
「そんなことをしてもどうせ結果は一緒なのだから意味はないだろう。それに今こうして話している」
『はぁ...。まあいいわ。それで?その三人って誰なの?』
「キスキルレッドのアース・ドメインとラース・ドメイン。それとシュトラール・ブルーのイヴ・リグレクトだ」
『アースとラースって、前哨戦でキスキルレッドの先鋒と中堅だった双子よね?どうしてその二人が訓練に参加することになったわけ?あなたって二人と面識があったの?』
「いや、直接話したのは昨日が初めてだったはずだ。昨日帝国で会って、奴らの方から指導を頼んできた」
『ますます訳が分からなくなってきた...』
ナディアはかなり混乱している様子だ。ポータブル越しなので実際にはどうか分からないが、頭を抱えている姿が目に浮かぶ。
「経緯の詳細に関してはナディアが気にする必要はない。どうしても知りたいというのなら奴らに聞け」
『そうするわ...。...あれ?じゃあイヴはいつ訓練に参加することになったの?あなた、昨日は帝国にいたのよね?イヴの参加はもっと前から決まってたってこと?』
「あいつはオマケみたいなものだ。あの双子に指導を頼まれた場にあいつもいたから流れで参加することになった」
『じゃあイヴも一緒に帝国に行ってたってこと?』
「そうだ。面倒を見ることが決まったのはレスト領に戻ってきてからだがな」
『イヴもあれで結構物好きよね。リダンと一緒に遠出するなんて、想像するだけで空気が重すぎて息が詰まりそうだわ』
ナディアがここまでの仕返しをするように皮肉を言う。何か言い返してやってもいいが、その先が不毛なやり取りになる未来しか見えないためスルーすることにした。
「とにかくそういうことだ。メンバーは増えるがナディアのすることに変わりはない。明日の予定も変更なしだ」
『...何か言い返してきなさいよ。これじゃ私が嫌味な人みたいじゃない』
「実際そうだろう」
『違うわよ!』
オレが少しからかってやると、ナディアが大きな声で否定する。悪趣味かもしれないが、ナディアを弄るのは少し楽しい。オレの欲している強い感情を見せてくれるからだろうか。
『まあなんとなくの事情は分かったわ。その三人が増えることに関しては何も言わない。ただし、今まで以上に全力で私を強くしなさいよね。人数が増えたからって手を抜いたりしたら許さないから!』
「無論だ。ナディアにはオレを楽しませられるほどに強くなってもらわねば困る」
今となってはナディアの育成が失敗しようともあまり問題ないが、ナディアに強くなってもらう方がいいのは確かだろう。
「では用件は以上だ。切るぞ」
『ええ』
ナディアとの通話を終えたオレは一度時計を確認する。現在の時刻は8時。さっさと次の用事に移るとしよう。
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