第63話「リダンとゲート」
グリフォンを撃退したリダンがイヴたちの下へと戻ると、アース、ラース、イヴの三人がリダンを囲むように集まってくる。
「すげーなリダン!マジですげえ!」
比較的近くでリダンとグリフォンの戦いを見たアースは興奮してはしゃいでいる。
「アス、語彙力無くなってるぞ。落ち着け」
「これが落ち着いてられるかっての。ラスだって見ただろ?」
「確かにすごかったけどはしゃぎすぎだろ」
「アイゼンとの戦いで強いのは知ってたけど、今改めてリダンの凄さを思い知ったぜ。ホントにやべぇよ、マジで」
アースの興奮は収まる様子が無い。ラースもそんなアースを面倒臭そうに相手しているが、少しソワソワしている様子を見るに、内心はアースと同じ気持ちなのかもしれない。
「リダン様、お疲れさまでした」
「ああ」
イヴもリダンに歩み寄り、労いの言葉をかける。リダンはそれに対して軽く返事をした。
「リダンさん、ありがとうございました」
三人に続くようにギルドの職員たちがリダンに近づいて来て礼を述べた。ただ、ギルド職員四人の内二人は強い恐怖の感情を突き刺してきている。以前のイヴのようにリダンの圧倒的な力を見て恐れを抱いたのだろう。
「依頼はこれで終わりか?」
「はい。周囲にはゲートもないようですし、もう心配はないでしょう。後程ギルドで報酬をお支払いします」
そう言えば、今回はリグレクトの一件と違ってゲートが確認できなかったな。理由は不明だが、今回グリフォンをここに送り込んだ奴はグリフォンを送り込んですぐにゲートを閉じたということだろう。
「用は終わった。帰るぞ」
「はい」
リダンはイヴにそう告げると、帰りのゲートを開くためにマナを操作し始めた。イヴはリダンがゲートを作ろうとしていることを察し、黙って見守っている。
リダンがゲートを開くまで数分かかるため、オレは少し気になったことをリダンに質問する。
(なあ、魔物が発生するゲートはどこに繋がってるのかリダンは知ってるか?)
(なんだ急に)
(ちょっと気になってな)
(...まあいい。一度だけ自然発生したゲートを通ったことがあるが、薄暗い洞窟に繋がっているだけだったな。すぐに戻ったからどこだったのかは分からないが、少なくとも俺の知る場所ではなかった)
(通ったことがあるのか?確か、下手に刺激するとゲートに巻き込まれて危険だと聞いたが)
(特に異常はなかったな)
(じゃあなんで危険なんて話になってるんだ?)
(以前に、ゲートに触れた人間が吸い込まれ、その直後にゲートが消えてしまう事件があったらしい。その人間はその後どこを探しても見つからなかったと聞いている。どこまで本当かは分からんがな)
(そんな噂があるのに良く通る気になったな。当時のリダンはゲートの制御はできなかったはずだろ?)
(ゲートの向こうに魔物がいるなら、それを狩ってやろうと思ってな。実際には魔物など1体も見つからなかったが。今にして思えば、我ながら馬鹿なことをしたと思っている)
(やっぱリダンって戦闘狂だよな。魔物を狩りたいって理由だけでそんなリスクを冒すなんて普通じゃないぞ)
(まあ理由は魔物狩りだけではなかったが)
(そうなのか?ちなみに他にどんな理由があったんだ?)
オレは他の理由とやらが少し気になったため突っ込んでみたが、リダンはハッとした様子で黙ってしまった。
それから数秒して、リダンから返事が返ってくる。
(...どうでもいいだろう。大した理由ではない)
(なんだよ、そこで濁されると気になるだろ)
(そんなことは知らん。流れで話してしまったが、そもそも貴様の問いに答えてやる義理はない)
(話したくないならそれでもいいけどな。気が向いたら聞かせてくれ)
リダンの機嫌を損ねても面倒なので、今は潔く引いておこう。あまり期待はしていなかったが、意外にも有益な情報が手に入ったしな。
ゲートの向こうが薄暗い洞窟だったというのは、恐らく魔物を送り込んでいる奴が人気のない場所を選んだからだろう。ゲートに触れた人間が吸い込まれ、ゲートがそのまま閉じてしまったというのも、恐らくその時にゲートを作った奴が何かしらの仕掛けをしていただけだ。
ゲートに関してもう少し考えたいところだが、もうすぐリダンのゲートが完成する。この思考はまた今度に持ち越すとしよう。
「これを通ればレクル村の近くに出られる。帰りたい奴はさっさと通れ」
リダンはその場にいる全員にそう告げる。
「なんだよこれ!」
さっきまでラースと共にはしゃいでいたアースがリダンの作ったゲートを見て驚いている。
「ゲートだ。レクル村の近くに繋がっている」
「こんなことまで出来るのかよ!」
「ア、アス、流石に驚きすぎだろっ」
「ラスだって驚いてるだろ!」
「いつまでもそうしているつもりなら置いていくぞ」
リダンがアースとラースに向けてそう言い放つ。
「ま、待てって。これ、本当に通って大丈夫なのか?」
「疑うなら歩いて帰れ」
「い、いや、疑ってるわけじゃないんだけどよ...」
アースはリダンの作ったゲートを通ることに抵抗感を見せる。ゲートに関する噂を考えれば、こういう反応になるのも無理はないだろう。ラースも口に出してはいないが、ゲートを通ることに抵抗感がある様子だ。以前のイヴのようにすんなりと従うほうが珍しい。
「大丈夫ですよ、アース様。私も以前にリダン様の作ったゲートを通りましたが、何も問題はありませんでした」
ゲートを通る覚悟ができないアースに対してイヴが優しく声をかける。
「マジかよ...。じゃあ覚悟決めて通ってみるか。イヴは嘘をつくタイプには見えないし、リダンも俺を嵌めようとしてるようには見えないしな」
アースはまずゲートに右手の人差し指で触れ、そしてそのままゲートの中へと消えて行った。アースがゲートの中に消えて行ったことで、ラースも覚悟を決めた様子でゲートに入る。
「貴様らはどうする」
リダンはギルドの職員たちに問いかけた。職員たち四人は少し話し合ったあと、その中の一人がリダンに返答する。
「では、私だけ同行させてもらいます。他の三人は、念のため周囲に異常がないか調査をしてから帰りますので」
「そうか。ではとっとと通れ」
リダンから促され、同行すると言ったギルド職員はゲートの中に消えて行った。
「貴様もさっさとしろ」
「はい」
リダンは最後にイヴにゲートを通るように促す。
イヴは残るギルド職員たちに一礼してからゲートに向かう。ゲートに向かうイヴは、またしても何故か嬉しそうに笑っていた。
リダンはイヴがゲートを通り見えなくなるまで見届ける。そして、それからすぐに自らもゲートの中に入っていった。
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