第61話「リダンとアース」
リダン達がイーガル湖に近づいてきた頃、アースが振り向いてリダンに話しかけてきた。
「そろそろイーガル湖に着くぜ」
イーガル湖の周辺は森になっており、リダンの視界にはまだ湖もグリフォンも映っていない。
だが、イーガル湖が近づいているというのは間違いないだろう。さっきからかなり濃いマナが感じられる。
アードから聞いた話では、イーガル湖とその周辺はマナ脈になっており時折魔物が発見されるらしい。今回の一件もそれの延長上の出来事だと考えているようだ。
「そのようだな」
「新種の魔物ってどんな奴なんだろうな。親父は頭が鷹で体が獅子みたいだって言ってたけど、そんな奴が本当にいるなんてあんま想像できないんだよな」
グリフォンが近づいているにも関わらず、アースはお気楽な様子でそんなことを言っている。そんなアースの態度を見て、ラースが口を開いた。
「アス、お前なんかワクワクしてないか?もっと緊張感を持てよ」
「なんだよラス、びびってんのか?」
「そうじゃない、ちゃんと警戒しろっていってんだ。そんな浮かれた気分でいたら大怪我するぞ」
「大丈夫だって。新種だろうと魔物は魔物だろ?今まで俺たちが勝てなかった魔物がいたか?それにリダンだっているんだ。すぐに片づけて終わりだって。さっさと倒して村の皆を安心させてやろうぜ」
ラースから注意を受けても、アースは態度を変えない。言ってることが一切届いていないアースを見て、ラースはため息をついている。
オレから見ても、アースは軽く考えすぎだ。アースとラースの実力を直接見たのは前哨戦の時だけだが、あの時の実力から考えると、この二人ではグリフォンには勝てないだろう。
グリフォンはネームドの魔物に認定されるだけあって、その辺の名無しの魔物とは比べ物にならないほど強い。学園の生徒でグリフォンに単騎で勝てるのは、リダンを除けばアイゼンくらいだろう。ナディアも結構いい戦いはできると思うが、恐らく勝つまでには至らない。
「私もラース様の仰る通りだと思いますよ、アース様。相手がどんな魔物か分からない以上、警戒しておくに越したことはないと思います。手遅れになってからでは遅いですから」
ラースはアースの説得を諦めたようだが、今度はイヴがアースに対して注意を促した。
「なんだよ、イヴまでそんなこと言うのかよ」
2対1の構図になったことでアースは少し不満そうな態度を示す。
そんなアースに対して、リダンが声をかけた。
「おい」
「何だ?リダン。お前もラスやイヴと同じようにもっと警戒しろっていうつもりか?」
「そんなことはどうでもいい」
「じゃあ何だよ」
「はしゃぐのは勝手だが、俺の狩りの邪魔をするなよ。俺は貴様らの面倒を見てやるつもりはないからな」
「分かってるって。バッチリ活躍してやるよ」
「...」
アースの発言に対して、リダンは呆れたのか黙ってしまった。恐らく、リダンからしたら邪魔をするなというのは、後ろでじっとしていろ、というような意味なのだろうが、アースはそれを、いい働きをしろ、という意味で捉えたらしい。
「バカアス...。リダンが言ってるのはそういうことじゃないだろ」
「え?そうなのか?」
「リダンが言ってるのは、不用意に前に出るなってことだ。たぶん...」
ラースはそう言いながらリダンの顔色を窺っている。リダンはラースのその発言に対しては何も言わなかった。
「そうなのか?」
ラースの言葉を聞いたアースは、すかさずリダンに質問してくる。
「...貴様らは後ろで大人しくしていろという意味だ」
「なんでだよ。全員でガンガン攻めたほうが良くないか?」
「貴様らのような雑魚が居ても邪魔なだけだ。だから大人しくしていてもらう」
「確かに、アイゼンに圧勝しちまうようなリダンからしたら俺たちなんて頼りになんないのかもしれないけどさ、流石にひどくないか?」
「文句があるのなら貴様はここに残れ。邪魔をしないという約束だったはずだ」
「...分かったよ」
アースは納得はしてないようだったが、約束は覚えていたようで、それ以上の言葉を呑みこんだ。
「貴様らはもう下がれ。ここからは俺が先頭に立つ」
リダンはそう言って、アースを追い越して先頭に立った。そしてそのまま速度を上げて進んでいく。
そんなリダンの後ろで、イヴが小声でアースに話しかけているのが聞こえてきた。タイミングからして、恐らく何かしらのフォローをしてくれているのだろう。
それからもう少し森の奥まで進んでいき、開けた場所に出たタイミングできれいな湖が見えてきた。
大きな湖だとは聞いていたが想像以上に大きい。具体的にどのくらいの大きさなのかは分からないが、少なくともリダンがいる場所からは反対側の陸地がしっかりと見えないほどの大きさだ。
肝心のグリフォンに関してはまだ見えていない。だが、大きなマナの反応は感じられるから恐らくその方向にいるはずだ。
「まずはギルドの奴を探すんだったか?」
最初に口を開いたのはやはりアースだ。
「この辺りにはいらっしゃらないようですね」
「たぶん...魔物の近くにいるんじゃないか...?」
アースに続いてイヴとラースも発言する。
それにしてもラースの態度はイヴに対してもよそよそしい。最初はリダンが原因なのかと思っていたが、もしかしたらリダンやイヴに対する態度が普通で、アースと接している時の態度が特別なのかもしれない。
「ここにいてもしゃーないし、適当にその辺を探してみるか」
アースがそう提案するが、リダンがそれを無視して勝手に歩き出した。リダンが向かっているのは大きなマナの反応がある方向だ。
「おいリダン、どこ行くんだよ。当てがあるのか?」
「強いマナの反応がある。恐らく獲物はそこだろう」
「そうなのか?俺には全然わかんねぇけど。ラスとイヴはどうだ?」
「アスと同じだ」
「私も分かりません。ですが、リダン様がそう仰るのなら何かあるんでしょうね」
リダンは三人の事を一切気に留めずに歩き出す。置いて行かれそうになった三人は少し慌ててすぐに追いかけてきた。
それから数分後、リダンの何倍も大きな魔物が視界に映った。
「マジかよ」
リダンの進んだ先に目的の魔物がいたことにアースが驚いている。
今リダンの瞳に映っているのは頭が鷹で体が獅子の屈強そうな魔物だ。
やはり件の新種の魔物の正体はオレの想像通りグリフォンだった。
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