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感情希薄なモルモットは二重人格者  作者: 識友 希
第4章「侯爵令嬢編」
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第58話「リダンと双子」

 レクル村に着いた翌日、リダンが自分の部屋を出て宿の広間に行くと、上品な佇まいでリダンを待っているイヴを発見した。


「おはようございます、リダン様」


 イヴはリダンに気が付くと、いつものように微笑みながらこちらに挨拶する。


「ああ」


「もうご出発されますか?」


「今からこの村のギルドに向かう」


「分かりました。では行きましょうか」


 そう言うと、イヴは宿の出口に向けてゆっくりと歩き出した。そんなイヴに対してリダンが声をかける。


「待て。貴様はこの村のギルドの場所を知っているのか?」


「はい。先ほど宿の方にここからギルドまでの道を教えていただきましたので」


「そうか。では案内を頼む」


 イヴは微笑みながら案内を引き受けると、再び宿の出口に向けて歩き出した。

 ちなみに今からギルドに向かうのは、依頼を受けた際にそうするように頼まれたからだ。この村のギルドの人間に依頼を受けた旨を伝えれば、事情を説明してくれる村の人間に取り次いでくれるらしい。


 数分後、イヴの案内によりレクル村のギルドにたどり着いた。レクル村のギルドはアストラムで見たギルドと外観はほとんど同じだが、少しだけ小さな建物だった。

 リダンはそのまま中に入り、受付の人間に話しかける。


「イーガル湖で発見されたという新種の魔物討伐の依頼を受けて来た」


 そう言いながら、リダンはアストラムのギルドで受け取った書類を受付の人間に見せる。


「えーっと、はいはい、なるほどなるほど」


 受付の人間はリダンから書類を受け取ると、その内容を確認しながら独り言を呟いている。


「エルトシャン様からの指示で、アストラムのギルドで依頼を受けて来たんですね」


「ああ」


「お名前を教えてもらえますか?」


「リダンだ」


「リダンさんですね。では、そちらにお掛けになって少々お待ち下さい」


 受付の人間はそう言うと、リダンから見えない裏手の方へと下がった。そのすぐあと、受付とは別の職員がギルドから出て行く。

 オレは今のリダンと受付のやり取りに少しばかりの違和感を覚える。

 恐らく、似たような状況でいつも感じるアレが無かったからだろう。さっきの受付の人間は昨日ギルドや役所で見かけた事務職の人間たちと比べると緊張感が無く、何というか緩い雰囲気だった。

 待つように言われたリダンは、ギルドの広間にある椅子に腰掛ける。イヴもそれに続くようにしてリダンの傍の椅子に座った。

 それから十数分後、出て行ったギルドの職員が戻ってくると受付の人間がリダンに近づいて来た。


「お待たせしました。これから、依頼主であるこの村の村長の下に案内しますのでついてきてください」


 リダンはそれに対して無言で頷いて椅子から立ち上がる。

 その後は、先ほどギルドを出入りしていた職員を案内役として紹介され、その後ろについて村長の家まで向かった。


 ギルドの人間の案内で村長の家の前までたどり着くと、中からかすかに声が聞こえてきた。すぐ近くとは言え家の外にいるオレ達にまで聞こえるとは、結構な熱量で話をしているみたいだ。


「親父!俺たちに行かせてくれよ!ギルドからの応援を待ってて魔物が動き出したらどうすんだよ!」


「駄目だ」


「何でだよ!俺たちの実力は知ってるだろ!?」


「お前たちの力は認めている。だが今回の魔物は新種だ。お前たちの力でどうにかできる保証はないだろう。もしもお前たちが魔物を刺激してせいで村に被害が出たらどう責任を取るつもりだ?」


 どうやら、発見された新種の魔物をどうするかについて親子で口論している様子だ。話の内容はオレにとって非常に都合の良いものだったが、今のオレには体の所有権は無いため何もできないのが少しばかり口惜しい。

 昨日の時点でこの状況を知っていれば、子供の方を唆してグリフォンに接触させ、村に何かしらの被害を与えることもできたかもしれない。

 オレがそんなことを考えていると、リダンの隣に立っているイヴが口を開いた。


「お取り込み中でしょうか?」


「そのようですね...。とにかく訪ねてみましょうか」


 案内役の人間はリダンたちの前に立ち、家の扉の横に付けられた呼び鈴を鳴らす。

 中の人間たちは呼び鈴の音に気が付くとすぐに言い争いを止め、家の中からドタバタと足音を立てる。そして呼び鈴を鳴らしてから数秒後、目の前の扉が開かれた。


「お待ちしてました」


 扉を開けて出てきたのは身長190cmくらいの大柄な男だ。男は最初に案内役の人間を見た後、すぐにリダンとイヴに対して視線を向けた。


「そちらのお二人が魔物討伐の依頼を受けてくださった方々ですか?」


「はい。先ほどお伝えした通り、依頼主のアードさんから今回の依頼についてのお話をお願いします」


「分かりました。先ずはどうぞ上がってください」


 リダンたちはアードと呼ばれた男に案内され、家の広間に通される。広間にはこの家の住人と思わしき二人の人間がいた。


「二人共...。今から大事な話をするから部屋に戻っていなさい」


「なんでだよ!今からイーガル湖の魔物の話をするんだろ!?」


「さっきも言ったはずだ。お前たちを今回の件に関わらせるつもりはない」


 またしても口論に発展しそうになったタイミングで、アードに食って掛かっていた人間がリダンの方を見る。


「あれ?お前シュトラールブルーのリダンじゃねえか?それにそっちの奴もシュトラールブルーにいたよな?なんでここにいるんだ?」


 リダンに話しかけてきたのはキスキルレッドのアース・ドメイン。その横にいるのはアースの弟のラース・ドメインだ。


「アース、この方々を知っているのか?」


「学園の同期生だよ。そいつらは王国の人間だからクラスは違うけどな」


「学園の生徒...。リダン...。シュトラールブルー...。なるほど...」


 アードはボソボソと呟きながら一人頷いている。だが客がいるということを思い出したのか、すぐにハッとしてこちらを振り返った。


「失礼しました。こいつらはすぐに下がらせますので」


「なんでだよ!リダンだって学園の生徒なんだし、俺たちがいてもいいだろ?なっ?リダンもいいだろ?」


 アードから下がるように言われたアースはリダンの方を向いて必死に懇願する。


(いいんじゃないか?)


(いきなり話しかけてくるな。それにこれは俺が決めることだ)


(アースがいると何か不都合があるのか?)


(ああいううるさい奴は嫌いだ)


(だろうな。でも、ここで突き放したら勝手なことをするんじゃないか?そうしたら後々面倒な事になるだろ。獲物を横取りされるかもしれないぞ?)


(...確かにそれも一理ある。だがやはりうるさい奴は嫌いだ)


(騒がしくしたら殺すとでも言って脅せばいいんじゃないか?)


(ふざけてるのか?その程度のことで人を殺すわけないだろう)


(冗談だ。まあもしもリダンがそういう奴だったら、今頃大陸の人口は半分以下になってるだろうな。けど真面目な話、ここで寄り添っておいた方が後々いい方向に進むかもしれないだろ。ナディアとの一件だってそうだったはずだ)


(...)


 オレがナディアの一件を引き合いに出すと、リダンは黙って考え込んだ。


「アース、いい加減にしなさい。ラースも黙ってないでアースを止めてくれ」


「親父、俺は絶対引かないぜ」


「父さん、俺もアスと同じ気持ちだ」


「ラース、お前まで...」


 アースたちの口論は止まりそうにない。そんな中、黙り込んでいたリダンが口を開いた。


「邪魔をしないのなら俺は構わない」


 リダンのその言葉に場は静まり、アースたち三人の視線がこちらを向く。三人の中で最初に声を発したのはアードだった。


「良いのですか?」


「そう言ったはずだ。ただし騒がしくするなら出て行ってもらう」


 それを聞いたアードは、今度はイヴに確認の視線を送る。


「私はもちろん構いませんよ」


 イヴは当然のようにアースとラースの同席を承諾する。ここまで黙っていた所を見るに、恐らくリダンの決断に従うつもりだったのだろう。

 ともかくリダンとイヴの許可が下りたことで親子の言い争いは終わり、ようやく話が進むことになった。

 アードに促されて全員が席に着き、まずはお互いに自己紹介をする流れになる。


「私はレクル村の村長をしておりますアード・ドメインです。こっちの二人は息子のアースとラースです」


「リダンだ」


「私はシュトラール王国リグレクト侯爵家のイヴ・リグレクトです」


 全員の自己紹介が終わると、アースが口を開いた。


「リダンにイヴか。二人ともサンキューな。お前たちが話の分かる奴らで助かったぜ」


 アースはリダンとイヴに対して気さくに話しかけてくる。そんなアースに対して、アースの双子の弟のラースがすかさず反応する。


「バカアス。相手は貴族なんだから流石に失礼だろ」


「そうか?学園では身分は気にしなくていいって言われてるし別にいいだろ」


「気にする奴もいるかもしれないだろ」


「そんな奴いないって。なあそうだよな?」


 アースがリダンとイヴの方を向いて問いかけてくる。その問いにはイヴが先に答えた。


「私はどのように接して頂いても構いませんよ」


「ほらな?リダンもいいよな?」


「接し方に関してはどうでもいい。それより貴様はさっきの話をもう忘れたのか?」


「さっきの話ってなんだ?」


 アースの返答に対してリダンが軽くため息をつく。こんなリダンを見るのは初めてかもしれない。

 そんな時、アードが立ち上がりアースとラースの頭に拳骨を食らわした。


「お前たちは大人しくしていろ」


 アードから罰を与えられ、アースの方は「いってぇ!」と叫び、ラースの方は「なんで俺まで...」と言ってぼやいている。


「バカ息子たちが申し訳ない」


 アードがリダンとイヴに対して深く頭を下げる。


「いえ、大丈夫ですよ。むしろ賑やかで良いですね」


「次は無いぞ」


「ありがとうございます。では早速本題に入りますね」


 こうして話は本題のグリフォンに関する話に移っていった。

 それにしても、やはり少し違和感がある。ギルドの受付の時と同様に、今回もいつも感じるアレが無かった。これは偶然なのか、それとも何か理由があるのか。

 考えても現状では何も分からないが、悪くない状況であることは間違いないだろう。


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― 新着の感想 ―
なるほど、主人公が手段としてマッチポンプを当たり前のようにしようとするのは他人の感情への理解の薄さから来ているのかなー リダンよりもむしろ主人公のほうが何かやらかしそう…
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