第43話「クラス対抗模擬戦ルール説明」
翌日の朝、オレは出かける支度を済ませ、空いた時間で特別演習の資料に再び目を通している。何か確認しておきたいことがあるわけではなく、登校する時間までのただの暇つぶしだ。
ミールから口頭で聞いていたのは、クラスから五人の選手を出して戦うこと、フィールドは魔道具で作られた森ということ、各属性で第3位までの魔法が発動できる魔道具が貸し出されること、相手を倒すか最後まで生き残ることで得点が入るということなどがあったが、資料を読んでみるとそれ以外の内容も結構記載されていた。その中には結構重要なルールもいくつかある。
例えば、試合開始時の選手の配置についてだ。今回のフィールドは百等分にされており、一番左上のエリアをA1、右上のエリアをJ1、左下をA10、J10といったように区分分けされている。
そして、各クラスには10個のエリアが初期位置として与えられており、その中から5ヵ所を選んで選手を配置するらしい。つまり、作戦によって選手を近くにまとまるように配置したり、逆にバラバラになるように配置することができる。
リダン達のクラスであるシュトラールブルーに与えられたエリアはA5、A9、B3、C7、D1、E4、G6、H10、I3、I7の10ヵ所だ。他のクラスも大体均等な間隔になるようにエリアを与えられている。
とは言え、単純な直線距離だけでエリアが決められているわけではなさそうだ。フィールドには、恐らく通常の手段では通れないようなエリアがいくつか存在する。例えばF8からJ10にかけて大きな川が流れていたり、F1、F3、H1、H3に囲まれた9エリアは山のような地形になっている。
このような地形を通るためにはなにかしらの工夫が必要になるだろう。川ならば水の魔法で凍らせる、山ならば地の魔法で地形を変えるなどだ。風の上位魔法ならば空を飛べるため地形を無視できるが、現状この学園の生徒でそれが出来るのは本当にごく一部だけだろう。もしかしたらいない可能性すらある。
その他にも、C4、C7、G4、G7で囲まれたど真ん中の20エリアは特に深い森林地帯になっていたり、その左上にあるB2の周辺は平坦だが足場の悪い湿地地帯になっていたりと様々な地形が混在したフィールドになっているようだ。
ざっくりとまとめると、中央に森林地帯、左上に湿地地帯、右上に山岳地帯、右下に川があると言った感じだな。ぱっと見た感じだと、左下の方のエリアが比較的戦いやすそうだ。
また、他の重要なルールとして指揮官というものの存在があった。各クラス、選手の他に指揮官を一人決められ、この指揮官はポータブルを通じて選手に指示を出せるらしい。とはいえ、指揮官に与えられるのはフィールドのマップと自チームの選手の位置情報のみであり、そこまで的確な指示は出せないだろう。あくまでも簡単なサポートをするだけといった感じだ。ちなみに、選手同士にも試合中のポータブルでの連絡が許可されている。
最低限把握しておくべきルールはこんなところだろうか。とりあえず、これだけわかっていればジークの話にもついていけるだろう。まあ特別演習の日程的に、当日の所有権はリダンにあるためオレがいくらルールを把握したところであまり意味はないかもしれないが。
それからオレは、しばらく資料を適当に眺めて時間を潰し、登校時間ギリギリになってから教室へと向かった。
*
今日の午前中の授業が終わり、昼休みがやってくる。今日も昨日と同様に、午前中は座学の授業で午後から演習を行うらしい。というか、昨日配られた時間割を見るに今月中は大体この形式でやっていくようだ。
オレは昼休みが始まってすぐに席を立ち教室を出た。特に急ぎの用があるわけではないが、今日の昼休みは研究棟に行くと決めていた。天啓の研究をしているカロス、マナ含有量の研究をしているレナス、そして魔道具の研究しているミールの下に行き、研究の協力をする旨を伝えるためだ。
そんなオレの後ろを一人のクラスメイトが少し駆け足でついて来る。
「リダンくーん、待ってよー」
振り向かずとも誰なのか分かるほどの感情を突き刺しながら近づいてくるのは、エリス・ミューラーだ。
昨日はリダンに結構な言葉を投げかけられたのに、懲りずにまた接触を図ってきた。どんな思惑があるのかは分からないが、ここまで来ると中々不気味だ。
オレがエリスの言葉を無視していると、やがてエリスがオレに追いつき隣を歩き始める。
「ちょっとー、無視しないでよリダン君」
「何の用だ。貴様の相手をしているほどオレは暇ではないぞ」
流石にここまで近づかれて無視をすることはできないため、軽く突き放すように対応する。正直、昨日の一件もあってエリスへの対応には悩んでいる。とりあえず今できるのは刺激しすぎないようにしながらあしらうくらいだろう。
「別に用事があるわけじゃないけど、どこ行くのかなーって」
「貴様は学習しないのか?貴様の存在が煩わしいと昨日伝えたはずだが」
「そうだけど、あたしはリダン君のことをもっと知って仲良くなりたいから」
「オレは馴れ合いをするつもりはない」
「ついていくだけでもダメ?」
「駄目だ」
「...」
オレがそう言い放つと、エリスは少しだけオレの前に出て顔をまじまじと観察してきた。
「リダン君、今日は少し機嫌がいいね」
「唐突に何を訳の分からないことを言っている。そもそも、どこをどう見たらそう思えるのか理解できんな。貴様のせいで気分は最悪だ」
「そうかな?少なくとも、昨日よりは大分機嫌が良さそうだけど。昨日は有無を言わさず突き放す感じだったけど、今日はそうでもないし」
その言葉にオレは少しだけ衝撃を受けた。エリスはオレとリダンの違いを何となく感じ取っているようだ。エリスに対してはリダンが大きな嫌悪感を持って接してしまうこともあって、対応の差が大きくなってしまったのが原因かもしれない。
「...とにかく、今日は貴様の相手をするつもりはない。さっさと去れ」
「ちぇー、今日は機嫌が良さそうだから押せば連れてってくれるかと思ったのに。...じゃあまたね」
エリスはそう言って手を振りながら去っていった。
オレはその後、予定通り昼休みの時間を使って各研究室に顔を出し、研究に協力する旨を伝える。それぞれの場所で軽い足止めをくらったため、教室に戻ったのは午後の演習が始まる時間ギリギリだった。
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