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感情希薄なモルモットは二重人格者  作者: 識友 希
第3章「王女編」
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第41話「リダンと魔法演習」

 昼休みが終わり、時刻は13時。リダンを含めたクラスメイトと担任のミールは訓練場に集まっている。


「今日からみんなには、魔道具を使った魔法を使えるようになってもらうよ。目標は、全員が今月中に各属性で第3位までの魔法を使えるようになること」


 そう言ってミールがいくつかの魔道具を全員の前に見せる。


「例えばこれは、水の魔法を使える魔道具だね。これを使えば、...ほら」


 ミールが魔道具を使って、水の第1位魔法『アクア』を発動した。魔道具に組み込まれている魔石が光り出し、アクアによってミールの傍に水球が発生する。


「こんな風に、水属性の適正が無くても水属性の魔法を使うことができるよ。第1位の魔法だけならそんなに難しくないから、まずはみんなもやってみよっか」


 クラスメイト全員に、適正属性以外の魔道具が1つ配られる。リダンに配られたのは水属性の魔道具だった。


「まずは何も考えずにマナを流してみて。そうすれば、基本的にはその魔道具が持つ属性の第1位の魔法が発動するはずだよ」


 クラスメイト達は、ミールに言われた通り魔道具にマナを流す。すると、それぞれの周囲で各属性の第1位魔法が発生した。

 どうやら魔道具自体に、簡易的にマナを操作する仕組みが施されているようだ。これは、原料にした魔石自体がマナを持っているからこそできる芸当だな。マナを持たない魔道具だと、必ず自分でマナを操作する工程が必要になる。

 ちなみに日常生活で使われているような魔道具は、そのほとんどがマナを流すだけで使えるようになっているらしい。


「みんなできたみたいだね。じゃあ次は、もっと威力を上げた第1位魔法を発動するよ。今度はマナを流すだけじゃなくて、魔道具の魔法の発動を補助するように自分のマナと周囲のマナを操作してみて」


 まずはミールがお手本を見せ、クラスメイト達はそれに続く。だが、今回は半数近くのクラスメイトは威力を上げた第1位魔法を発動できなかった。


「大丈夫大丈夫。最初はできなくても、段々とできるようになるから」


 ミールはできなかった生徒にフォローを入れ、丁寧にやり方を教えている。


「できた人は、次はここに置いてある資料を見ながら第2位の魔法を発動してみて。それができたら第3位の魔法だね。それと、できた人はできない人に教えてあげてくれると助かるな」


 第1位魔法で躓いてしまった生徒がミールから指導を受けている間、他の生徒は別の課題を言い渡された。生徒一人一人の技量に差があるため、演習は人によって異なるやり方で進めていくようだ。

 リダンは資料に少しだけ目を通すと、そこに書かれていた水の第2位魔法『スプラッシュ』と水の第3位魔法『アイスランス』を、当然のように発動する。

 そして、自分の課題は終わったと言わんばかりに、訓練場の隅の方に座り込んだ。訓練場を見回すと、クラスメイトの大半は第2位や第3位の魔法を発動するのに苦労している様子だ。

 今のところ、第3位の魔法まで発動出来ているのはリダン以外ではナディアしかいない。

 まあ、自分の適正以外の属性を使うことなんて普通はないから、感覚を掴むのに時間がかかるのは仕方ないかもしれない。

 しばらくクラスメイト達の様子を遠目に見ていると、一人の人間がリダンに近づいて来た。


「リダン様、少しよろしいですか?」


 近づいて来たのはイヴ・リグレクト。リダンに対して比較的友好的なクラスメイトだ。


「何だ」


 リダンは話しかけてきたイヴを拒絶することなく、用件を促す。まあ、快く受け入れているわけでもなさそうだが。


「私に渡されたのは闇属性の魔道具なのですけど、第2位魔法が上手く発動できないんです。他の方々も闇属性に関しては知識が少ないそうなので、良ければ少しご指導をお願いできませんか?」


 イヴはリダンの目をまっすぐ見つめて頼んでくる。刺さってくる感情からして多少の恐怖を感じているだろうに、その目がぶれることは無い。イヴは入学した時からリダンの事を気にかけており、接してくるその態度からは何かしらの強い意思が感じ取れる。


「...」


 リダンはイヴのまっすぐな視線から顔を逸らし、沈黙する。どうやら、イヴに魔法の指導をするかどうかを考えている様子だ。やはり、リダンはイヴに対しては比較的友好的な態度をとる。

 もしこれがジークやエリスであれば、即断っていただろう。ちなみに、そのジークとエリスは第1位の魔法で躓き、ミールから指導を受けている。


「...あの王女にでも聞けばいい。あいつは雑魚だが、その程度なら問題なくできるだろう」


「ですが、ナディア様は今は他の方のご指導をされているようですし、闇属性は使ったことが無いと仰ってました」


 イヴにそう言われ、リダンはナディアの方を見る。確かにナディアの周りには数人が集まっており、魔法を発動しながら何かを話していた。


「それに、私はリダン様に教えていただきたいです」


「...。一からは教えてやらん。見せてやるから後は勝手にしろ」


「ありがとうございます、リダン様」


 イヴはリダンに対して軽く礼をし、その顔には笑みを見せた。

 リダンは手元の資料に軽く目を通し、発動するべき闇の第2位魔法を確認する。そして、すぐにマナを操作して魔法を発動した。リダンの周囲5m程がわずかに暗闇に覆われる。

 リダンが今発動した、闇の第2位魔法『グローム』は周囲を暗くするだけのシンプルな魔法だ。暗くする範囲や、程度などは発動したときの出力次第で大きく変わる。

 リダンの発動した魔法の効力が消えた所で、イヴもリダンを真似てグロームの発動を試みる。だが、思うようにマナを制御できなかったのか、あるいはリダンの魔法を見てもマナの制御方法が分からなかったのか、魔法が発動することはなかった。

 イヴはそれから何度かグロームの発動を試みたが、一向に上手くいく様子はない。


「やはり、簡単には上手くいきませんね。リダン様、よろしければ、もう一度見せていただけませんか?」


「...」


 イヴのその言葉から少しだけ間を置き、リダンがもう一度マナを操作する。文句か嫌味でも言うのかと思っていたが、意外にも素直に魔法を発動するようだ。

 イヴはリダンが魔法を発動する姿を真剣に見つめている。そして、先ほどと同様にリダンの魔法が終わるとマナを操作し始めた。だがそう簡単に上手くはいかず、魔法は発動しない。


 それからイヴは、30分ほどグロームの発動を試みるが、一向に成功する気配はない。それもそのはず、イヴのマナ制御はグロームを発動するには根本的に間違っている。その間違いに気付かない限り、このままでは何時間かけても成功しないだろう。


(見せてやるだけじゃなくて、マナの操作を教えてやったらどうだ?)


(また俺に口出しするつもりか?)


(そうじゃない、ちょっとした提案だ。そのくらいはいいだろ?)


(...ふん。だがその提案は却下だ。何故俺が雑魚にそこまでしなければならない)


(何か得があるかって言われたら特にないけど、どうせ今は暇だろ?)


 正確には、ここで魔法を教えることでイヴからの印象が良くなるため得はあるが、それを訴えたところでリダンには響かないだろうから今は黙っておく。


(確かにそうだが、それがこの女の面倒を見てやる理由にはならないな)


(あの王女と同じように相手をしてやればいいじゃないか。別にこの女のことが嫌いなわけじゃないんだろ?)


(...レイ、何を企んでいる?)


(別に何も企んでない。この提案をしたのはただの暇つぶしだ。強いて何か理由を挙げるなら、恩を売っておけば後々で役に立つかもしれないって考えてるくらいだな)


(...)


 それからリダンはしばらく黙って考え込んだ。リダンも、絶対にイヴに魔法を教えたくないわけではないはずだ。イヴの存在はリダンにとってはそこまで煩わしいものではないはずだし、むしろ相対的に見ればかなり身近な存在だと言っていい。リダンがイヴにマナの操作を教えないのも、本人が言っていた通り、単純にそこまでする理由がないからだろう。


 それから更に5分ほど経った頃、イヴがリダンに声をかけてきた。


「リダン様、魔法を見せていただくだけと言う約束でしたが、何かコツのようなものがあれば教えていただけませんか?どうしても上手くできないんです」


 イヴが申し訳なさそうにリダンに教えを請う。


「...貴様のやり方では一生かかってもグロームは発動しないだろうな」


「そもそものマナの制御が間違っているということでしょうか?」


「そうだ。雑魚の貴様にも分かるようにもう一度見せてやる」


 そう言って、リダンはもう一度グロームを発動する。だがさっきまでとは少し違い、マナを操る速度はかなり遅い。イヴにでもマナの動きを感じ取れるようにする配慮だろう。

 リダンはまず体内のパーソナルマナに、心臓の紋章を通して闇属性を付与する。そして、その闇属性のマナを自分の周囲にある大気中のワールドマナに浸透させていった。リダンの操る闇属性のマナが全て周囲に馴染んだ所で、リダンの周囲5mほどが暗闇に包まれる。


「グロームを発動するには、貴様のようにマナを周囲にまき散らすようなやり方ではなく、闇属性のマナを周囲のマナに対して丁寧に混ぜ合わせる必要がある」


「...なるほど、確かに先ほどまでの私のやり方は間違ってましたね。上手くいかないはずです」


 今回はイヴにもマナの動きが良く見えたようで、リダンの魔法を見ながら頷いている。


「理解できたならばさっさと手を動かせ」


 リダンにそう言われ、イヴはもう一度グロームの発動を試みる。魔道具にある闇属性のマナを操り、周囲のワールドマナに浸透させていく。すると、イヴの周囲50cmほどが1秒にも満たない時間だけ暗くなった。


「っ!できました!」


 イヴは魔法が発動できたことに大きな笑みを見せる。その姿は無邪気に喜ぶ子供のようで、普段の落ち着いていて礼儀正しい令嬢の姿からは想像できないものだった。

 少しして喜びが収まると、イヴは少し恥ずかしそうにしながらリダンのほうを見た。


「す、すみませんはしゃいでしまって。お恥ずかしいところをお見せしました」


「その程度の魔法で喜べるなど、貴様はめでたい奴だな」


「リダン様からみたらそうかもしれませんね。でも、私にとってはとても嬉しかったんです」


「そうか、まあいい。後は数をこなせば出力も上がるだろう」


「はい、ありがとうございました、リダン様。また困ったら教えていただきに来てもいいですか?」


「好きにしろ。次も教えてやるとは限らんがな」


「ありがとうございます。では、失礼致しますね」


 すぐに元の様子に戻ったイヴは、丁寧にリダンにお辞儀をしてから微笑みかけると、そのまま去っていった。


(結局教えることにしたんだな)


(断ればあの女はしつこく迫ってきそうだったからな)


(そうか)


 リダンの思惑がどうあれ、これでイヴのリダンに対する評価はまた少し上がっただろう。これは悪くない傾向だ。


 それからは特にリダンの周りでは何も起きることはなく、魔法の演習の時間は過ぎて行った。

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