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感情希薄なモルモットは二重人格者  作者: 識友 希
第3章「王女編」
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第38話「レイと読書少女」

 研究棟を出たオレはそのまま図書館へと向かう。と言っても二重人格について調べるつもりはあまりなく、ほどほどに調べながらこの前目を付けておいた小説でも読もうかと思っている。

 リダンもある程度はオレの勝手にしていいと言っているし、そこそこに二重人格の調査をしている体を見せておけば特に文句も言ってこないだろう。それと、もしレイアに会えたら接触してみるつもりだ。


 オレは研究棟から数分で図書館へと辿り着き中へと入る。中を見回すと、昨日と同じように部屋の隅の読書スペースで本を読んでいるレイアを確認できた。

 レイアはまだオレには気づいていないようだったので、オレはレイアの位置だけ確認してから本を探しに行く。

 しばらく歩きながら色々な本を眺めていると、1つ気になるタイトルの本を発見する。そのタイトルは『魂の輪廻と転生について』だ。転生に魂、探しているキーワードに合致している。とは言え、転生は転生でもオレの状況は転生魔法によるものなので現状を解決するものじゃない可能性のほうが圧倒的に高い。まあ、とりあえずはリダンに対する建前として読むには十分だろう。

 先ほど見つけた本に加えて、以前に目を付けていた小説を2冊ほど持ってレイアの近くの席に座る。そこそこ近くまで来たことによってレイアがこちらに気付き、リダンの姿を確認すると一瞬だけ恐怖を感じていたが、一昨日と同様にその恐怖はすぐに消えていった。

 一昨日は恐怖を感じておらず、昨日は恐怖を感じていた。そして今日は恐怖を感じていない。むしろ今日に関しては少しこちらに興味を抱いている様子だ。この違いは何が原因なのか。

 オレはとりあえずはレイアを無視して魂と転生に関する本を読み進めて行く。


 読み始めてから1時間くらいが経ち、オレは本を読み終わった。結果から言うと、やはりこの本はハズレだった。魂と転生という内容から一応はその可能性も考えていたが、内容がどうにも宗教じみていた。生きている間に善行をたくさん積めば、神が来世では優遇して生まれ変わらせてくれるとか、逆に悪行を積めば神に魂ごと消されてしまうとかそんな内容だ。

 ちなみに、本の方はハズレだったが、もう1つの目的の方は悪くない状態だ。この1時間、レイアはオレのことを定期的にチラチラと見てきていた。普段ならば少し鬱陶しいが、話しかける口実として使えるから今はそれが助かる。

 オレはレイアに接触することを決め、タイミングを少しだけ見計らってから席を立つ。そして少し小声でレイアへと話しかけた。


「おい貴様、オレに何か用か?」


 レイアは話しかけられるとは思っていなかったようで、少し驚いて縮こまっている。


「あ、いえ...」


 レイアは急に話しかけられたせいか、困惑している様子だ。なんなら、さっきまで刺さってこなかった恐怖が少し感じられる。そういえば、エリスの話では引っ込み思案な性格だと言っていたな。少し高圧的に行き過ぎたか。


「別に責めているわけではない。ただ、一方的に見られているとこちらとしても気になる」


「その...」


 レイアはまだ言い淀んでいる。単純に人との会話があまり得意ではないのだろうか。もう少しこちらから追及してもいいが、ここは相手の言葉を待つのがいいだろう。

 それから数秒待つと、少し落ち着いたのかレイアが口を開いた。


「すみません、見ず知らずの人にジロジロと見られるのは嫌ですよね...」


「別に謝罪を要求しているわけではない。貴様がオレを見ていた理由を知りたいだけだ」


 レイアは話しかけてからずっと目を合わせない。だが、会話を拒否しているわけではないようなので、オレはまた返答を待つ。


「...その、不思議な方だな、と思ったので」


「不思議?オレが?」


「はい...」


 不思議とはまたよくわからない表現をされたものだ。レイアからそんな風に思われるような振る舞いをした覚えはないが。


「どうにもよくわからないな。不思議とはどういうことだ?」


「あの、それは、『色』が...」


 色。オレはその言葉で1つの可能性に思い当たる。オレの知っている天啓の1つに『色眼』というものがある。この天啓は、目の前にいる相手の人格が色として見えるというものらしい。オレも当然持っているわけではないので実際にどんなものなのかは知らないが。

 まあまだ確証があるわけじゃないから、もう少し情報を引き出したいところだ。


「色?」


「...はい、わたしは人の心が色として見えるんです」


「『色眼』の天啓を持っているということか?」


「はい...。詳しいんですね」


 やはり『色眼』を持っていたらしい。これで色々と合点がいった。つまり、一昨日と今日はオレに所有権があり、昨日はリダンに所有権があったから、レイアから見えている色が違っていた。それで気になっていたということだろう。前哨戦の時にリダンの色を見ていたと考えたら、一昨日あった時の反応も理解できる。だが、分かったのはいいが少し厄介なことになったな。


「なるほどな。それで、貴様にはオレがどう見えている?」


「...前哨戦の日や、昨日見た時は黒くて少し怖い色が見えていました。でも、一昨日見た時や今は違っていて、色がほとんどありません」


「色がほとんど無い?」


「はい...。無色とでも言えばいいのでしょうか。他の方々はその方の人となりを表すようなはっきりとした色が見えるのですが、あなたはまるで心がほとんど無いかのように透明です。色が変わる事といい、本当に不思議な方です...」


 心が透明、か。オレは最近少し変わったような気がしていたが、そうでもなかったのかもしれない。


「そうか。とりあえず、オレを見ていた理由は理解した」


 レイアがリダンを見ていた理由は分かった。それによって新たに考えなければならない問題は発生したが。

 さてどうするか、この問題は出来るだけ早急に解決したほうがいいと思うが、どう切り出したものか悩みどころだ。

 いや、この際少しストレートに行こう。藪をつついて蛇を出す可能性もあるが、今は大丈夫だったとしても、どの道時間が経てばレイアには気付かれる可能性が高い。


「貴様にもう1つ聞きたいことがある」


 オレはもう少し踏み込み、レイアにあることを切り出すことにした。

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