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感情希薄なモルモットは二重人格者  作者: 識友 希
第3章「王女編」
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第33話「レイと第2王女と腹黒少女」

 オレはジークと別れてそのまま部屋に戻った後、部屋のベッドに腰掛ける。このまま部屋でくつろぎたい所だが、まだやることが残っている。明日のナディアとの予定を決めなければならない。


(明日の予定はどうするんだ?)


(10時に訓練場に来るように伝えてくれ)


(了解。他になにか言っておくか?)


(必要ない)


(なあ、あの王女に関してオレから一つ提案があるんだが、聞いてみないか?)


(一応聞いてやろう、何だ)


(さっき研究棟であの王女に会った時に思ったんだが、所有権がオレにある日は王女の指導をあのメリアって女にやってもらうのはどうだ?実力的には問題ないと思うが)


(確かにそうだな。それであの女が強くなるならば好都合だ。だが、そう上手くいくのか?)


(まあ提案するだけするって感じだな。何も言わないよりはいいだろ)


(そうか。なら貴様に任せる。勝手にするがいい)


 話す内容を決め、ポータブルにマナを流す。すると、ポータブルから画面が浮かび上がってきた。そこにはNo1からNo5の数字が書かれている。これは登録した順番になっているはずだから、No1がミール、No2がナディア、No3がジーク、No4がエリス、No5がエルトシャンだな。このままだと分かりにくいから、とりあえずは番号を名前に変更しておくか。

 登録番号をそれぞれ名前に変更してからナディアに連絡を取る。ポータブルがしばらく光った後、トゥルルルという音が鳴りだした。しばらくすると音が鳴り止み、光が少し弱まる。


「聞こえているか?」


『リダンね?明日のことかしら?』


「そうだ、明日は10時に訓練場だ。必要なものは特にない。内容についてはその時に伝える」


『わかったわ。それにしても、事務的というか、淡々としてるわね。他にも何かないわけ?』


「何かとはなんだ?」


『え?えっと、そうね...。ちょっと雑談でもするとか?』


 なんだそれは。どうやら、淡々と連絡事項だけ話すオレの態度が気に食わなかっただけらしい。


「貴様はオレがそんなことをすると思ってるのか?」


『そうね。自分で言っておいてなんだけど、バカだったわ』


「とにかくわかったな?もし遅刻でもしたら覚悟しておけよ」


『私は高貴な王族よ?仮にも教えを請う立場の私がそんな失礼なことはしないわ』


「だといいがな」


『相変わらず腹立たしい態度ね。とりあえず、明日の予定については了解したわ。用件はそれだけかしら?』


「待て、まだいくつか話がある」


『今度は何よ』


「貴様、あの白黒の女とは仲がいいのか?」


『白黒って、メリアのことよね?』


「そうだ」


『ミストやメリアとは昨日の懇親会でなんか意気投合しちゃって色々と話したから、割と仲はいいと思うわ。メリアからは妙に懐かれちゃったみたいだし。それがどうかしたの?...はっ、まさかリダンあなた、メリアみたいなちっちゃい子がタイプの変態なんじゃないでしょうね!?』


「断じて違う。次に同じようなことを言ったら貴様の命はないと思え」


『そんなに怒らないでよ。冗談よ、半分は。あなたがそんな俗物的な感情を持ってるなんて本気で思ってないわよ』


「まあいい。前にもいったが、あの女のマナ制御は雑魚の中ではかなりやるほうだ。マナ制御だけで言えばアイゼンと肩を並べるレベルだろう。可能ならば、オレの指導が無い日で都合のつく日はあの女に見てもらえ」


『リダンがそう言うならそれに従うわ。あなたの実力は信用に値するもの。メリアが受けてくれるかは分からないけどね』


「あくまでそうなれば効率が少し上がるという程度だ。絶対ではない」


『分かったわ。その...色々考えてくれてありがとね』


「全てはオレ自身の為だ。貴様の感謝など価値はないし必要もない」


『何よ!この私の感謝なのよ!素直に感謝されときなさいよね!』


 少しからかってやると、ナディアが声を大きくして返答してきた。何というか、ナディアは扱いが楽でいいな。今日はエリス、エルトシャン、ジークとどうにも扱いにくい相手ばかりと話をしていたから少し気が緩んでしまう。ダルクやミールだって扱いやすい相手ではなかったしな。


「それで、次の用件なんだが」


『しれっと次の話に行かないでくれるかしら!まだ私が文句を言ってる途中なんだけど!...ふぅ、...ふぅ、...ふぅ』


 ナディアが叫びながら息を切らしている。


「いい加減うるさいぞ、さっさと用件を済ませたい」


『ふぅ...、ふぅ...。あなたと話してるとホント疲れるわ。腹立たしいけど、もういいから話を進めて頂戴』


「用件はこれが最後だ。貴様の兄に関する話を聞きたい」


『兄ってジークお兄様のこと?』


「そうだ。奴はどんな人間なんだ?」


『どんな人間って、ジークお兄様は素晴らしい人よ。私のこと良く褒めてくれるし、みんなに優しいもの。王都でもお兄様のことを悪く言ってる人は見たことがないわ。むしろ、褒められてる所ばっかり見るわね。マナの量は少ないかもしれないけど、そんなことが欠点にならないくらい優しくて、聡明で、立派で、自慢のお兄様よ』


 ジークに関して黒い噂はない、か。なにかリダンに向けられる感情の手がかりがあればと思ったんだが、空振りだったな。何か黒い噂がないかと踏み込んで聞くこともできるが、それは今はやめておいた方がいいだろう。


「そうか」


『リダンがお兄様と仲良くなりたいっていうなら、協力してあげてもいいわよ』


 何故かナディアは少し嬉しそうだ。自分の自慢の兄の話ができるだけで幸せなのだろうか。ともかく、ナディアは相当ジークのことを慕っているみたいだな。


「必要ない。オレは馴れ合いをするつもりはないからな」


『そう。でも、たまには素直にならないといつか後悔するかもしれないわよ』


「分かったような口を利くな。とにかく、用件は以上だ。それじゃあな」


『え、あ、ちょっ』


 ナディアが何か言おうとしていたが、こちらから強制的に通話を切った。

 とりあえず、今日やるべきことは終わったな。明日に向けて準備をすることも特にないし、今日は後は寝るだけだ。授業の方も、もう必要ないとリダンからお墨付きをもらったからな。

 現在の時刻は9時過ぎ。オレがゆっくりと寝る準備を進めていると、ポータブルが光り出した。誰からかと思いポータブルから浮き出てきた画面を確認すると、そこにはエリス・ミューラーの文字が表示されている。無視するわけにもいかないので通話に応じることにした。


『やっほー、リダン君。まだ起きてるよね?』


「何の用だ」


『ちょっと冷たくない?夜にこんな美少女から連絡があったらもっと喜んでもいいんじゃないかなー』


「切るぞ」


『あー待って待って!リダン君って明日は暇?二人でどこか行かない?』


「断る」


『またまた冷たい対応だなぁ。ちなみに何か予定があるの?』


「貴様には関係ないだろう」


『関係あるよ。だって、予定がないならデートできるってことでしょ?』


「仮に予定が無くても貴様に付き合う必要性が感じられないな」


『そんなことないって、きっと楽しいと思うよ。相手してくれないなら、明日リダン君の部屋までいっちゃおっかなぁ』


「...明日は人と会う予定があるから無理だ」


『へぇ、ホントに先約があったんだ。ちなみに、どこで誰と会う予定なの?』


「そこまで教えるつもりは無い。用は済んだだろう、もう切るぞ」


『まだ話は終わってないよ。明日がダメなら明後日はどう?』


「明後日も駄目だ」


『えー!?リダン君、あたしに冷たすぎない?あたしもしかして嫌われちゃった?』


「貴様に限らず、オレは馴れ合いをするつもりはない。それと、相手をしてほしいならその鬱陶しく絡んでくるのをまず止めろ」


『ちぇー。わかったよ、少しだけ自重する。その代わり、今度はちゃんと相手してよね』


「貴様次第だな。じゃあ切るぞ」


『うん。リダン君、おやすみー』


 エリスとの騒がしい通話を切り、一息入れる。今日は色々あったが、今の通話のせいもあって、どっと疲れたな。

 今日は朝と昼はテストで座りっぱなしだったし、エリスの意図の分からない接触にエルトシャンとの対話に取引、その後は研究棟で研究者やダルクの話を聞き、帰り道にジークとの会話、そして部屋に戻ってからはナディアへの連絡とエリスの相手。今日は間違いなく、オレの人生の中で一番多くの人間と話をした日だ。色々と気になることもあったし頭の中を整理したいな。

 オレは再び就寝準備に取り掛かりながら、長い1日だったと今日を振り返っていた。


ここまでが第3章前編になります。次回更新は、また1ヵ月以内を予定しています。


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