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感情希薄なモルモットは二重人格者  作者: 識友 希
第3章「王女編」
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第31話「レイとマナ含有量」

 カロスの研究室を出て、ダルクと共にレナスという男の研究室へと向かう。その途中で、見知った顔の三人組と遭遇した。


「あらリダンじゃない。あなたが研究棟に興味があったなんて少し意外だったわ。何してるの?」


 三人組の一人、同じクラスで因縁のある少女、ナディア・シュトラールが話しかけてきた。その横にはトリスカーナイエローのミスト・アーケディアとメリア・モノクロームがいる。昨日の懇親会で仲良くなったのだろうか。だとしても、この場所に一緒にいる理由は微妙に分からないが。


「オレが何をしていようとオレの勝手だ。貴様こそ、ここで何をしている」


「自分は答えないくせに相手には堂々と聞くなんて、ホント何様って感じよね。まあその態度にも慣れてきたけど。私は教室を出たところでこの子たちに捕まって、連れてこられたのよ」


 そう言って、ナディアはミストとメリアに視線を向ける。二人はオレに対して少し委縮している様子だ。


「そいつらは確か、昨日貴様と戦っていた奴だったな」


「そうよ。こっちの気だるげなのがミストで、こっちの小さい子がメリアね。あなたって意外と他人のこと覚えてるのね」


 ナディアが二人をオレに紹介してくれる。それに対してメリアは特に反応することはなく、ミストのほうは隣で紹介の仕方に軽く愚痴っている。


「こいつらは雑魚の中ではそこそこやるようだったからな。特にそっちの白黒の女のマナ制御は雑魚の中では悪くなかった」


「ミスト、メリア、知ってるかもしれないけどこの人はリダンよ」


 ナディアが、連れの二人にリダンのことを紹介してくれた。こっちから声をかけるわけにもいかないからこの気配りは助かるな。


「ミストよ。一応、ロイヤ族の族長の娘だから、クラスではリーダーのようなことをやらされているわ」


「リダンだ」


「...」


 ミストの方は割と友好的に接してくれたが、メリアの方は何故かナディアの後ろに隠れながらオレのほうを見ている。刺さってくる感情からして、二人とも少しだけ恐怖を感じているくらいでそこまで嫌われているわけではなさそうだが。


「メリア、どうしたのよ」


「その人、顔が怖いから」


「ぷっ」


 メリアの一言にナディアが吹き出した。


(顔が怖いってさ)


(知らん。貴様の表情が悪いんじゃないか?)


(どう考えても、素材のせいだろ。リダンは目付きの悪い悪人顔だからな)


(どう言おうと勝手だが、今顔が怖いと言われて笑われたのはレイ、貴様だからな)


 まあ確かに、今笑われてるのは間違いなくオレだな。結構複雑だが。


「大丈夫よ。顔は悪人顔だし、口や態度は最悪だけどそんなに悪い人じゃないわ。顔は悪人顔、だけどね。ぷっ」


またナディアに笑われてしまった。どうやら、リダンがメリアに顔が怖いと言われたことが謎にツボに入ってしまったらしい。


「そう、なの?」


「そうそう、大丈夫よ」


「ん、わかった。リダン、よろしく」


「ああ。ところで、貴様らはオレに思うところはないのか?連合国の奴らは浅はかにも、オレのことを嫌っていると思っていたが」


「んー、そうね。一族の中には闇属性ってだけで嫌悪感を示す人たちもいるし、あんたの場合は噂もあるから嫌ってる子は多いわ。けど、あたしはそんなの馬鹿馬鹿しいって思う質だから。あんたのこともあんた自身を見て判断するわ」


「ん、私も同じ」


 なるほど、この二人は中々話の分かる人間のようだ。他のクラスとはいえ、敵が多いとその分やりにくくなるから、リーダー格のこの二人がそういう考えを持っているのは助かるな。まあ、リダン自身を見てリダンが悪人だと判断される場合も容易に想像できるため油断は禁物だが。


「ええっと、そっちはダルクであってたかしら?」


「はい。シュトラール王国伯爵家、トリオンロード家のダルク・トリオンロードです。よろしくお願いします」


「ええ、よろしく」


「ん」


「ところで、なんでリダンとダルクが一緒にいるの?二人って知り合いだったのかしら?」


「リダン君とボクはここで偶然会っただけですよ」


「敬語は必要ないわ。校則にもあるけど、ここではただの一人の生徒同士よ」


「じゃあそうさせてもらうよ」


「それで?偶然会っただけにしては一緒にどこかに向かっているように見えたけれど」


「リダン君、話してもいい?」


「好きにしろ」


「リダン君がエルトシャン様からマナの研究を依頼されたらしくて、研究棟の案内板を見ていたところにボクが偶然通りかかって声をかけたんだ。今はボクがお世話になってる研究室を案内しているところだね」


「ふーん?エルトシャン様からとはいえ、リダンが人からの頼みをただ聞くとは思えないわね。何か目的があるのかしら?」


「少し取引をしただけだ、貴様には関係ない」


「あ、そう。まあいいわ」


ここまで話したタイミングで、メリアがナディアの服を後ろから軽く引っ張る。


「ナディア、そろそろ、時間かも」


「ちょっと立ち話をしすぎたわね」


「大丈夫よ。知ってるかもしれないけど姉さんは結構緩いから」


「もしかして、ミール先生のところに行くのかい?」


「そうなのよ。あんたたちの担任のミール・アーケディアはあたしの姉なんだけど、妹の扱いが雑っていうか、買い出し頼まれちゃって。一人で行くと絶対に追加で面倒なこと頼まれるから、ナディアとメリアを巻き込んで、ショッピングモールで買い物して今研究室に向かってるってわけ」


確かに、ミストの手にはショッピングモールの袋がぶら下がっている。


「それじゃ、私たちはもう行くわ。またね」


「それじゃあね」


「じゃあ、また」


 ナディア達はそれぞれが別れの言葉をいい去っていった。ナディアはあの二人に連れてこられたと言っていたが、ミールの下に向かっていたのか。確かに、ミストとミールの苗字は同じだったな。


「ナディア王女とはずいぶん打ち解けたみたいだね。初日に喧嘩していた二人とは思えないよ」


「オレは馴れ合いをしているつもりはない。あの女には利用価値があるから面倒を見ているだけだ」


「まあともかく良かったよ。クラスで問題が起きると面倒だからね。特にリダン君とナディア王女は影響力が大きいから、それに巻き込まれたらたまったもんじゃない」


「雑魚がどうなろうと知ったことではないが、オレは敵対していない他人を極力巻き込むつもりはない。どんな雑魚だろうと無駄に恨まれるのは面倒だからな」


「それを聞いて安心したよ」


 ダルクは割と保守的な人間らしい。まあ人間、それが普通な気がするが。結局のところ、ほとんどの人間にとって自分が一番大切だからな。


「これから会うレナスという男はどんな奴なんだ?さっきの奴のような変人じゃないだろうな?」


「レナス先生は結構厳格な人だよ。あと、カロス先生もちょっとだらしなくて変な所があるけど、悪い人じゃないから嫌わないでくれると嬉しいな」


「雑魚どもを多少煩わしく感じることはあるが、オレにとってはどうでもいい存在だ。他人に対して特別感情を抱くことは無い。肯定的な感情も否定的な感情もな」


「良かった。それはそれで少し寂しいけど」


(実際のところ、リダンからみてあのカロスって男はどうだった?)


(貴様の言うようにどうでもいいことだ。まあ多少うざったくはあるがな)


(まあやっぱりそんなもんか)


 それからは特に話すこともなく、ダルクの後をついていく。しばらくして、またダルクはとある部屋の前で立ち止まり、先ほどと同じように扉をノックした。


「レナス先生、ダルクです」


「ダルク君、いらっしゃい。悪いのですが、少しだけ待ってもらえますか?」


「わかりました」


 しばらく待っていると、扉が内側から開けられる。そこには50代前半くらいの男が立っていた。


「待たせてすみません。データを取っている最中でしたので、手が離せませんでした」


「いえ、大丈夫です」


「おや、そちらはもしかしてリダン・ブラックヘロー君ではないですか?」


 どうやら、レナスという男はリダンの事を知っていたらしい。レナスから向いて来る感情は、ほんの少しの恐怖と憎悪、そして大きな興味だ。リダンは研究者からは興味を持たれていることが多いな。まあ、オレも同じ研究好きとして気持ちは分かるが。


「そうだ」


「丁度良かったです。実は、近いうちにあなたに会いに行こうと思ってたんですよ。あなたのマナ含有量はとても貴重ですからね。是非データを取らせてもらいたかったんです」


「先生、リダン君は今日はただの見学ですよ」


「ああ、そうなんですか。うちの研究室に所属してくれるのかと思ったのですが」


「リダン君は、エルトシャン様から依頼を受けてマナの研究に協力してくれることになったんです。今はどこの研究室の手伝いをするのか決める為に色々見ているらしいですね」


「なるほど。では、是非とも私の研究室の魅力を知ってもらいましょう。とりあえず中に入ってください」


 レナスは部屋の中に入るようにオレたちを促す。レナスの研究室はカロスの研究室の3倍くらいあり、格差が感じられるな。こっちが大きいのか、あっちが小さいのかは分からないが、カロスが予算がないと愚痴っていた理由がよく分かる。

 部屋に入って辺りを見回すと、奥のほうに何かの検査用であろうベッドのようなものが置いてあり、そこに一人の人間が横たわっていた。その人間は来客に気が付くと起き上がり、その顔がはっきり見えるようになる。またしても偶然、知り合いと遭遇してしまったようだ。

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