第28話「マナの世界」
設定説明回その3です。この話で3章の設定説明回は終わりになります。
昼休憩が終わり、次のテストの時間がやってくる。オレを含めたクラスメイトは既に席に着いており、ミールがテスト用紙を配るのを待っている状態だ。
「午前中に言った通り、これからマナに関するテストをするよ。このテストは量があるし、制限時間は5時間あるから大変だけど頑張ってねー」
これまでのテストと同じようにミールが問題を配り、テストが開始される。とりあえず問題をざっと確認したが、確かにすごい量だな。最後の問題には問300と書いてある。
問1:私たちはマナを利用して様々な恩恵を得ているが、マナとは大気中に存在するマナと生物の体内に存在するマナの2種類に分けることができる。その名称をそれぞれ答えよ
問2:マナを用いて火や水を発生させたりすることを魔法と言い、魔法には無、炎、水、風、地、光、闇の7種類の属性が存在する。身体強化や具現化は何属性の魔法か答えよ
問3:生物が無属性以外の魔法を使う場合、基本的にはその個体によって決まっている適正属性の魔法しか使うことができない。その理由を答えよ
どうやら、最初はマナや魔法に関する基礎知識を問う問題らしい。問1の答えは『ワールドマナ』と『パーソナルマナ』だ。この世界には多くのマナが存在するが、物によってその性質は微妙に異なる。そして、その一番大きな区分としては大気中にあるマナである『ワールドマナ』と生物の体内にある『パーソナルマナ』に分類できる。
オレ達はこのワールドマナとパーソナルマナを上手いこと融合させることによって魔法を発動している。ちなみに、魔法とはマナによって引き起こされる事象の1つに過ぎないのだが、これはマナに相当詳しい人間以外は伝わらない話かもしれない。
また、ワールドマナは場所によって、パーソナルマナはその個体によって性質が微妙に異なってくる。特にパーソナルマナは個体によって大きく性質がが違うことも稀にある。パーソナルマナによる違いを他の物で例えるなら指紋やDNAなんかが近いだろう。
問2に関しては昨日の前哨戦でも良く見たものだし、簡単な問題だな。もちろん、答えは無属性魔法だ。
問3の問題も基礎的な問題だ。生物の心臓には生まれた時から無属性以外の6属性に対応した紋章が刻まれている。ワールドマナやパーソナルマナには元々属性は存在しないが、この紋章を利用することによって、体内のパーソナルマナに属性を付与して6属性の魔法を使うことができるという仕組みだ。
心臓に刻まれる紋章が1つの属性にしか対応していないため、基本的には適正属性以外の属性を使うことはできない。
そういえば普通に解答していたが、魔物に対する認識がオレと世間で違うように、マナに関する認識もずれている可能性を考えてなかったな。一応リダンに確認しながら進めていくか。
(ここまでで間違えてる問題はあるか?)
(問題ない。マナや魔法には自信がある言っていたくせにこの程度の問題すら不安なのか?)
(オレのマナに関する知識は偏っているからな。世間での認識とずれている可能性があって少し心配なんだ)
(ふん、どうだかな。約束通り詮索はしないがやはり怪しいものだ)
それからはちょくちょくリダンに確認を取りながら順調に解き進めていく。だが、ここにきて気になる問題に直面した。
問42:約15年前に行った調査により、大陸の人間の持つ適正属性の割合が明らかになった。1番人口が少ない属性と2番目に人口が少ない属性を答えよ。
答えは1番少ないのが闇、2番目に少ないのが光だと思うが、こんな調査があったのは知らなかったな。
(この問42なんだが、この調査ってどんなものか知ってるか?)
(この調査は、エルトシャンが学園を設立する際に行ったものだと聞いている。確か、炎が20%、水が21%、風が24%、地が25%、光が10%で、闇が1%未満だったと記憶している)
(光と闇が少ないのは知ってたが、闇が極端に少ないな)
(恐らくはさっきも話した『フィフス』の影響だろうな)
(ああ、そうか)
昔から闇属性の人間がフィフスという組織によって殺されてきたのであればこの結果にも納得だな。マナの属性やマナの量というのは遺伝することも多いらしい。だから貴族にはマナの多い人間が多い。元々貴族というのは、マナの多い人間が何かしらの成果を上げて抜擢されたものだからな。もちろん、遺伝も絶対ではないからリダンのような規格外な人間や、平民でマナが多い人間がいたり、ジークのように王族でもマナが少ない人間がいるわけだが。
この問題の後は特に気になる問題もなく、更に解き進めていく。大体150問を超えた辺りで魔法メインの問題が終わり、魔道具に関する問題が多くなってきた。
問151:適正属性以外の魔法は基本的に使うことが出来ないが、魔道具を使うことで適正以外の魔法を使うことができる。この原理を説明せよ
この問題は問3と大体似たような問題だな。適正属性の魔法と同様に、マナに属性を付与するためにはその属性に対応した紋章が必要だ。つまり、各属性の紋章が刻まれた魔道具にマナを流すことによって適正属性以外の魔法を使うことができる。性能の高い魔道具であれば、それ自体に多くのマナが流れているものもあるが、それは本当に稀なケースだ。基本的に魔道具は微弱なマナしか持っていない。あるいは、魔物の魔石にも属性付きのマナが流れているため、それを使うこともあるな。
問152:魔道具の主原料を答えよ
魔道具の主原料は生物の心臓だ。現在では魔道具に紋章を刻むような技術は確立されておらず、生物の心臓を利用することで、紋章が刻まれた魔道具を作ることが出来る。
魔道具に関しては施設でも色々と研究されていて、オレも実験に協力していたからこの辺りの問題は正直簡単だ。だが、魔物に関する事実が世間的に伝わっていないことを考えるとこの辺りの知識も世間では知られていないかもしれない。実際、生物の心臓を使って魔道具を作るというのは道徳的にはグレーゾーンな気がするから意図的に隠されている可能性もある。
(リダン、この問151と問152に関して教えてくれないか?)
(問151の答えは、魔道具に流れている属性の魔法を使うことができるから、だ。そして問152の答えは魔物の魔石だ。これくらいは常識だろう)
(ああ、念のため確認しただけだ)
やはり、この辺りの内容はオレの認識とずれがある。大体は合っているが、一部が抜け落ちている感じだ。まあ、魔物の魔石は、動物が魔物になる際に心臓が変化したものだから、魔石も生物の心臓といって間違いではないのだが。
このテスト、正直に答えると結構危険かもしれないな。細かいかもしれないが、こんなどうでもいいところでリスクを冒すのは避けたいところだ。
その後も問題を解き進めて行き、テストも終盤に差し掛かってきた。途中で魔物に関する問題もいくつかあったが、この辺りはリダンに聞きつつ特に注意して解答した。
問題も残り20問というところで、問題のジャンルがまた少し変わる。
問281:マナの多い人間には稀に、天啓という先天的に特殊な感覚を感じることが出来る能力が備わることがある。知っている天啓を3つ答えよ
最後は天啓に関する問題か。オレの以前の体やリダンにも備わっている天啓だが、正直なところオレでもわからないことだらけだ。マナに関する文献は古くても大体500年前までのものが多いが、天啓に関する文献はそれ以上前の物もかなり多い。それだけ大昔から人間に影響を与え、研究されてきたジャンルではあるが、ほとんど何もわかっていないのが現状だ。
実際、問題には先天的に備わる能力と書かれているが、実はオレが持っていた天啓は後天的なものだった。先生の治療による副作用のようなもので発現したのか、元々オレに備わっていた能力が後から表面化したのかはわからない。後天的に天啓が発現した例はオレ以外に聞いたことがないから、現状では前者の可能性が高いだろうか。オレが天啓を持っていたことは先生にも隠していたし、先生も特に何か言ってくることはなかったから副作用だとしても偶然の産物だと思うが。
天啓に関しては原理がまるでわからない。マナの多い人間に備わる第6感のようなもので、それはまるで天から授けられた特殊能力のようなものだ。
とはいえ、天啓に限らずマナ自体わからないことだらけだしな。オレは、マナは無限の可能性を秘めていると考えているが、今はその可能性をほんの一部しか引き出せていない。もし仮に、マナの可能性を全て引き出すことができれば不可能なことはないんじゃないかとさえ思う。例えば、死んだ人間を生き返らせたり、時を越えることさえも可能になるかもしれない。
オレが使った転生魔法だって、普通に考えればあり得ないことをしている。あの魔法はマナを利用して魂を導く魔法なのだが、マナによってそれが可能であることなんてほとんどの人間は知らないだろう。
そういえば、あの転生魔法が失敗した理由も未だによくわからない。あれから暇を見つけては頭の中で整理しているのだが、どうにも最後のピースが埋まらない感じだ。まず、オレが確認して問題ないと判断した以上、理論には問題はなかったはずだ。当時は失敗の可能性も危惧していたが、今冷静に考えて、失敗するなどあり得なかった。
あの魔法にはオレの魂をリダンの体へと導く力と、リダンの魂を体から追い出す力が間違いなくあった。そして、オレが魔法の発動をミスするはずもない。オレは誰よりもマナの制御が上手い自信があるし、あの時も完璧にマナを操作した。
だとすると失敗した要因は、理論やオレのミスではなく、外的要因。つまり、何かが邪魔をしたということだろう。だが、何に邪魔をされたのかが全く理解できない。あの時、周囲にオレと白衣の男、テッド以外のマナの反応はなかったはずだし、マナの流れにもおかしな点はなかった。となると発動中に何かが起こったことになるが、魔法の発動中はオレの意識はなかったわけだし、そこまではわかるはずもない。
結局いつもここで詰まる。やはり今考えたところで意味はないな。それよりも、新しい体を手に入れる方法について詰めていくほうがよほど有意義だろう。
しばらくしてテストが終わる時間が近づいてくる。特に難しい問題はなかったから、問題なく満点を取れてそうだ。と言っても、リダンの知識に合わせた部分もあるからオレから見たら一部怪しい部分もあるが。まあ、リダンの知識もかなり豊富みたいだから多分大丈夫だろう。そもそも、別に高得点を取る必要もあまりないしな。リダンの尊厳が守られるくらいだ。
「はーい、時間だよ。解答用紙を回収するからねー」
本日最後のテストを終え、ミールが解答を回収する。クラスメイトも流石に疲れたようで、開放感に身を預けている人間も多い。
ミールがいつも通りに中身を確認して、解答用紙をまとめる。
「それじゃあ、今日のテストはこれで終わりだよ。来週からはこのテストの結果も踏まえて授業や演習をしていくからねー。それと、明日から入学して初めての休日だけど、あんまり羽目を外しすぎないようにね」
確かに、入学してから今日まで結構色々あって疲れた生徒も多いだろうから、その反動ではしゃぎすぎる奴も出てくるかもしれないな。
「最後に連絡事項だけど、午前中にも言った通り、研究棟では研究に協力してくれる学生を募集してるから、興味がある人は是非行ってみてね。あと、リダン君はこの後少し話があるので私の所に来てもらえるかな?」
リダンに話とは何だろうか?教師から注意されるほどの問題行動は起こしてないと思うが。オレはとりあえずミールの方をみて軽く頷き反応して見せる。
「それじゃあ今日は解散!みんなお疲れ様ー」
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