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感情希薄なモルモットは二重人格者  作者: 識友 希
第3章「王女編」
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第27話「腹黒少女と読書少女」

 エリスからの質問攻めに答えていると、ショッピングモールに着いた。ここでは日用雑貨や食品を主に取り扱っているらしい。とりあえず、適当に軽い物を買っていくか。

 食品コーナーまで行き、適当にパンを取ってレジへと向かう。


「お昼ご飯、それでいいの?」


「手軽に食べられれば何でもいい」


「そっか。じゃああたしもこれにしよっと」


「オレに合わせず、貴様はじっくり選ぶがいい」


「そんなこと言って、その間に置いていくつもりでしょ?」


 自然にエリスと離れられるチャンスだと思ったが、オレの浅知恵は簡単に見抜かれてしまった。


「置いていくもなにもない。オレはオレの好きなように行動するだけだ」


「じゃああたしもリダン君についていきたいから、そうするね」


「...」


 会計を済ませてからショッピングモールを出て、買ったパンを食べながら図書館へと向かう。


「図書館までついてくるつもりか?」


「うん、だってまだまだ聞きたいことあるし」


「言っておくが、答えてやるとは限らないぞ」


「それでもいいよ。本当はリダン君と話したいだけだしね」


 今後もこれが続くのであれば早急に対応を考える必要があるかもしれない。オレに所有権があるタイミングであれば適当に相手をして終わりだが、リダンに所有権がある時にエリスにつきまとわれると何が起こるかわかったもんじゃない。


「...。今だけは相手をしてやる」


「良かった!」


 なんとも嬉しそうな表情をするものだ。これで内心はオレに対して強い嫌悪感を持っているのだから恐ろしい。元より他人を本気で信用するつもりはないが、世の中がこんな奴ばかりなら一瞬で人間不信になってしまうな。


「じゃあね、リダン君はこの学園でしたいことってある?」


 学園でしたいことか。一応建前上は二重人格について調べるというのが目的だが、オレ自身には特にないな。せっかくだしリダンにも聞いてみるか。


(リダンはなんでこの学園に来ることにしたんだ?)


(レイを俺の体から追い出すためだ)


(そうじゃなくてさ。オレが来る前から学園には行く予定だったんだろ?)


(単に家から出る丁度いい機会だったというだけだ)


 なるほどな。リダンなら学園から推薦が来ても断りそうだと思って少し疑問だったが、そういう理由があったのか。


「特にないな。強いて言えば、俺が本気を出せるような強い奴と戦うことを望んでいる」


「強い人かぁ。でも、昨日戦ったアイゼン君が一番強いんじゃない?アイゼン君よりも強い人と戦いたいってこと?」


「あの男は雑魚の中では大分マシだが、まだ足りないな。俺が本気を出せる相手ではない」


「そっかぁ。じゃあリダン君の望みは叶いそうにないね」


「現状ではそうだな」


「現状ではってどういうこと?」


「貴様には関係ない話だ。気にするな」


「リダン君はクラスのことには興味ないの?特別演習とかさ」


「クラスの勝敗に興味はないな。エルトシャンからもらえる褒美とやらにも興味はない」


「じゃあ仮に、誰かのせいで特別演習に負けてもその人を責めたりしない?」


「どうでもいいことだ」


「そっか。リダン君って噂だともっと過激で酷い人って聞いてたけど、意外と穏やかなんだね」


「穏やか?オレが?」


「うん。こんな風にあたしが強引に話しかけてもなんだかんだ相手をしてくれるし、自分の足を引っ張る人がいても、理不尽に暴力を振るったりしないみたいだし」


 そう思うのなら、その溢れる感情を少しは抑えてほしいものだ。今の言葉を素直に受け取ると、リダンに対する印象が少し良くなったように聞こえるが、刺さってくる感情は全く緩和されていない。


「そうか。ちなみに、オレの噂とはどんなものを聞いていたんだ?」


「えーっとね、すごく気性が荒くて短気な人だって聞いてたよ。人が傷つくような言葉を平気で言ったり、気に入らない人にはすぐ暴力を振るったり、進んで人を追い込むようなことをする人だって」


(だそうだが、実際どうなんだ?)


(雑魚どもがそう言うのなら、世間での俺はそうなんだろう)


(否定しないんだな)


(否定できる材料がないからな)


(オレから見たら、人が傷つく言葉を言うってのはともかく、他のは事実じゃないと思うけどな)


(...わかったようなことを言うな)


(まあ、この2週間でオレがそう感じたってだけだ。少なくともオレが見てきたリダンは、言葉は悪いけど理不尽に暴力を振るったりしないし、自分から相手を追い込むことや争いを好むような奴ではない。まあ、言葉が悪いせいで結果的に争いになることはあったけどな)


(...ふん)


 オレも最初はリダンはろくでもない奴だと思っていたが、実際には噂されているほど悪い奴ではないと思う。


「どうしたの?」


 リダンと話していたせいで、エリスのほうを少し蔑ろにしてしまったな。黙り込んでいたからエリスが気にしている。


「雑魚どもは刺激の強い話が好きだからな」


「じゃあ事実じゃないってこと?」


「どうだろうな。少なくとも、オレは雑魚共と無意味な争いをするつもりはない」


「そっか。なんだかリダン君のこと、ますます知りたくなっちゃった」


 オレもエリスが何を考えているのか知りたいものだ。これはある意味、相思相愛と言えるかもしれない。とはいっても、少なくとも甘くなるような愛はなさそうだが。


「あ、もうすぐ図書館に着くね」


「中までついて来るのか?図書館の中では話はできないと思うが」


「もちろんついてくよ。リダン君の目当ての本も気になるしね」


 図書館に入ると入口に受付があり、管理人と思わしき人が座っていた。


「生徒の方ですか?」


「ああ」


「では、お名前をお願いします」


「リダンだ」


「エリス・ミューラーでーす」


 リダンの名前を聞いた管理人は少しだけ動揺したが、すぐに対応を進めてくれた。


「ありがとうございます。ここにある本は自由に読んでもらって構いません。そちらに案内版があるので必要であれば利用してください。貸出もできますので、希望する場合はここに持ってきてくれれば手続きをします。それと、館内で会話をする場合は小声で静かにお願いします」


 管理人は簡単な説明をして、館内へと通してくれた。オレは教えてもらった案内板の前へと移動する。本を探すキーワードとしては、二重人格、マナの怪奇現象、魂とかそんなあたりか。当然そんなマイナーなジャンルがあるわけでもないので、探すのは苦労しそうだ。

 本当なら転生魔法に関する本を探すのがいいかもしれないが、そもそもあるのか怪しいし、リダンに事情を説明していない以上、それを探すのはおかしな行動になってしまう。

 そもそも、リダンへの建前として調べるだけだしあまり本気で探さなくてもいい。

 とりあえずは館内を適当にぶらついてみるか。図書館はかなりの大きさで、蔵書数もかなり多い。そこそこの大きさだったリグレクトの書斎と比べても数十倍の量がある。全部調べるには相当時間がかかるな。

 館内には数人先客がいた。見覚えのある人間はいなかったが、どうやら生徒以外の人間も図書館を利用しているようだ。まあこの学園には生徒以外にも、教師やその他の職員がいるようだからな。そういう類の人達だろう。利用者には生徒じゃない子供もいるようだが、まあそういう人間が居てもおかしくはない。


 色んな本を見ながら10分ほど適当に歩いていると、ついてきていたエリスが小声で話しかけてきた。


「リダン君、結局どの本を探してるの?」


「特に決めていない」


「え?じゃあ調べものっていうのは?」


「調べるものは決めているが、どの本にそれが載っているのかわからないからな」


「なるほど、大変そうだねー」


「そうだな。貴様はもう戻ったらどうだ?もうあまり時間もないだろう」


 現在の時刻は12時40分。図書館から教室までは普通に歩けば5分から10分ほどだから、そろそろ戻ってもいい時間だ。


「確かにあまり話もできないし、あたしが居てもできることはなさそうだけど、折角だからリダン君と一緒にここにいるよ」


「...そうか。勝手にしろ」


 その後また5分ほど館内を歩き回り、図書館を出ることにした。二重人格に関連しそうな本もいくつかあったが、今はエリスもいたため手に取るのはやめておいた。それと、面白そうな小説もいくつか見つけたため、今度読みに来るのもいいかもしれない。

 図書館を出るとき、丁度学園の生徒と思われる儚げな少女が管理人のところで貸出の手続きをしていた。こちらが相手を見たタイミングで偶然向こうもこちらを振り向いたことで目が合う。少女はリダンの姿を見て恐怖の感情を刺してきたが、その恐怖は数秒で消えてしまった。その後数秒間、少女はオレを見て興味深そうにしていたが、オレはそれを無視することにした。エリスとその少女は知り合いだったのか、エリスが少女に手を振ると、少女はエリスに対して軽く会釈で返す。


「リダン君、レイアちゃんと見つめ合ってたけど、もしかして知り合いなの?」


「レイアとはさっきの女のことか?」


「そうだけど、知り合いじゃないの?」


「知らん。あの女は今日初めて見た。貴様は知っているのか?」


「帝国侯爵家のレイア・メルタニスちゃんだよ。あたしも直接話したのは昨日が初めてだけど」


 レイア・メルタニス。そういえば、前哨戦の前にジークが話していたな。確かにマナの量は常人のそれではなかった。見た感じ、ナディアよりもわずかに少ない程度だろうか。

 それに加えて、さっき向けてきた感情。最初は恐怖を感じていたのに数秒したら恐怖が消え、少しの肯定の感情を向けてきた。何が原因でそうなったのか気になるところだ。レイアという名前は覚えておこう。


「ちなみに、さっきの女はどんな奴なんだ?」


「もしかして、リダン君ってああいう子が好みなの?」


「違う。あいつは雑魚の中でもマナが多かったからな。それで気になっただけだ」


「ふーん?まあいっか。えっとねぇ、リダン君が今言ったように、マナが多いから帝国では結構注目される存在みたいだよ。あたしも学園に来る前から名前だけは知ってたし。けど、本人が引っ込み思案みたいで、社交場とかの表舞台にはあまり出てこないみたい。争いごともあまり好きじゃないみたいで、マナが多いのに昨日の前哨戦に出てこなかったのもそういう理由らしいよ。ちなみに、昨日レイアちゃん本人に色々聞いてみたら、本を読むのが好きだって言ってた」


「良く知ってるな」


「ふっふっふ。あたしの情報網を舐めない方がいいよー?あたし、人と仲良くなるのは得意だから、色んな人から色んな情報仕入れてるんだ。昨日の親睦会でも色んな人と仲良くなれたし」


 このコミュニケーション能力は素直に称賛するところだな。それで生まれる人脈によって集まる情報量もなかなかに羨ましい。リダンはこんな奴だし、オレもあまりコミュニケーションが得意とは言えないから、今後も欲しい情報が手に入らずに困ることは多いだろう。というか今まさにその状態だ。


「他にも聞きたいことがあったら言ってね。リダン君なら特別に教えてあげる」


「今は必要ない。とりあえず、情報をくれたことには感謝してやる」


「どういたしましてっ!」


 それからはまたエリスから色々と質問されながら教室へと戻った。

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