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感情希薄なモルモットは二重人格者  作者: 識友 希
第2章「学園入学編」
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第19話「シュトラールブルーVSトリスカーナイエロー」

 リダンは今、闘技場の控室に向かっている。現在の時刻は12時50分。いつも通り時間ギリギリだ。今のままのペースで進めば、控室に着くのは集合時刻2分前といったところか。


(わざわざギリギリに行く必要はなかったんじゃないか?授業なら控室でもできただろ)


(控室にいるのは義兄とあの女だぞ。居心地が悪くて長時間居られたものじゃない)


(まあルフトは睨んできそうだし、ナディアはまた突っかかってきそうだな)


(そういうことだ)


 まあオレも大体わかっていて聞いている。ただ暇つぶしにリダンに話しかけてるだけだ。一応はリダンの考えを知るという目的もあるが。オレに所有権があるときはある程度はリダンをトレースする必要があるから、その情報集めだ。


 闘技場の控室に着き、扉を開けるとルフトとナディア、それにミールがいた。


「あ、来たねリダン君。遅刻ギリギリだよー?」


「間に合ったのだから問題ないだろう」


「まあそうだねー」


「さっき観戦してたから流れは大体わかってると思うけど、一応説明しておくね。基本的にはここで待機していて、放送で呼ばれたら会場に向かってね。ちなみに、ルフト君とナディアちゃんはもし負けちゃった後はここに戻っても、観戦席に移ってもいいよ。あと、会場の様子はこの魔道具を使えばわかるから必要なら使ってね。ちゃんと音と映像の両方が届くようになってるから。こっちからの声は届かないよ。何かわからないことはあるかな?」


「問題ありません」


「私も大丈夫よ」


 ルフトとナディアが返事をし、リダンは軽く頷く。


「それじゃあ私は行くね。もう少ししたらルフト君が呼ばれると思うから。三人とも頑張ってねー」


 ミールは部屋から出て行った。控室には三人が残る。この三人はどうにも気まずい気がする。リダンの辞書には気まずいなんて言葉はなさそうだが。そう思っていると、ナディアが口を開いた。


「あなた、ルフトだったわよね?後ろには私が控えてるから全力で戦ってきなさい」


「ああ、そうさせてもらう。ナディア王女がいれば俺も心強い」


「あなたも、ちゃんと私の活躍をみてなさいよね」


 ナディアはリダンの方をみてそう言う。リダンがそれに対して言い返そうとしたところで放送がなった。


「時間になったため、これより前哨戦第2試合、トリスカーナイエロー対シュトラールブルーの試合を始める。双方の先鋒、レオンハルト・コーデック及びルフト・ブラックヘローは控室から会場に来るように」


「では行ってくる」


 ルフトはナディアに軽く礼をしてから少し駆け足で控室から出て行った。部屋にはリダンとナディアの二人が残る。

 しばらくして魔道具の画面にルフトとレオンハルトが映った。この魔道具、オレが知っているものと同じ物だ。見られるのには慣れているが、見る側になるのは初めてだな


「俺はルフト・ブラックヘロー。魔法の属性は地。得意な武器は長剣の二刀流だ。よろしく頼む」


「俺はレオンハルト・コーデックだ。しかし、いいのか?わざわざ自分の戦い方をばらすようなことをして」


「俺は先ほどの戦いを見ていた。こうするほうがフェアな勝負ができると思っただけだ」


「なるほどな。では、ルフト殿の誠意には全力で戦うことで答えるとしよう」


「ではこれより、トリスカーナイエロー先鋒レオンハルト・コーデック対シュトラールブルー先鋒ルフト・ブラックヘローの試合を始める。両者位置に着いてくれ」


 ルフトとレオンハルトの戦いが始まろうとしている。リダンはそれを見ようとせず、授業の為に寮から持ってきた本を開く。オレもそれに集中しようとしたところで横から声をかけられた。


「あなたはどっちが勝つと思う?」


「雑魚同士の戦いに興味はないな」


「聞いといてなんだけどそういうと思ったわ。でもいいじゃない、それくらい答えてくれても」


「俺は貴様に構っているほど暇じゃない」


「暇じゃないって、その本を読むだけでしょ?何々?『人魔戦争と四英雄』ってあなた、見かけによらず真面目なのね。こんな時まで勉強なんて。それとも、こんな時も勉強しないといけないほどバカなのかしら」


「貴様には関係ない。それと俺はバカじゃない」


「ふーん?あなたがバカだったらギャップがあって面白いけどね。それで、質問には答えてくれないの?」


「俺は興味がないと言っているだろう。それに、貴様に答えてやる必要もない。俺に構うな」


「冷たいわね。一人で観戦してても暇なのよ。私の退屈凌ぎに付き合いなさいよ」


「何故俺に構う?貴様は今も俺に憤っているはずだ」


 確かにナディアからは、まだ微かだが怒りの感情が刺さってくる。リダンを完全に許したわけではないのだろう。そもそも許す許さない以前に態度が気に食わないだけかもしれないが。


「別にもうたいして怒ってないわよ。今でもその顔と態度は腹立たしいけどね」


「...。答えてやる代わりに、その後は俺に構うな」


「何よ。意外と簡単に態度を変えたわね。最初から素直にそうやって答えればいいのよ」


「いちいち舐めたことを言うな。今は機嫌がいいから許してやるが、次はないぞ」


「それで、あなたはどっちが勝つと思うの?」


「あのでかい男だな。あいつもマナの扱いは雑魚の割にはできるほうだが、あのでかい男との身体能力の差を埋めるほどではないだろう。単純にマナの量の差もあるしな」


「あいつとかでかい男とか言われてもわかりにくいんだけど」


「雑魚は名前を呼ぶ価値もないということだ」


「まあいいわ。ちなみにルフトが負けたとして、私とあのレオンハルトだったらどっちが勝つと思ってるの?」


「...もう質問には答えたはずだが?」


「いいじゃないついでに答えてくれても。ケチね」


「...。貴様とあの男ならば、普通に考えれば貴様が勝つだろうな。ついでに言うならば、その後に出てくる白黒の女やロイヤ族の女が相手でも勝つのは貴様だろう」


「そう、そうよね。私って天才だし」


「勘違いするなよ。今のは普通に考えた場合の話だ。貴様自身が雑魚であることを忘れるな。貴様の実力なら負けることも十分にあり得る」


「なによ!褒める時は素直に褒めてくれてもいいじゃない!」


「貴様に褒めるところなどないだろう」


「なっ!...まあいいわ。どの道あなたはいつか私の素晴らしさを知ることになるんだから」


「質問には答えた。もう俺に構うなよ」


「...。わかったわよ」


 リダンはそれからナディアのいる方向と反対方向を向き本を開く。


(意外だな、相手にしないと思ってた)


(相手になどしていない。しつこいから仕方なく答えてやっただけだ)


(その仕方なく答えたのが意外だったんだが。まあリダンでも機嫌がいい時はそんなこともあるか)


(俺をバカにしてるのか?)


(違うって。それより、いつも通り分かりやすい授業を頼む)


(たった今機嫌が悪くなったからな。貴様には特別な授業をしてやろう)


(悪かったから、お手柔らかに頼む)


 授業が始まってからしばらく経った頃、魔道具のモニター画面から歓声が聞こえてきた。どうやら決着がついたらしい。


「試合終了!ルフト・ブラックヘローの負傷により、この試合、トリスカーナイエロー先鋒、レオンハルト・コーデックの勝ちとする!」


 どうやら、リダンの予想通りレオンハルトが勝ったらしい。時計を見ると時刻は13時50分。かなり長い戦いだったな。ルフトはかなり善戦したようだ。


「あなたの予想通り、レオンハルトが勝ったわね。内容はかなり接戦だったけど」


「そのようだな。あの義兄は俺が思っていたよりもやるようだ。雑魚には違いないがな」


「あなたって大体一言余計なことを言うわよね」


 これに関してはナディアに対して全面的に同意だ。いい機会だからオレからも言っておくか。


(言われてるぞ)


(何が余計なのかわからないな。事実を言って何が悪い。それに、余計な一言と言うならば貴様のほうが多いだろう)


(まあ否定はしない)


「シュトラールブルー中堅、ナディア・シュトラールは控室から会場に来るように。レオンハルト君はその場でしばらく待機していてくれ」


「呼ばれたから行くわ。私の戦いをちゃんと見てなさいよね」


「俺は雑魚の戦いには興味はない」


 ナディアはそれには反応せずに部屋を出て行った。何となくそう返されることが分かっていたのだろう。心の中ではリダンが戦いを見てくれることを期待していると思うが。


 ナディアが出て行ってからリダンはほとんどの時間、オレへの授業に集中していた。

 少し休憩することになり、時計を見ると14時20分。あれから30分ほど経っている。試合のほうはどうなっただろうか。

 魔道具の画面を見ると、ナディアとメリアの戦いが終わったところだった。


「試合終了!メリア・モノクロームの負傷により、この試合、シュトラールブルー中堅、ナディア・シュトラールの勝ちとする!」


「また負けた。あなたもすごい」


「そうよ、私はすごいんだから!でも、あなたも中々すごかったわ。私相手にここまで戦えるなんて、誇っていいわよ!」


「ん、ありがと」


 どうやら、ナディアは無事メリアに勝利したようだ。今の戦いはかなり苦戦していたみたいだが。今のところはリダンの言っていた通りに進んでいるな。やはりリダンはすごい。単純に力だけじゃなくて状況を分析する力も持ち合わせている。


(そろそろ終わりそうだな)


(そうだな。まあ、この戦いに俺は興味はないが)


(アイゼンとの戦いが待ち遠しいか?)


(そこまで期待はしていない。俺にとって雑魚であることに変わりないからな)


(オレは意外と苦戦するんじゃないかと睨んでるけどな)


(貴様は俺を舐めているのか、あの男を過剰評価しているのか、どっちだろうな)


(オレの推測が正しいって線はないのか?)


(まだあの男の実力が全てわかったわけではないからな、その可能性もある。だが、貴様の推測が当たると苛立たしいから、そうならないようにしてやろう)


(なんだよそれ、性格悪いな。まあ分かってたことだけど)


(折角だ。貴様が俺に舐めた口を利けないように、機会があれば俺の本気を少しだけ見せてやる)


(そうか。楽しみにしてる)


 実際のところ、オレはリダンをからかったわけじゃなくて、リダンがアイゼンに苦戦する可能性もあると考えている。あのアイゼンという男、まだ全力を見せてないような気がするのだ。正確には、全力が分かる前に相手が負けてしまったというのが正しいかもしれない。とにかく、まだアイゼンの底は見えていない。


 それからまたしばらくリダンの授業を受けていると、魔道具から放送が流れた。


「試合終了!ミスト・アーケディアの負傷により、この試合、シュトラールブルー中堅、ナディア・シュトラールの勝ちとする!またこの結果より、前哨戦第2試合、トリスカーナイエロー対シュトラールブルーはシュトラールブルーの勝利とする!」


「あーあ。やっぱ2連敗かー。なんとなくこうなる気がしてたんだよねー。あんたもアイゼンも反則的に強すぎよ」


「私がすごいのは事実だけど。上には上がいるものよ。私はまだあなたの言う反則的な強さには遠いわ。悔しいけどね」


「それってもしかしてリダン・ブラックヘローのことかしら?あんたよりも強いって絶対に相手にしたくないわね」


「まああの人の相手をするのはオススメしないわね」


 ナディアは余裕そうに振る舞っているが、かなり消耗している。まあ3連戦だし疲れるのは当たり前か。ナディアにとっては三人とも楽勝な相手というわけではなかっただろうしな。この3戦はナディアが成長するいいきっかけになるかもしれない。


「では、これにて前哨戦第2試合は終了です。第3試合は休憩を挟んだ後、予定通り15時半からの開始になります。前回と同様に、選手は控室に、それ以外の生徒は観客席に集合してください」

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