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感情希薄なモルモットは二重人格者  作者: 識友 希
第2章「学園入学編」
16/111

第16話「モルモットは賭けをする」

ここから第2章の後半になります。第2章後半は8話あるので、今日と明日で4話ずつ投稿する予定です。

 今日は学園に入学して3日目。前哨戦の当日だ。リダンは昨日や一昨日と同様に時間ギリギリに寮を出て教室へと向かった。

 しばらくして教室の前へと到着し、扉の前に立つ。教室の窓から中を見る限りだと、今日もリダンが最後みたいだ。今までと同じように教室の後ろの扉を開け、少しの視線を受けながら席に着く。

 それから更にしばらく経つと、チャイムが鳴り教室の前の扉からミールが現れる。まだ3日目だが、段々とこれが日常になりつつある。


「みんなおはよー。今日はいよいよ前哨戦だねー。昨日もらったメンバー表の通りだと、先鋒がルフト君、中堅がナディアちゃん、そして大将がリダン君であってるかな?三人とも頑張ってねー。他のみんなもちゃんと三人を全力で応援してあげてね。それともし、三人の中で体調が悪い人がいたら今言ってね。理由があれば、まだメンバーの変更もできるから」


 ミールは教室に入るなりいつも通りの挨拶をし、そのまま今日の前哨戦のメンバーを確認する。


「私は大丈夫よ」


「俺も問題ありません」


 ナディアとルフトが体調に問題がないことを申告すると、ミールは少し頷き、そのままリダンに対して視線を向けた。


「リダン君も大丈夫かな?」


「問題ない」


 ミールに問われ、リダンはぶっきらぼうに返事をする。ミールからの感情は初めて受けたが、他の人間と同様にリダンに恐怖を抱いているようだ。だが、少しだけ肯定的な感情も混ざっている。その感情の正体はわからないが、どうやら全面的に嫌われているわけではないらしい。


「みんな大丈夫みたいだね。それじゃあこの後、前哨戦の会場に移動するんだけど、その前に今日のスケジュールについて説明するね。まずは今日のメインである前哨戦について。前哨戦はここから少し歩いたところにある、学園が所有する闘技場で行われるよ。3クラスの総当たり戦になるわけだけど、戦う順番はこの後で代表者にくじを引いてもらって決めることになるよ。予定では、10時から12時まで第1試合、その後に1時間の休憩を挟んで、13時から15時まで第2試合、15時半から17時半まで第3試合だね。前哨戦が終わった後は、1度この教室に戻ってから少し連絡事項を話したあと、18時から22時まで3クラス合同で懇親会があるよ。この懇親会については前哨戦が終わった後に詳しく説明するね。ここまでで何か質問はあるかな?」


 ミールが話に一区切りつけたところでクラスに問いかける。するとジークが手を上げた。これもいつも通りの光景って感じだな。


「他クラスが前哨戦で戦っている間はどうすれば良いのでしょうか?」


「この後説明しようと思ってたんだけど、他クラスが戦ってる間はそれを観戦してもらうことになるよ。ちなみに、自分たちのクラスが戦ってる時も前哨戦に出ない人は観戦になるね。闘技場には観戦スペースがあるからそこから観戦できるよ」


「選手以外の人は観戦しかできないのですか?例えばアドバイスを送ったりなどはできますか?」


「近くで戦いを見ながらアドバイスを送るのはできないね。戦うスペースにはマナ障壁が張られるんだけど、危険だから選手以外はそこに入れないようになってるんだ。だけど、観戦スペースからは何を言っても自由だよ。もちろん誹謗中傷なんかはダメだけど」


「わかりました。ありがとうございます」


「質問のついでにくじを引く代表者も決めちゃおっか。ジーク君でいいかな?」


「僕は問題ありません」


「反対の人はいるかな?いないならジーク君で決定しちゃうね」


 教室からは当然反対意見はでなかった。まあ、くじ引きをするだけだしな。それにジークはこの2日間は中心となってクラスをまとめてきた。人望も他の生徒よりあるだろう。


「それじゃあ次は、今日の前哨戦のルールとか選手について。このプリントにまとめてあるからとりあえず配るね」


 ミールは持ってきていた荷物から15枚のプリントを取り出し、一番前の席の生徒に3枚ずつ渡す。そのまま一人1枚ずつ取り後ろへと渡していき、全員にプリントが行き渡る。前の人間がプリントを渡してくるタイミングで少しだけ感情が刺さってくるからこの方式はできればやめてもらいたい。


「まず選手についてだけど、キスキルレッドからは先鋒にラース・ドメイン君、中堅にアース・ドメイン君、大将にアイゼン・キスキル君だね。トリスカーナイエローのほうは、先鋒にレオンハルト・コーデック君、中堅にメリア・モノクロームちゃん、大将にミスト・アーケディアちゃんだよ」


 メンバーに関しては、昨日ルフトやジークが話していた人間が出てきたな。効果はあまりないかもしれないが、昨日やっていた対策が少し効いてくるかもしれない。オレは実際に戦うわけじゃないからあまり関係ない話ではあるが。


「ルールに関してはそこまで厳しいものはないよ。各クラス1対1で三人の勝ち抜き戦。戦い方は自由だね。魔法を使っても、肉弾戦をしてもいいし、一応武器の持ち込みも許可されてるよ。使う人がいるかは分からないけどね。ただ、今回は魔道具の持ち込みは禁止だよ。勝敗は、選手が降参するか、一定以上のダメージを受けた場合に決まるよ。試合では魔道具を使うから、よっぽどのダメージを受けない限りは大怪我を負う心配はないから安心して戦ってね。戦うフィールドは半径40mの円形のフィールド。選手の初期位置は壁から20m、選手同士は40m離れた地点で、始まりの笛と共に試合開始になるよ。何か質問はある?」


 今回の問いかけには誰も手を上げなかった。まあルールに関してはかなりシンプルだしな。試合で使う魔道具というのは少し気になるが。


「じゃあ前哨戦に関する説明は以上だよ。これから闘技場に移動するからついてきてね」


 ミールが教室を出て行き、ジークを始めとしてクラスメイトは次々と教室を出て行く。クラスメイトが全員出て行ったところでリダンは席を立ちその後を追っていく。ただ黙ってついていくのも暇なので、リダンで暇つぶしでもするか。


(そういえば、対戦相手の中で知ってる奴はいるのか?)


(アイゼン・キスキルに関してはいくつか噂も聞いているが、他は全く知らんな)


(そのアイゼンって奴は強いのか?昨日の話では結構なマナを持っているらしいが)


(そいつがどれほどの実力を持っていようと興味はないな。多少やる奴だろうと雑魚は雑魚だ。あの女のようにな)


(意外と苦戦したりしてな)


(ありえない話だが、それならそれで楽しめるというものだ)


(やっぱリダンって戦闘狂だよな)


(貴様にわかったような口を利かれると癪だが、否定はしない)


(どうせ退屈な前哨戦なら、賭けでもするか?)


(賭けだと?)


(リダンがそのアイゼンって奴に苦戦するかどうか。退屈凌ぎには丁度いいだろ)


(賭けになっていないだろう。それとも貴様は、本気で俺が雑魚に苦戦するとでも思っているのか?)


(まあ本気では思ってないが、0%ではないと思ってるぞ。まあ賭けの内容が納得いかないなら変えてもいい。あのナディアって女とアイゼンって奴が当たった時の勝敗とかどうだ?)


(今度はあの女か。貴様、やたらとあの女の肩を持とうとするな?何が目的だ?貴様は何がしたいんだ?)


(昨日も言っただろ?リダンにとって悪いようにはしない。むしろ今後リダンの為になるはずだ。少し説明するなら、少しでも過ごしやすい環境を作りたいってところだな)


(なるほどな。オレにとっては余計なことだが、今は一応納得しておいてやろう)


(それで?賭けはどうするんだ?)


(内容についてはそれでいい。それで、何を賭けるつもりだ?)


(そうだな。オレが勝ったら、今後はオレに関して詮索をしない。リダンが勝ったらオレが隠していることを教えるってのでどうだ?)


(隠し事をしていることを認めたな。まあ分かっていたことだが。いいだろう、その条件で乗ってやる。どうせ詮索したところで貴様ははぐらかすだけだしな)


(そうこないとな。ちなみにどっちに賭けるんだ?)


(貴様が決めればいい。俺は雑魚同士の勝敗自体には興味はない)


(じゃあ、オレはアイゼンが勝つ方に賭ける)


(意外だな。あの女が勝つ方に賭けると思っていたが)


(マナの量は同じくらいらしいからな。ならマナの制御が上手そうな方に賭けるほうがいい。あのナディアって女は制御に関してはまだまだ未熟だからな)


(まあどちらでもいいが。俺が勝ったら貴様の本当の目的を話してもらうからな)


(隠し事はあるが、本当の目的なんてないんだけどな)


 実際のところ、オレはリダンを使って何かしようと思っていない。リダンに刺さる悪感情を緩和させるという目先の目的はあるが、それ以外には何もない。割と今は現状に身を委ねている状態だ。

 そもそも、オレは自分が何をしたいのかわからない。施設にいた頃はただただ施設から逃げ出したかった。自由な生活というのに憧れもした。だが、実際に自由を手にしても満たされた感覚はない。自由になった当初は少しだけ心躍ることもあったが、今は特に大した欲求もない。

 強いて言えば、リダンの体じゃなくて自分が好きにできる体が欲しいくらいか。それも自分の元の体が消えたから難しいだろう。一応は新しい体を手に入れる方法も思いついてはいるが、まだ仮説の段階だし実行するにも色々と足りないものがある。

 オレは何がしたいのだろうか。オレは何をすれば満たされるのだろうか。自問自答しても答えなんて出ないが、1つだけ確かなこともある。それはこの学園でこの先どうなっていくのかを少しだけ楽しみにしているということだ。一応今は、それが目的と言えるかもしれない。

 まあ今はオレの目的についてはっきりとさせる必要はないか。賭けの結果がどうであれ、オレはリダンに対して全てを話すつもりはない。少しだけ情報を開示するだけだ。リダンだってオレが全てを話すとは思ってないだろうし、それをわかっているからあまり詮索もしてこない。

 つまり、この賭けは結局どっちが勝ってもあまり大差ない。オレが最初に言ったように、ただの退屈凌ぎにすぎないということだ。


 そうこうしているうちに、闘技場へと着いていた。建物自体がかなりでかいから、その存在自体は以前から確認できていたが、これが闘技場だったことは今知った。

 ちなみに、オレが知っている限りだとこの建物は学園で3番目に大きい。1番大きい建物は小さな山くらいの大きさがある。何に使うのかはまだ分からないが。2番目に大きい建物は図書館だ。あの大きさなら蔵書数も結構期待できる。

 しばらくミールの後、正確にはミールについていくクラスメイトの後をついていくと開けた場所にやってきた。円形の大きいフィールドがあり、その真ん中には訓練場で見た魔道具が設置してある。そして、2階にはいくつもの席が並んでいる。ここがさっき言っていた前哨戦のフィールドだろう。

 フィールドには既に30人ほどの人間が居た。引率の教師らしき人間もいるからおそらくは別のクラスの人間だろう。


「うちのクラスが最後だったみたいだねー。待たせてごめんね」


「時間内だから問題はないさ。全員そろったようだし、早速始めよう」


 ミールの他の教師も耳が尖っている。どうやら教師は全員ロイヤ族の人間らしい。三人の教師は前の方に集まり、そのうちの一人、先ほどミールが話しかけた男が話し始めた。


「では、これより本年の前哨戦を開始する。今日はエルトシャン様も見ていらっしゃる。各クラス全力で臨むように。教室で説明を受けたと思うが、代表者はくじを引きに前に来てくれ」


 そう言われ、ジークが前に出る。他クラスからは、落ち着いた雰囲気の男と、ロイヤ族で気怠そうな女が代表者として出ていた。


「このくじにはⅠ、Ⅱ、Ⅲの番号が振ってある。第1試合は1番のクラスと2番のクラス、第2試合は1番のクラスと3番のクラス、第3試合は2番のクラスと3番のクラスの戦いになる。では引いてくれ」


 ジーク達はそれぞれくじを持ち、一斉に引き抜いた。ジークの手には3番、ロイヤ族の女の手には1番、そしてもう一人の男の手には2番が握られている。


「ではくじの結果、第1試合はトリスカーナイエロー対キスキルレッド、第2試合はトリスカーナイエロー対シュトラールブルー、第3試合はキスキルレッド対シュトラールブルーとなった。トリスカーナイエローとキスキルレッドの選手は選手控室へ、それ以外の生徒は観戦席に移動するように。移動は各クラス、担任の指示に従って動いてくれ」


 ミールはクラスの前に戻ってきて、そのままオレ達を観戦席まで先導する。

 しばらく歩いて観戦席までやってくると、ミールが説明を始める。


「ここからここまでがシュトラールブルーの席だよ。この範囲ならどこに誰が座っても自由だからね」


 ミールが示した範囲には大体50個くらいの席がある。各々が自由に席についたら大分間が空くな。ちなみに、闘技場全体では500席くらいある。なにかのイベントで使う予定なのか、あるいは首都だったころの名残かは不明だ。

 リダンは周りの様子を気にすることもなく、一番後ろの隅の席に座った。他のクラスメイトも特に席を決めて座ることはしないようで、各々が自由に座っている。一人で座るものもいれば、大勢で固まって座るものもいた。といっても、大体はジークの周りに座るようだ。ジークの周りにはナディア、イヴ、エリス、ルフト、カノンと数人がいた。


 そろそろ第1試合が始める時間だ。他のクラスの実力者はどんな奴なんだろうか。とりえあず第1試合はリダンが何かする心配もないし、ゆったりと見られるな。

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