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感情希薄なモルモットは二重人格者  作者: 識友 希
第2章「学園入学編」
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第14話「第2王女はわがままな天才少女」

 アストラム学園に入学してから一晩明けた今日、オレは今シュトラールブルーの教室の前に立っていた。昨日の出来事のせいで、どうにも教室に入るための一歩が重い。

 現在の時刻は9時前。そろそろチャイムが鳴る時間だ。いつまでもこうしているわけにはいかない。

 覚悟を決めて扉を開け、教室に足を踏み入れる。昨日と同様に、数人の視線がオレを捉えた。昨日と同じじゃないのは、刺さってくる視線が痛いということ。昨日1日でリダンは随分と嫌われてしまったものだ。

 オレは黙って自分の席に着く。教室全体を一度見回したが、ナディアはちゃんと登校していた。もしかしたら、2日目からさっそく不登校になるかとも思ったが、その心配はなかったらしい。まあ、後ろ姿でもわかるくらい、全く覇気が感じられないが。


 ほどなくしてチャイムが鳴り、ミールが教室にやってくる。


「はーいみんなおはよー。ちゃんとみんないるみたいだねー」


 ミールは教室に入るとすぐに全員の出席を確認する。昨日の感じからしてすぐに出て行く可能性も考えていたが、ミールは教壇に留まり言葉を続けた。


「昨日はどうだったのかな?前哨戦の準備は上手くいってるー?」


 関与しないとは言っていたが、一応状況確認くらいはするらしい。まあ学園側からしたら、自由にさせているとはいえ、何も準備してませんということになったら困るだろうしな。


「昨日はクラスの全員で自己紹介をした後に、訓練場に移ってそれぞれの能力について披露し合って、メンバーについて話し合いました」


 ミールからの質問には、ジークが席から立ち上がり答えた。


「そっかそっかー。上手くできてるなら何よりだね。ちなみに、メンバーはもう決まったのかな?」


「一人は確定しているのですが、残り二人は仮決めの状態です。今日は残りのメンバーの確定と、当日の作戦について話し合う予定です」


 昨日リダンがめちゃくちゃ雰囲気を悪くした後も、ジークが上手くまとめてメンバー決めを進めていたみたいだ。


「いいねいいねー。クラスもある程度上手くまとまってるみたいだし、明日の前哨戦は期待しちゃおうかな」


「はい。クラスで協力して必ず勝利してみせます」


「意気込みは十分だね。そうだ、私は関与しないとは言ったけど、相談なんかには全然乗るから気軽に声かけてねー。現状は必要なさそうだけど」


「そんなことありません。ありがとうございます」


「それじゃあ今日は以上かな。メンバー表はちゃんと持ってきてね。じゃあまた明日ねー」


 そう言ってミールは教室を去る。やはりかなりあっさりしている。それに立ち去るのも速い。相談に乗るとは言っていたが、本当に乗る気はあるんだろうか。


 ミールが立ち去った後、これまた昨日と同じようにジークが立ち上がる。


「それじゃあ今日も訓練場で準備を進めて行こうと思うけど、いいかな」


「さんせー!」


「そうですね。昨日は途中で終わってしまいましたし、それがいいと思います」


 ジークの問いかけに、イヴと一人の女子生徒、確かエリスだったか。その二人が賛成する。するとすぐに他のクラスメイトからも賛成の声が上がった。


「それじゃあすぐに移動しよう」


 クラスメイト達はそのまま教室を出て行く。ナディアは心ここにあらずと言った感じだったが、ジークとイヴに声をかけられてゆっくりとクラスメイト達の後を付いていく。

 ジークとイヴはナディアが教室を出て行ったのを確認してからオレの方にやってきた。


「リダン君。できれば今日は参加してもらいたいんだけど、駄目かな?」


「オレは興味はないと言ったはずだが?」


 正直、オレとしては拒否する理由はないし、なんならクラスメイトがどの程度やれるのかは多少興味がある。だが、リダンの振りをする以上は断る姿勢を見せることにした。


「そう仰らずにお願いします、リダン様。訓練場に来てくださるだけでもいいですから」


「僕らを助けると思ってお願いできないかな?」


「...。まあオレが出る以上は雑魚どもに足を引っ張られるのは勘弁だからな。参加はしないが、訓練場には行ってやる」


「ありがとう!」


「ありがとうございます」


 ジークとイヴが感謝しながらオレに少し微笑みかける。イヴはともかくとしてジークはこの微笑みで悪感情をいくつも刺してくるから気味が悪いな。まあ内心を隠しながら外面をここまで上手く繕えることは素直に称賛に値するが。

 オレが席を立ち教室の出口へと向かうと、二人はすぐ後ろをついてきた。訓練場に向かうまでの間に、昨日のことでも聞いておくか。


「さっき、残りのメンバーも仮で決まっていると言っていたな。誰だ?」


「ダルク君とルフト君だよ。マナの量と、その扱いの上手さで決めたんだ」


「あの女は出ないのか?」


「あの女って、ディアの事かい?」


「それ以外に誰がいる」


「ディアは、昨日の事が相当ショックだったみたいでね。ずっと上の空なんだ。あんな状態じゃ試合になんて出られないよ」


「そうか」


「もしかして、ディアの心配をしてくれてるのかい?」


「そんなわけがないだろう。何故オレがあんな弱者の心配などしなければならない」


 心配はしてないが、オレとしてはナディアのことは結構気にかけてはいる。ナディアに対してどう接触するかは悩みどころだからな。いい機会だし、ジークからナディアについて探れるだけ探ってみるか


「そういう貴様はどうなんだ?馴れ合うのが好きな貴様にしては昨日からあまり心配していないように見えるが」


「っ!驚いたよ。周りに興味が無いように見えて、良く見てるんだね」


「貴様がわかりやすいだけだ」


「確かに、僕は今のディアをあまり気にかけていない。むしろ、今回のことは良かったと思ってるんだ」


 まさか心配していないどころか、今回リダンがナディアを潰したことについて肯定的にとらえているとは思わなかった。ジークとナディアは昨日1日見た限りでは仲が悪いわけようには見えなかったから、何か事情がありそうだ。

 ぜひ知りたいところだが、この事について深く聞き出すのは少しリスクがあるかもしれない。他人の事に興味を持って聞くなど、リダンらしい行動とは言えないからな。

 だが、そう思っていた所に救世主が現れ、ジークへ質問する。


「ジーク様とナディア様は、もしかして上手くいっておられないのですか?」


「いいや、僕はディアの事は大切に思っているよ。僕が良かったといったのは、今回の事がディアが成長するきっかけになってくれるんじゃないかと思ったからなんだ」


「成長、ですか?」


「ディアは天才なんだ。マナの量は500年前に王国が始まって以来一番だし、魔法を使うセンスもずば抜けてる。ほとんど何も教えなくても自分で勝手にすごい魔法を使えるような子なんだ。一部じゃ、水属性の魔法を使う天才ってことで、四英雄のエスト・シュトラール様の生まれ変わりだなんて言う人もいるくらいだ。だけど、僕を含めた家族や世話係の人達が才能のあるディアを褒めるばかりで全然叱ってこなかったせいで、ディアは自分勝手でわがままで、周りを見ない、プライドの高すぎる子になってしまった。ディアは、魔法に関しては自分が一番じゃないと気が済まないんだ。だから、周りの人間に自分の魔法が一番なんだと認めさせようとして、それで問題になったことも何度かある。僕はそんなディアの事も大切だけど、このままじゃ駄目だとずっと思っていたんだ。だから、今回のことが自分を見つめ直すきっかけになってくれればって思ってるんだよ」


 なるほどな、あのナディアという女がどういう人間なのか少しだけ理解できた。

 ナディアには、今まで自分を馬鹿にするような人間など周りにはほとんどいなかった。いたとしても、昨日そうしようとしたように力で思い知らせてきた。

 だが、リダンに圧倒的な力で潰された。自分はもしかしたら思っていたよりもすごい人間ではなかったのかもしれないという現実を、今は受け入れられずにいるのだろう。

 それにしても、あの魔法は独学だったのか。ほぼ自力で第8位の魔法が使えるようになるとは、リダンには及ばないにしてもかなりの才能かもしれないな。ジークから語られたナディアの話の中で、この情報が一番役に立つかもしれない。


「そうだったんですね。ジーク様のお考えは理解できました。ですが、ナディア様が立ち直るために私たちは何もできないのでしょうか?」


「ディアを心配してくれてありがとう、イヴさん。でも今はそっとしておいてあげてほしい」


「...そう、ですね。わかりました。ナディア様のことを良く知っているジーク様がそういうのであればそうします」


「リダン君も、ディアを心配してくれてありがとう」


「オレは別にあの女の心配などしていない」


「それでもありがとう」


「ふん」


 ここまで話をしたところで丁度、訓練場にたどり着いた。中に入ると、クラスメイト達は中央の戦闘場で何か話していた。戦闘場の外の観戦スペースを見るとナディアがおり、隅の方で一人でぼーっとしている。


「オレはその辺りで見ている」


「わかった。何かあったら声をかけるよ」


 オレは訓練場に着いてすぐに、ジークとイヴから離れる。そのまま、観戦スペースの方へ行き、ナディアから少し離れた所に腰を下ろした。

 イヴとジークはクラスメイト達と合流し、何かを話し始めた。


(貴様、何を企んでいる?)


 リダンが珍しくオレに話しかけてきた。最初の状況が理解できていなかった頃はリダンから話しかけてくることもあったが、落ち着いてきたこの数日間はリダンから話しかけてくることはほとんどなかった。


(気になるのか?今まではオレが何をしてもあまり興味なさそうにしてたのに)


(当たり前だ。貴様がなにかやらかせば俺の恥だからな。勝手なことはするなよ)


(前にも言ったが、リダンの迷惑になるようなことはしないさ。安心してくれ)


(どうだかな。もし俺が被害を被るようなことがあれば、生きていられると思うなよ)


(はいはい。気を付けるって)


 リダンは不満そうだったが、それ以上なにか言ってくることは無かった。初めて会った時からそうだが、リダンは結構割り切りがいい。不満はあるだろうが、オレがリダンの体を動かしていることに関しても、どうにもできないことだと分かるとあまり文句も言ってこなくなったし、オレのやることも基本的には黙ってみている。

 今回は、オレが何をしようとしているのかわからなくて不気味だったから聞いてきたのだろう。


 大体2時間が経過し、クラスメイト達の話し合いは盛り上がっていた。ある者は魔法を使い、ある者はその魔法を受け、ある者はその魔法を見て話している。恐らく、今オレやナディアに意識を向けている奴はいないだろう。

 オレはナディアの様子を横目で確認する。さっき見た時と同じように、ナディアは心ここにあらずといった感じでぼーっとしている。

 さて、どうしようか。接触するならば今が一番良いだろう。昨日から色々と作戦を考えて、さっきジークから聞いた話でどうするべきかは固まったが、どうにも行動に移すのが躊躇われる。

 ナディアを立ち直らせるには、リダンによってへし折られたプライドを回復させてやればいい。ジークが期待している方向とは少し違う立ち直りになるかもしれないが、オレが気にすることじゃない。ただ、へし折った本人がそれをするのは中々ハードルが高い。

 まあ、なにもしなくても状況が好転することはないしやってみるか。失敗したところでリダンには失うものはないしな。それをオレが言うのは自分でもどうかと思うが。


 オレはさりげなく立ち上がり、ナディアの近くまで移動した。クラスメイトからはできるだけ見えにくい位置をとり、意を決してナディアに話しかける。

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