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感情希薄なモルモットは二重人格者  作者: 識友 希
第2章「学園入学編」
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第12話「リダンとクラスメイト」

「それじゃあ、まずは提案した僕から自己紹介させてもらうね。僕はシュトラール王国の第3王子、ジーク・シュトラール。マナの量にはあまり自信はないけれど、精一杯頑張るつもりだよ。それと、ここでは王族としてではなく、ただの一人のクラスメイトとして接してほしい。これから1年間、みんなと仲良くなりたいと思っているよ。よろしくね」


 ジークは第一印象の通り、穏やかで爽やかな性格をしているようだ。

 ジークの自己紹介が終わると、近くにいたナディアやイヴを中心として拍手が起こる。


「じゃあ、次は私ね。私はシュトラール王国第2王女、ナディア・シュトラール、さっき素晴らしい自己紹介をしていたジークお兄様の妹よ。私は基準値の59倍のマナを持っていて、適正の水属性は第8位の魔法まで使えるわ。私を称えてついて来るなら、卒業試験での勝利を約束してあげるわ!

 そして才能に恵まれた私は天啓まで持っているの。私は触れたもの流れるマナを鮮明に感じることができるのよ。すごいでしょ」


 ナディアは自信満々に自己紹介を終えると席に座り直す。その直後にジークの時と同様に拍手が起こる。この前あった時も言っていたが、59倍のマナとか第8位までつかえるとかのフレーズが気に入っているんだろうか。まあ、天啓を持っているのは素直にすごい才能だ。

 ナディアの自己紹介に対する拍手が止んだあと、クラスの何人かが周りの様子を伺う。次は誰が行くべきがと牽制しあっているんだろう。まあ、王族の後に行くのはなかなか勇気がいるかもしれない。

 そんな牽制のし合いを破ったのはイヴだった。


「私はリグレクト侯爵家の長女、イヴ・リグレクトです。マナは基準値の18倍ほどで、属性は地属性です。この学園でお友達をたくさん作れたらいいなと思っています。よろしくお願い致します」


 イヴが自己紹介を終え、一礼する。その後に続くように、一人の女子生徒がピンクの長いツインテールを揺らしながら立ち上がった。


「あたしはミューラー侯爵家の三女、エリス・ミューラー!マナは基準値の10倍くらいで属性は風だよ。あたしは強い人が好き。だから、マナの多い人たちにはすごい活躍を期待してるから!」


 そう言ってエリスと名乗った生徒は席に座る。今までで一番元気な自己紹介だったな。それに内容もなかなかパンチがあった。強い人が好きで、そういう人たちには期待している、と。相手によっては反感を買ってもおかしくない内容だ。お前は何様なんだと。

 その後に立ち上がったのは見知った顔だった。と言ってもオレ自身はそいつのことを詳しく知っているわけではないが。立ち上がったのはリダンの義理の兄、ルフトだ。


「俺はブラックヘロー伯爵家の長男、ルフト・ブラックヘローだ。マナは基準値の25倍、属性は地だ。この学園には魔法を極めるために来た。皆と共に高め合っていけることを期待している」


 ルフトの自己紹介が終わり、また拍手が起こる。その拍手が止むと、ルフトは右側に座っていた女子生徒の手を引いて、席を立たせ、軽く背をたたく。


「お前の番だ」


「は、はい。わ、私はカノン・ノアールです。こちらのルフト・ブラックヘロー様の従者をさせてもらっています。マナは基準値の27倍で、属性は炎です。...。人と話すことはあまり得意じゃありませんが、仲良くしてもらえると嬉しいです。あと、ルフト様とも皆さん仲良くしてくれるともっと嬉しいです」


 カノンが恥ずかしそうにしながら自己紹介を終え、席に着く。あのカノンという従者は主人をとても慕っているみたいだな。

 そのカノンの後に続いたのは一人の男子生徒だった。


「ボクはトリオンロード伯爵家の次男、ダルク・トリオンロードだよ。マナは基準値の30倍。属性は風。ボクはマナにとても興味があってこの学園に入学したんだ。将来はマナに関する研究をしたいと考えているよ。みんなとも是非マナの可能性について語り合いたいな」


 ダルクと名乗った男子生徒はジークと同じように穏やかな性格の男子生徒のようだ。それにしても、マナに関する研究と聞くと、施設のことを思い出す。まあ、こいつはかなり純粋な気持ちでマナに興味があるみたいだし、性格も穏やかそうだしな。そんなに気にすることでもないだろう。


 その後もクラスメイトの自己紹介が続き、リダン以外の14人の自己紹介が終わり、遂にリダンの番がやってくる。クラスメイトの視線はリダンに集中している。机に書いてある名前から知ったのか、はたまた元から知っていたのか、視線から伝わってくる感情は痛々しく伝わってくる。数が多すぎて、どれが誰のどの感情なのかいまいち判断できない。

 リダンが一向に自己紹介を始めない様子を見て、ジークが声をかけてきた。


「それじゃあ、最後にキミ。自己紹介をお願いできないかな。無理にとは言わないけど」


 そう言われ、リダンはジークに視線を持っていき口を開く。


「...。リダンだ」


「ありがとう、リダン君。これで全員の自己紹介ができたね。これからミール先生の言っていた訓練場に向かおうと思うんだけど、反対の人はいるかな?」


 その場にこの提案を反対する者はいなかった。リダンを除いて、だが。


「俺は今回の前哨戦とやらに興味はない。貴様らで勝手に決めてくれ」


 リダンがそう言うと、ジークは困った顔をする。クラスが割とすぐにまとまりそうだったところにこれだ。無理もないが。


「できれば、リダン君も含めて全員で協力してやっていきたいと思ってるんだけど、やっぱりダメかな?」


「俺がいなくても代表者を決めることに問題はないだろう」


「そっか、仕方ないね。でも、気が変わったらすぐに言ってほしいな」


 ジークは今は交渉を諦めようとしたが、そこに横から口を出すものがいた。


「ちょっとあなた、お兄様がお願いしてるんだから黙って付いて来なさいよ。それに、この前の件に決着をつけるいい機会だわ。私の素晴らしさを教えてあげるから訓練場に来なさい。拒否権はないわ」


「あの一件のことは特別に許してやる。俺が貴様らの言うことを聞いてやる理由はない」


 リダンはどうやら一昨日の出来事をもう気にしていないらしい。当時は結構怒っている様子だったが、やはりリダンにとってはあのくらいのことは日常茶飯事ということなのだろう。時間が経てばどうでもよくなる。


「なによ、あの時はやる気だったくせに。もしかして、今になって怖気づいっちゃった?悪魔の子なんて呼ばれてるけど本当は大したことないのね」


「貴様。その名で呼ぶなと言ったはずだが?」


「撤回して欲しければ私と戦いなさい。もしあなたが私に勝てたら撤回してあげる。絶対にありえないでしょうけど」


「...。いいだろう。これ以上雑魚に調子に乗られるのも腹が立つ。相手をしてやる」


「なっ!また私を雑魚と言ったわね!絶対に許さないから!」


 その様子をクラスメイト達は怯えた様子で見ている。ただでさえ目の前にあのリダン・ブラックヘローがいるというだけで怖いのに、そのリダンをナディアが怒らせたのだから当然だろう。

 だが、その様子を黙ってみているだけの者だけではない。この争いを止めようとする人間も当然いる。


「待ってディア。そんな風に仲間同士で争うのはよくないよ」


「止めないでくださいお兄様。それに、このリダン・ブラックヘローは一度痛い目に合わせておかないと今後も困るでしょう?」


「そんなことはないよ。人にはそれぞれの考え方がある。嫌がっている人を強制的に従わせることはできないよ」


「そうです。お二人が争う必要はないと思います。リダン様も、一度冷静になってください。」


 ジークとイヴが間に入って二人の争いをやめさせようとする。だが、当人たちはもう止まることはないだろう。


「貴様らは黙っていろ。なに、すぐに終わらせる。他の、俺に敵対していない奴らに迷惑をかけるつもりはないし、怪我をさせないように手は抜いてやる」


「なっ、私相手に手を抜くですって!?...ふぅ、ふぅ。その余裕がどこまで持つのか楽しみだわ」


「先に訓練場に行っている」


 そう言ってリダンはこの場を去り訓練場に向かう。リダンはかなり苛立っている様子だ。


(相当苛立っているな)


(前にも言っただろう。雑魚に調子に乗られるのが一番ムカつくんだ。貴様以上に俺を苛立たせたのはあいつが初めてだがな)


(さりげなくオレをディスるな。ていうか、オレはそんなに調子に乗った覚えはないけどな)


(貴様は俺をおちょくるような態度を取っているだろう)


(あれくらいはちょっとしたイジりというか、仲良しの証って感じだろ?)


(貴様と仲良くなった覚えはない)


 そんな会話をしながら、オレはこの状況を外野として楽しむ一方で、頭を抱えてもいた。

 現状に身を委ねて先のことを考えないのであれば、今の状況はなかなか見ていて楽しい。だが、今後の学園生活を考えるのであれば今の状況は最悪だろう。今後の俺のツンデレ作戦でカバーできる範囲で着地してくれるといいが。

 まあ、『悪魔の子』という悪名はリダンにとっては地雷みたいだからな。それをあれだけ連呼されればリダンが苛立つのも無理はない。


 リダンが訓練場に着き、しばらく待っているとクラスメイト達が入ってくる。どうやらリダン以外の全員で訓練場に来たみたいだ。


「もしかしたら逃げたんじゃないかと思ったけど、ちゃんといるみたいね」


「何故俺が貴様のような雑魚から逃げなければならない」


「もうあなたに言い返すのも疲れたわ。さっさと始めましょう」


 訓練場には中央にある正方形の戦闘場と、周囲に休憩スペース兼、観戦スペースがあるようだ。戦闘場の真ん中には、マナを流すことで使用できる『魔道具』というものがあり、それを操作することで色々と設定をいじれるらしい。


「これ、どうやって操作するのかしら」


「知らん。勝手にしてくれ」


「そうするわ。とりあえず、複雑な設定はなしでいいわね」


 リダンはその問いに無言で返す。気付くと、リダンとナディア以外のクラスメイトは観戦スペースに移動している。そこから、ジークが声をかけてくる。


「くれぐれも、二人とも怪我のないようにね」


「わかっています、お兄様。安心して見ていてください」


 設定が終わると、戦闘場の周辺にマナ障壁が現れる。観戦しているものや休憩しているものに攻撃が飛んでいかないようにする、訓練場のシステムだろう。


「いつでもかかってこい。雑魚なりに自慢の魔法とやらを見せてみるがいい」


 それを合図に、ナディアが魔法を発動しようとする。

 どうか祈ろう。リダンがやり過ぎてしまわないことを

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