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4話

「道路がそのまま街の中につながっているけど入っていいんだろうか」

「なんで? 別にみんな勝手に入っているじゃん」

「こういう世界の街っていくつかあったけど大概壁に覆われているだろ。この街にはそれがないし、門番みたいな人もいないければ人頭税みたいなものも取れない。さすがに社会システムまでは現代の真似できないだろ?」

「とりあえずその辺の人にきいてみようよ」


そう言ってエリナは立ち止まる。


「ん? 聞きに行くんじゃないのか?」

「うん」

「じゃあ行こうぜ」

「うん」


笑顔で元気のよい返事とは裏腹に、エリナの足は一歩も動こうとしない。


「なんで動かん?」


なんとなく察して呆れ顔でエリナを見つめるケイトに、エリナはもじもじとしながら返す。


「わかってるくせにぃ、だって、恥ずかしいじゃない?」

「カマトトぶってんじゃねえぞ! パッシブスキル《コミュ障》発動してるだけじゃねえか」


エリナはオタク女子だ、しかも中学で友達ゼロの。

ただ、これまでの修復においては異世界=ゲームの世界、的な認識なのか、いままでは特にこういったことは起らなかった。


「仕方ないじゃない! 現代よ! しかも外国! ニューヨーク! 旅行できてその場で話しかけられる? 無理でしょ、ああ無理ね」

「開き直りやがった」


なんでこいつは感情が高ぶるとテンションあがって大声を出すんだ、若干辟易しながらケイトは耳から手を離す。

こうなってしまってはエリナはテコでも動かない、放っておけば死ぬまでその場でポツンとしているだろう。


「わかったよ、行ってくるから動くなよ」

「頼まれたって動きませーん」


ぷいっとケイトから顔をそむけエリナスタンバイモードに入った。


「まあいい、適当に行くか」


アスファルトを歩き、最初のビル、大通りの入り口まで差し掛かる。

人通りはまばら、ニューヨークの町並み、を思い浮かべるとひどく閑散とした印象を受ける。

入り口の左側には緑色の看板のいわゆるスターバッ○スを模したと思われるカフェがあり、カフェテリア部分では、紙コップで数人の男女がコーヒー(かどうかはわからないが)を飲んでいた。

ただ服装は中世ヨーロッパさながらで、入り口に一番近いテーブルの傭兵らしき男二人は、皮で出来た鎧に腰から剣を携えている。

一段高い場所にあるところには貴族らしき女性が、隣に執事らしき燕尾服を着た男を侍らせ、青を基調とした、金の刺繍でキラキラしたゴージャスなドレスでコーヒーを飲んでいた。

一言でいうとシュールだ、ケイトはそう思った。

服装が中世なので、現代のスッキリしたデザインに見事にマッチしていない。


とりあえず、ちょうど目の前の通りを歩いてきたシンプルな麻の服を着た平民らしき人に話しかける。


「へ、ヘロー」


街並みが街並みなのでなぜか英語で話しかけてしまった。

もっとも英語で返事が返って来てもケイトはそれ以上の会話を続けられないのだが。


「!$&%(」


はい、なんでしょうか、という意味だろうかとケイトは推測する。

特に嫌がられているわけではなさそうだ、だが全くわからん。

言葉が通じない可能性は考えていたが、まさか日本語どころか英語ですらないとは。


そこでふと思いつく、もしかして何かしら言語理解のための汎用スキルはないのだろうか、と。


「システムアナライズ」


人目があるので若干恥ずかしいのだが背に腹は変えられない。


言語、で検索をかけると、旅人のスキルに、異言語翻訳というものがあった。

何故かこれは剣術と違いLv10まで取得できる。

特に低レベルに落としておく必要がないのでLv10で取得する。


「あの、これでわかりますか?」

「ああよかった。変な言葉で話しかけられたから言葉が通じていないのかと思った。別の国の言葉も使えるってことはお兄さん外国から来たのかい?」


少し相手の男は警戒するようにこちらを見つめている。

観察されているようだ、とケイトは感じた。


「外国、ではなくもっと南の村から出てきたんだけどここらへんは言葉も違うらしくって」


来た場所をおぼろげに隠しつつ外国ではない、かつ世間知らずでも問題ない設定をアピールをしてみる。

割と外国からだと間者や諜報などを疑われることがある、なのでなるべくその国の人間だが田舎者の世間知らず、という設定を使うことにしている。

これも多くの世界を修復して学んだ処世術だった。


「なんというか、凄い街ですね。都会というのはこういう感じなのですか」


ひとまず軽く探りを入れてみる。


「凄いだろ! ここ3年で前の街が面影もなくなるほど変わってしまったよ。これも新領主のサラディ様のおかげだ。君が田舎出身で街に来るのが初めてなのだとしたらこの凄さはわからねえかもしれねえなぁ」

「なるほど、やっぱり凄いんですねぇ」


田舎者のふりをして相槌を打つ。

それから2,3言街についての感想を交わした後、


「ところで気になっていたんですが、この黒い地面はなんというものなんですか、田舎にはこんなものなくて」


と、それとなくアスファルトについて聞いてみる。

当然ケイトは知っているが、それによってこの街についても見えてくるだろう。


「さあ、なんかこの街をつくり始めた時にある日突然地面が真っ黒になったんだ。最初は薄気味悪くて変な色だなぁって思ってたが、ホコリも舞わないし、泥も跳ねないから便利だなぁって慣れちまった。後からできたこのビルヂング、ってやつにも合ってるしなぁ」


やっぱりか、とケイトは自分の推測が当たっているであろうことを知る。

とりあえず考えをまとめるのは後にしよう、そう決め一旦情報収集に戻る。


「僕ら、着の身着のままでここまで来たんですが、どこか泊まれるような場所とか仕事を募集しているような場所ってありませんか、お金もなくて。ただ田舎で色々やってたんで一通りの仕事はできると思います」

「なら役所に行ってみるといい、丁度いいところに来たな。この街はいま空前の人不足で誰でも市民権がもらえる。すぐに仕事を紹介してもらえるさ。こないだも冷害と重税で村から逃げてきた難民たちがまとめて受け入れられたとこだ。それでもまだ足りないらしい」


とりあえず行く場所はわかったので、ケイトはお礼を言うとエリナのもとに戻った。


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