‐‐1907年、次代への総括‐‐
歴史は勝者による記録の連続である。栄枯盛衰、その勝者は常に入れ替わるとはいえ、語り継がれる歴史の殆どが、勝者に寄り添いながら受け継がれていく。
歴史の勝者となったプロアニア王国とムスコール大公国は、今度は互いの優劣を競うために新たな戦いの局面を展開していく。
かつて大福祉国家として、戦争よりは対話を求めた大公国は、新宰相の下で殺戮兵器の開発に勤しみ始める。一方で、かつて圧倒的な技術力を軍事力に傾けたプロアニア王国は、人類史に永遠に語り継がれる大偉業を果たすために、新天地の開発を進めていく。
時代は人類を焼き尽くす熱波の時代から、遍く大地を包み込む寒波の時代へと移る。この時代の移ろいを、敗者はどのように見てきたのか。
ここに一つの答えがある。エストーラ帝国は敗戦を機に、勝負から降りて平穏の道を進む。両陣営を世界の末端から見届け、国内経済の復興に力を入れた。
そうして一つの時代が終わる。『帝国』と言う国体は静かに滅び去り、その血を受け継ぐもう一つの国家が産声を上げた。
そして、もう一つの敗者がある。国家、自由、誇り、全てを奪われ、プロアニア王国に屈服したもう一つの国家のことである。
無慈悲で際限の無い搾取を受けた彼らの中にも、未だ自国の誇りを選ぶ者があった。そこには、勝者同士の戦いとは異なる、もう一つの戦いがある。大国を飲み込んだ歪な大王国は、その内部から抵抗の兆しが芽生えていることを、今はまだ知る由もない。
これは一つの定めである。時代は勝者によって語られ、勝者は移ろいゆく。それは一つの予言とも、一つの戯事とも取れるのだ。
主な出来事
ムスコール大公国、魔術・液体燃料駆動両立型ミサイル『クライスネ・カーミ』を発明
エストーラ立憲大公国憲法の公布
旧カペル王国内で大規模な飢饉が発生(豊かなる飢饉)