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天使が見たおとぎ話

作者: 雪兎

一話限りの頼まれていた【おとぎ話】です。

「はぁ……はぁ…… っく、はぁはぁ……」



 この世は理不尽だ。

 



 有史から数百世紀、人は栄華を極め人類の叡知は天に輝く星々にも手が届く程だったという。


 そしていつしか【神】のように振る舞い初めた人類は禁忌である【命の錬成】へと手を伸ばし、自らの手で新たな生命を生み出してしまう。

 

 しかし人類の業は新たな命だけでは空き足らず、自らをも【神】とすべく禁忌の先へと手を伸ばし始め、終に永遠の命へと辿り着いてしまたのだ。

 

 こうして人工の神へと進化を遂げた人類だったが、神はソレヲ決して許しはしなかった。


 赤き月から鋼鉄の鎧に身を包んだ四人の天使達を遣わすと、地表へと怒りの業火を放ったのだ。


 当然、人工の神へと進化した人類は抵抗をするが、神より使わされた天使の鎧に触れる事すら出来ずに、英知も、肉体も、その永遠の命すらも、その業火によって焼かれ、全てが灰と成ってしまった。


 そして全てを焼き尽くした天使達は生き残った僅かな人類に、


 「己が業を背負い、限り在る命尽きるまで、自らが生んだ地獄で生きろ、それが贖罪だ」

 

 と告げ、地表に残った緑と水と一部の生命を月へと連れ帰っていった。




 こうして生かされてしまった人類は、空に浮かぶ【青く澄んだ輝きを放つ月】を見上げ、【荒廃し黒く灰た大地】の元、幾世代もの時を地獄の様な環境と


「走れ!! お前達だけでも生きるんだぁぁぁ!! ……うぅっあぁぁぁ」

 

「お父さんぁぁぁぁ!! うぅぅ……」


 【自らが生み出した命】に怯えながら生きている。


 しかし……




 

 

 お母さんを目の前で引き裂かれ、私と兄を逃がしたお父さんは牙で貫かれ、私を庇った兄を食い殺され、それでも生きようとする自分を嫌悪しながら、私は走った。


 走って走って、涙が枯れるまで走った。


 しかし、


「あっ!!」


 目の前に広がる大地の裂目が行く手を遮りられてしまい、引き返そうと振り返るが、


「ヴゥゥゥ」


 黒く伸びた影と、人類への憎悪を宿す唸り声に私は捕まり、


「ごめんなさい……言いつけ守れなかった……」


 枯れた涙と懺悔の言葉を溢した。


 そして黒い影は私へと迫り、家族の血で真っ赤に染まった牙と爪を私へと振り上げる。

 

 生き残った嫌悪から解放された気がした…… 殺された家族の血で殺されるなら許されると思った。


 しかし、


「っ!!」


 大きな地響きが突然鳴り響くと、私の体は宙を舞っていた。


 そして、私の命も狩ろうとしていた黒い影も崩れる地面によって大地の割目へと落下していく。



 この世は理不尽だ。

 

 目の前で家族を奪われ、恐怖の中を生かされ、最後に家族の暖かさを感じる事もできずに大地の中へと落とされて消えていく。

  

 こんな最後は……


「私達は何も悪くない!!」


 大地の割目から映った【青く澄んだ輝きを放つ月】へと、許さないという思いで私は叫んでいた。

 

 

  

 真っ暗な世界が私を包む。


 ああ、私死んだんだ……でも何で真っ暗なんだろう…… お母さん、お父さん、お兄ちゃん、みんな何処なの? 


 私は寂しさの中で叫んだ。


 すると、真っ暗な先に光が伸び、


 お母さん!! それに、お父さんにお兄ちゃんも!! 居るなら何で…… え? 待って!! 行かないで!! ねぇ!!


 光の先に家族が居た。

 しかし、皆は私へと首を振り、拒むように背を向けて去っていく。 

 私は、その背中を「待って」と縋るように叫んで追いかけるが、お母さんも、お父さんも、お兄ちゃんも、私へ振り返る事も無く歩き続け、やがて小さくなっていく背中は光の中へと、


「私を置いて行かないで!!」


 響く私の声だけを残して、光が私を包んでいた。


 そして、


「……何これ?門?」


 光が晴れると私の視界には、銀色に輝く門が映っていた。


 暗闇の中に聳える銀色の門を見つめ、私は吸い込まれるように身を起こし、門の前まで歩みを進めていた。


「なんだろう? 死んだらこんな所を通るのかな?」


 不思議な感覚の中、私は門へと手を伸ばすが、


「冷たい!! ……ぇっ……? なんで?」


 触れた瞬間に指先から伝わる感触に驚いて、手を引きながら声を上げていた。


 だって私は死んだのだから、冷たいと感じるはずは無い。


 そう思って、もう一度扉へと手を伸ばすが、その手からは、生きている、という感触が帰ってくる。


 そんな感触に声が無くなると、体に脈打つ、生きている、という音と振動が私へと追い討ちをかけ、


「何で!!何で私は生きてるの!! 何で……何で私だけ……」


 私は叫ばずには居られなかった。


 私の叫び声と、枯れて出ない涙が、虚空の空間の中に木霊する。

 そして、そんな叫びも何時しか消え去り、無音と生きた絶望だけが残された。


 私は立ち上がる気力も無く、俯いたまま、地面に額を押し当て、何故、何故と自分を責めるしか出来ずにいた。


 しかし、


『生体反応ヲ感知、形状カラ人類種ト断定……エラー発生……解決手段ヲ検索……ロード……ロード――』


 突然門が喋り始めた。


 私は余りの驚きに擦り付けた額を地面から離し、目の前の門を見上げた。


 すると、

  

『解決手段ヲ提示……緊急的措置ヲ実行――コンソール表示……再度生体認証ヲ要求……』

   

 再び門が喋り始めた。


 そして、私の目の前に緑色で透き通る物が現れ、


「何これ? なんだか古代遺跡に在った透明の板みたい……」


 私は、昔にお父さんに連れられ訪れた古代遺跡を思い出し、そんな懐かしく暖かかった想い出へと手を伸ばしていた。


 延ばした手が想い出を壊さぬようにと優しく触れた瞬間、


『生体認証完了……ロックヲ解除……解錠ニ成功、扉ヲ開キマス』


 再び鳴り響いた音に私は想い出から現実へと引き戻され、


「あっ……っ!?」


 消えていく想い出に言葉を溢した。

 しかし、そんな感傷に浸る間も無く私は目の前で起きている事に驚いて目を丸くして、口を開けて驚いた。

 

 目の前にある銀色の門が独りでに開いていくからだ。

 

 私が、そんな現実的ではない出来事に目を白黒とさせている間に、扉は完全に開き切り、扉の中から光を放出していた。


 そんな光景に、


「嘘……小さな太陽がいっぱい……」


 自分の目に移る光景が信用できなかった。

 私の目の前には、まるで道を照らすかのように小さな太陽が幾つも並ぶ白銀の洞窟が、扉の先に広がっていた。


 私は驚きのなか白銀の洞窟へと目をむけると、何かに呼ばれた、そんな気がして白銀の洞窟へと足を進めていた。


 長く長く続く白銀の洞窟を私は、その何かに向かって無心で進んで行った。

 しかし暫く進んだ時だった、私の目の前は、 


「あれ? 行き止まり?」


 壁になっていた。


 しかし私は、この先に絶対何か在る、と感じ、壁の周りを調べて回った。

 暫く探してみたが


「何で何も無いのよ……」


 何も見つからなかった。


 私はそれでも諦められずに、壁を叩いてみたり、擦ってみたりと、いろいろと試してみるが、何も見つからない。

 そうやって諦めずに試していたけど、何も見つからない、という現実に私は、


「もう!! なんなのよ!! ……あっ」


 苛立ちから壁を蹴っていた。

 すると、壁を蹴ると同時に目の前の壁が剥がれ落ち、中から再び透明の緑の板が現れた。


 私は、何も考えずにその板へと手を翳していた。

 私の手が板に接触すると、目の前の壁が音を立てて、再び独りでに開いていく。


 私は壁が開くのをじっと見つめ、その先に在る、私を呼ぶ何か、へと期待を高鳴らせた。


 独りでに開く壁が遅く感じる。

 期待で私は、早く早くと、心で念じ、バタバタと足踏みをして、今か今かと開くのを待っていた。


 そして、壁が開ききった。

 

 私は飛び込むようにして、開いた壁の向こうへと体を潜らせ、


「何これ……大きな場所…… それに大きな太陽!?  何この場所!!凄い!!」


 目の前に広がった空間と、空間を明るく照らす一段と大きな光の玉を見上げて、子供のようにハシャイでいた。


 そんな地上では見る事もできない光景に私は心を躍らせ、何処を見れば良いのかと当りを見回し、躍る心のままに高揚する気持ちと、好奇心に掻き立てられていたが、


「っ!! あれだ!! あれが私を呼んでいたんだ」


 空間の中央にある何かが視界に映った途端、私の心はその一点へと集中し、自然と足がその何かへと進んでいた。


 その私の目に映る何かは、大きな光の玉に照らされ、遠くからではそれが何なのかは判らなかったけど、近付くにつれ、その何かの輪郭がはっきりとし始め、流行る心ままに足を進めると、


「えっ……人!? 人が筒の中で寝ているの?」


 透明の筒の中に浮かぶ人が飛び込んできた。


 筒の中で、まるで眠るように浮かぶその人に、


「彼方が私をここに呼んだの?」

 

 私は、声を掛けていた。


 その時、


『侵入者ヲ感知……侵入者ヲ感知……システムエラーニヨリ迎撃機能停止……々』


 けたたましく鳴る不快な音と共に、扉の声が空間へと響き渡り、部屋を照らす球体が赤く点滅をし始めた。

 

 突然起きた異変に、


「え? 何? 何が起きたの?」


 私は不安と、何が起きたのか分からない恐怖からパニックに陥り、辺りをキョロキョロと見回していた。


 そんな私の耳へと、


「嫌……そんな……」


 怨みと絶望の唸り声を上げ、黒く重たい足音が、洞窟内を木霊しながら近づいている音が届き、私は拒絶の言葉を吐き出したが、


 「きゃぁぁ!!」


 入ってきた壁が、大きな音と共に煙と破片を飛び散らせ、その衝撃で私を吹き飛ばした。


 吹き飛ばされた私は壁に叩き付けられ、口から声に成らない息を吐き出し、朦朧とする意識の中、この世は理不尽だと、再び現実へと引き戻された。 


 目の前の出来事に私は現実を忘れて、生きてしまった絶望を忘れていた罰なんだ。

 

 私は懺悔の思いの中、再び迫る死を連れた黒い影にそっと目を閉じた。


 そんな私の前へと、一歩、また一歩と、重たく黒い足音が近づく。

 音が近づく度に死が近づき、そして恐怖が私の心を押し潰していく。

  

 覚悟を決めたはずなのに…… 


 私の心は、


「嫌だ…… 私は……私は……」

  

 砕けていく。  


 そんな私の真っ白な視界の中に家族の顔が浮かぶと、


 私は必死に生きるためにもがき始める。


 迫る死から、惨めに這いつくばってでも身体を動かし、少しでも遠ざかろうと必死に。


 しかし私へと伸びる黒く赤い影は、着実に死を連れて迫り、その身体で私を覆い隠していく。


 徐々に私の身体を侵食する死を連れた影。

 

 しかし、脳裏に浮かんだ家族の笑顔から、


「死にたくない!!」


 私は叫んだ。


 守られ、生かされた命、それに報いるためにも、ここで諦めない。 

 死の直後まで、足掻いて、足掻いて、ほんの数秒でも永く生きてやる。


 そんな私の叫びが木霊するが、迫る死の影が私の全てを覆い隠した。


 私は覚悟をするように目蓋を強く閉ざす。

 しかし、いつまでたっても死の影は私を覆い隠したままで動かない。

 そんな状況に私は恐る恐る目を開き、影へと振り替えた。


 すると、


「たく、目が覚めたと思ったら何やってやがる女。高々キメラ相手になんて様だよ」


 私の目の前には、軽々と血濡れた爪を片手で止める彼の姿があった。


 そんな彼へと、怨念を増した唸り声を上げる死を連れた黒い影は、父を貫いた牙を彼に突き立てようと大口を開けて迫る。


 其に彼は全く気付かずに私へと首を傾げていた。 


「危ない!!」


 私は彼目掛けて迫る牙に、死を知らせるために声を上げる。

 すると、鈍く硬い音が響き次の瞬間、私は目を疑う。


 私の叫びなんて気にしないかのように彼は影へと振り替えり、まるで邪魔な物を振り払うように腕を振り抜くと、死を連れていたはずの影は、彼の腕によって引き裂かれ断末魔を上げていた。

 

 そして枚散る影の断片を背にして私へと振り替える彼に、


「ルシフェル様……」


 お母さんが聞かせてくれた、おとぎ話の天使を重ねて、その名を呼んでいた。

 




 しかし、


 人を捨て、月へと旅立った天使と神様だったが、1人の天使が、灰た大地に暮らす人類は十分に贖罪を果たした。

 

 そう神に告げると、反対する神や他の天使の怒りを物ともせず、その身に宿した光輝く八枚の羽を広げ、贖罪を遂げた人類を花咲く緑の星へと連れていてくれたという。

 

 そんな、おとぎ話に登場する天使の名を。






 だがしかし、


「臭い……」

 

「え?」


「それに酷い姿。身体は泥まみれで、顔まで薄汚れとか、久しぶりに会った女が此れとか無しだろ。あぁ助けるんじゃなかった」


 私のおとぎ話は、彼の天使あるまじき発言によって全てをぶち壊され、


「あの、私を花咲く緑の星へ連れ行って来れるんですよね?」


 幻聴だと振り解いたように振り絞った私の言葉にも、


「あぁ? なんだそれ? さっきから可笑しな事を言う女だな。頭大丈夫か?風呂でも入れよ」


 更に最低な言葉と共に、人を小馬鹿にした、最低で最悪な態度を返してきた。


 そんな彼を、あの天使様と重ねてしまった自分と、私のおとぎ話を完全にぶち壊した彼への怒りに身体を震わし、


「最低!!」  


 ありったけの思いを叫ぶけど、


『電源ノ消失ヲ確認……退避ヲ警告……退避ヲ……退避ヲ……』


 意味が分からない、扉の言葉が響いく。


 その扉の言葉に彼は、


「げぇ、マジかよ。はぁ……起きてから録な事が起きないなまったく」


 私へと怪訝な顔を見せ一瞥すると、私に背を向け頭を掻きながら壁へと歩き始めてしまう。


 本当に何なの? 


 私は意味が分からないままその場にで困惑しながら彼の背中を見つめていた。



「くそ、錆付いてんな…… あーダルイ。面倒…… この掛かれ……この……」


 何かを見つけた彼は、なにやら小言交じりに、変な馬?のような黒い塊に話しかけ始め、蹴ったり、叩いたり、跨っては何かを捻っては踏みつけてと、奇行を始めてしまう。


 そんな彼を私は、頭が可笑しくなったんだ、という思いを浮かべながら、この先どうしたら良いのかと考えていた。


 そんな風に先にの事を考えていると、突然、低く乾いた重い轟音が響き渡った。


「えっ?何? なんなの?」


 その音に私は驚いて声をあげ、轟音の元へと視線を向けていた。


 轟音は、先ほど彼が奇行の数々を繰り広げていた黒い馬の唸り声だった。


 そんな轟音を轟かせる黒い馬に彼は跨ると、私へとその馬を走らせ、


「……まだ居たの? てか、とっとと退避するか、家に帰れよ」


 私の目の前に止まり、轟音で唸らせる黒い馬の鳴き声の中、呆れた表情で声をかけて来た。


 私はそんな彼の言葉に、


「……帰る場所なんて……もう無いよ」


 小さく呟いた。


 そんな私の小さな声は、馬の唸り声で彼には届いていないだろう。


 しかし彼は、


「はぁ……乗れよ女。どうせ行く当てが無いなら、どこか知り合いの居る町まで位なら連れて行ってやるからさ」


 ため息を一つ付くと、黒い馬の背中を指差し、今までに見せた事も無いような優しい笑顔を見せてきた。

 私はその笑顔に一瞬鼓動が早くなるを感じると同時に、


「女じゃない!! 私にはルナって言う、お母さんとお父さんに付けてもらった大切な名前が有るの!!」


 女と呼ばれる事が堪らなく嫌だと感じ、何も考えず感情的に叫んでいた。


 そんな私の言葉に彼は一瞬だけ目を丸くさせたが、


「悪い悪い。じゃぁルナ、近くの町まで乗っけて行ってやるけど乗るか?」


 再び私へと、アノ笑顔を向けて私の名前を読んだ。


 なんだか顔に熱がある様に感じ、その顔を彼に見られるのが嫌な気がして私は俯きながら、


「うん……」


 彼へと手を伸ばしていた。


 そんな私の手を彼は掴み、一息に私を轟音で唸る馬の背中へと引き上げ、


「どうだ乗り心地は?」


 そんな言葉を私へとかけてくる。


 だけど私は、


「名前……」

 

 そう呟いていた。


 そんな私の小さな声に、


「ああ?なんてった?」


 彼は首をかしげるので、


「だから名前!! 私は名乗ったんだし貴方も名前ぐらい言いなさいよ」


 なぜか判らないけど、顔が火照る。

 そんな火照りに感情を掻き乱され、つい感情的に大きな声を出すと、


「ふっ……ソル。それが俺の名前だ」


 彼は小さく笑い何かを考えると、ソルと名乗った。


 そんな彼の名前に、


「ソル……」


 なんだか温かさを感じ、私は彼の名を繰りえしていた。


 そんな私の言葉に、


「そろそろ口を閉じてろよ。こいつはじゃじゃ馬だから舌噛むぞ」


 そう告げると、手に握った手綱を捻る。


 捻られた手綱に黒い馬は更に大きな轟音で唸り始め、


「えっ!! ……きゃぁぁぁぁぁ!!」


 私がその轟音に驚き不意に彼の背中にしがみ付くと、黒い馬は想像もしない速さで動き始め、私は感じたことも無い恐怖から叫び声を上げた。


 これが私と彼の、最低で最悪で、でも温かくて大切な始めての出会い。







 そんな出会いを思い出しながら、


「ねぇソル。覚えてる私との始めて会った日を」


「なんだよ今更……そんな昔の話……」


 目の前一杯に広がる満開の花が咲き誇る緑の丘の上で、私と彼は背中合わせに言葉を交わし、


「むぅ、大事な思い出なんだよ私にとってわ」


「そうか……覚えて……る……よ……」


 私の大事な話しの中、彼の声は段々と小さくなり、


「もう! またソルは話の途中で寝ちゃうんだから。今日くらいは私の話を…… はぁ……寝ちゃったか……もう…… でも今日は何だか私も眠いや……温かいねソル…… まるで始めて貴方の名前を聞いた時みたいに……」


 そんな彼へと私は文句を言うが、背中に感じる彼の温もりに、私も今日はなんだか眠くなり、眠る彼に背中を預けて私も瞼を閉じ、彼の温もりに包まれるように眠りへとついた。


 そうこれは長く永く続いた彼と私の、寂しくて温かいそんな【おとぎ話】の始まりと終わりの物語。

  

 

読んでいただき、ありがとうございす。

もしよろしければ感想などいただければ幸いです。

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