異世界傭兵稼業
世の中には「理の法則」がある。
そして、その「理の法則」が時として崩れ去ることがある。
人々はそれを、「奇跡」と名付けた。
今、一人の青年がその「奇跡」を目の当たりにする事になるとは、この時は誰も知らなかった。
「あー、暑い・・・どれだけ働きゃ良いんだよ・・・」
8月の暑い夏の日、一人の青年は警備員の仕事をして日銭を稼ぐ毎日を送っていた。
外の気温は38℃、茹だるような暑さで陽炎と合わさりそのシルエットはゆらゆら揺れていた。
「おーい!佐久間、お前そろそろ上がれ!交代だ!」
一人の大男がその青年に声を掛ける。野太いその声が青年の耳に引っ掛かる。
「ウィース、木村さん。じゃお言葉に甘えて先上がらせてもらいますね。」
この木村という大男、高校を卒業して引きこもりだった青年を家から引っ張り出して仕事を紹介してくれた恩人なのだが、いかんせん体格よろしく脳筋気質で何かあればすぐに「根性!」の一言。
仕事を紹介してくれた事には感謝をしているがあまり自分とは合わない、と心から感じる。
仕事道具を片付けて控室に向かおうとしたその時、警備していたビルの上から大きな物音がしたのでその音の先に顔を向ける。すると咄嗟に体が動き出した。
「木村さん!!」
ビルの上の看板のネジが緩くなっていたのか上から大きな看板が落ちてきていた。
その真下には、そう、木村さんが丁度立っていた。
咄嗟の出来事であまり覚えていないがガムシャラに走った。
そう、木村さんを助けるために。
「佐久間!!」
その後のことは何も覚えていない。そう、何も・・・