白騎士の末路
地震の後、指輪からレーザー光線が出て、僕の歩むべき道を示した。
僕はそれに従って行くかどうか迷ったけど、決心を決めて家を飛び出した。
これまで、指輪は僕の不利に働いたことはなかった。
それならば、指輪に導かれても、悪いことにはならないだろう。
そう思って、僕は指輪の光りの方角へ走り出した。
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僕は結局、町外れの工事現場に来ていた。
僕しか入れない、あの穴に入って歩いた。
ゴゴゴゴゴ・・・
また、地震だ。何が起きているのだろうか。
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どれくらい歩いただろうか、いくつもの分岐を導かれるままに進んだ。
そして、少し広い広場に出た。
そして、その広場に倒れていたのは、白の騎士ダンセポピレプだった。
声を掛けても返事はない。
その身体を揺らしてみたが、やはり反応がない。
指輪をもらったときに見た、黒の機械兵士ブットテナイにやられてしまったのかもしれない。
道理で通信機である指輪に向かって、こちらから呼びかけても返事がないはずだ。
なんてことだ!
ということは、ブットテナイは野放しになっているということか。
僕がボタンを押して蘇らせてしまったブットテナイ。
世界征服を高らかに宣言した奴に対抗しうる白の騎士は倒されてしまったのか。
僕は愕然とその場に立ち尽くした。
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どれくらいそこにいただろうか。
いつまでもそうしていても仕方ない。
僕は白の騎士が持っていた小型の剣をもらうことにした。
そして、剣をカバンにしまって、来た道を引き返した。
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ゴゴゴゴゴ・・・
出口に向かって歩いている間も、何度も小さな地震があった。
しかし、今回はかなり大きい。
どうやら、洞窟が崩れる感じがある。
僕は洞窟の崩壊を逃れるため、出口まで全力疾走した。
ゴゴゴゴゴ・・・
ゴゴゴゴゴ・・・
ゴゴゴゴゴ・・・
走って、走って、走った。
汗がしたたり落ちる。
心臓がギュッと捕まれて、息が切れる。
洞窟の完全崩壊は、もうすぐだ。
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間一髪だった。
僕が出口に飛び出したところで、洞窟とその周辺の大地が地下に飲み込まれていった。
大きな音がして、工事現場ごと地面に吸い込まれていった。
その工事現場はビルを建てているところだったのだが、ビルの全部がどんどん地下に沈んでいった。
恐ろしい光景だった。
僕はそこから出た後も、走って走って家に帰った。
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心臓がずっとバクバクいっていた。
僕が工事現場から出てくるところを誰かに見られていなかっただろうか。
ビルの崩壊を僕のせいにされてはたまらないな。
家に帰ってTVを付けると、あの工事現場跡が映っていた。
アナウンサーが大声で現場を中継している。
「見てください!先ほどの大きな地震で建設中のビルが崩れ、陥没してしまいました。」
たくさんの野次馬が町外れに集まっているそうだ。
一体、これから何が起きるのだろうか。
その後、指輪は光らなくなった。
僕は恐怖を感じながらその夜を過ごした。
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僕の心配とは関係なく朝が来た。
僕は全力疾走して疲れていたので、恐怖心とは別に、しっかり眠ってしまったらしい。
朝起きたら、頭がすっきりしていた。
そして、居間に降りた。
当然のように、そこには、父親と母親がいて、パンを食べていた。母親が声を掛けてくる。
「おはよう。ようやく起きたの?早く食べないと遅れちゃうよ。」
「おはよう。あ、ぁ。そうだね。」
僕は、昨日のことを忘れたように、学校に行った。