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指輪の力

 あれからしばらく地下を歩いていたが、特に何もなかった。坑は深くどこまでも続いており、1時間ほど進んだが何もなく、とうとう怖くなってそのまま戻ってきた。


 地上に戻ると博士は日陰にうずくまって、汚いノートに何かを書き殴っていた。僕が声をかけると博士は、息をぜぃぜぃ言いながら「ど、どどど、どうだった?」と聞いてきた。


 地上に戻ると当然のように博士にいろいろ聞かれた。収穫ゼロだと伝えると、ちょっと残念にしていた。


 それでも、博士は「と、っとに、かく、君が無事で良かった」と言ってくれた。僕が信頼できる数少ない人間の一人だ。


▲ ▲ ▲


 僕たちは博士の狭い部屋に戻った。博士は僕の指輪の写真をいろいろな角度から撮影した。そして、パソコンで読み込んで、何かしらの解析をはじめた。


 「博士、これ、何やっているの?」


 「うん、ピーター、い、良い質問だ。あ、あれだ、あれだよ。い、色とか、か、形とかを元にして、似たものが、こ、これ、これまでに、見つかってないか、え、ええ、AIで探しているんだよ。AIの中でも、くく、クルニー・ボロワーが発見した、シャウエッポートっていうアルゴリズムで・・・」


 その後、博士が専門用語をいろいろ言っていたのだが、僕はいつも通りスルーした。ただ、その解析にはとにかく時間がかかるそうだ。僕は暇になったので、指輪をはめてそのまま家に帰ることにした。


▲ ▲ ▲


博士のぼろい家からの帰り道、指輪が急に光り出した。一体何事だろう。


すると、交差点の向こう側を一人の女生徒が通過するのが見えた。しかも、それは僕が大好きなクラスメイトのメルルだ。おぉ、指輪が光らなかったら、きっと気付かなかっただろう。なんだ、この指輪。


とは言え、コミュ障の僕は、その華麗な歩き姿を後ろから眺めることしかできない。当然だよね。声なんか掛けても、何しゃべって良いか分からないもの。


そのとき、メルルが僕の方を振り向いた。僕の視線に気付いてしまったんだろうか。僕はドギマギして目を地面に落とす。僕は顔が急に紅くなる。


ずっと見ていたいけど駄目だ。挙動不審に見られたかな?うー、どうしたら良いのだろう。


ところが、メルルは、あろうことか僕に大声で呼びかけてきた。


「あー、ピーター君だ!おーい!私だよー!!」


こうなっては、さすがに無視するわけにはいかない。僕は顔をあげて恥ずかしそうに手を顔の位置まで持ってきて、小さく手を振って「ども」とだけ言った。


そんな僕を見てメルルは、小さく笑ってから、また大声で言ってくれた。


「また明日ね!ばいばいーい!」


僕も小さな声で答える。「また明日!」



なんとっ、大好きなメルルが・・・僕に声をかけてくれるとは!何の奇跡だろう。この指輪の力?


その後、僕は家までウキウキで走って帰った。


▲ ▲ ▲


ガタガタ、ガタガタ、ごごごごご・・・

ごごご、ごごご、ガタガタ、ガタガタ・・・


夕方、長い地震があった。

何かが地下で起きているのだろうか。

不安だ。


そんな時、指輪が光った。

指輪からレーザー光線が出る。その光線は一方向を指し示す。どうやら南東の方角を指しているようだ。


どうしたら良いだろうか。指し示す方向に行った方が良いだろうか。それとも、行かない方が良いだろうか。


光は町外れの工事現場の方角を指している。


危険かな?

大丈夫かな?


僕は迷った挙げ句、行くことにした。



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