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白い騎士と指輪型の端末

 スイッチを押したら古代文明の王が蘇ってしまった。

 僕は走って逃げる。そのとき、僕の手を引く者がいた。

 「こっちへ、こっちへ、早く、こっちへ。」


 僕は手を引かれるまま、洞窟の奥へと走る。


 誰が手を引いてくれているのか。しかし、今はそれどころではない。走って、走って、小さな部屋に逃げ込んだ。


 シェルターの扉が閉じる。いったいここはどこだ?


 「大変なことになった。」


 その機械の騎士は言った。やはり耳から聞こえてくる声の意味は分からない。しかし、意味は頭の中に直接響いてくる。


 「あなたはいったい・・・」


 僕が問いかけると、彼は答えた。


 「わたしの名は、ダンセポ・ピレプ。君たちから見たら、数万年前に生まれた機械騎士だ。」


 「さっきの機械兵も数万年前だって。あなたたちは、ずっとここで暮らしてたの?」


 「いや、私たちはずっと眠っていたのだ。数年に一回は最低限のメンテナンス機械が動いてくれていたが。。。君たちの持つ技術のパソコンで言えば、スリープモードのようなものだな。」


 「スリープモード?! に、人間ではないの?」


 「かつては人間だった。人間の命は短いだろう。しかし機械の身体を手に入れたのだ。だから、メンテナンスさえしっかりしていれば、まだ何万年も生きられる。」


 「そ、そんな、技術が・・・、でも、どうして、眠っていたの?」


 そのとき、外で爆発が起きて、部屋が揺れる。


 「詳しく話している時間はないようだ。この指輪型の端末を身につけておけ。」


 僕はその指輪を右手にはめる。ズキッと身体に弱い電流が走る。


 「これは・・・」


 「それを使えばいつでも私と話ができる。これから地底でやつと戦ってくる。まだやつも全力を出せない。しばらくはやつを封じ込められるだろう。ただ、君がいては邪魔だ。地上に射出する。連絡を待て。」


 そう言うと、僕の意識は吹っ飛んだ。気づくと、工事現場の外で横たわっていた。僕は立ち上がる。


 「うぅぅ・・・何だったんだ。」


 相変わらず、ジリジリと強い太陽が照りつけている。


 そのとき、いじめっ子のケケトナの声が聞こえてきた。


 「いたぞ、ピーターだ。」


 呆然としていた僕は、ケケトナとその取り巻きに捕まって、ボコボコに殴られた。体中が熱い。


 そして、財布を取り、お金を抜き取り、空の財布を僕に投げつけた。


 「フハハハ。良い運動させてもらったな。バイト代としてもらっておこうか。」


 「やめろ!」


 僕が叫ぶ。僕は夢中でケケトナに掴みかかった。そのとき、指輪が光り、ケケトナが崩れ落ちた。


 何が起こったんだろう。


 取り巻きは倒れたケケトナに駆け寄る。僕も心配になりのぞき込む。大丈夫だ。少し苦しそうにしているが、息もあるし、ちょっと痺れただけのようだ。


 その隙にお金を取り返し僕は逃げた。


 どうやら、取り巻きも驚いたようで、それ以上追ってくることはなかった。


 しかし、僕は傷だらけの泥だらけだ。


 家について、お風呂に直行する。シャワーを浴びると、ズキズキと体中が染みた。


 お風呂を出たら、母親が帰ってくる前に、身なりを整えベッドに直行する。


 疲れた。とにかく訳が分からない。


 今分かっていることを整理してみよう。


 失われた古代文明の技術が、地底に眠っていた。そして、僕がその眠りを覚ますスイッチを入れてしまった。


 真っ黒な機械人間、確か名前は、ブットテナイ。やつは世界を征服すると言っていた。


 そして、見方になってくれたのは、白い機械騎士、ダンセポ。


 「分からない。これから何が起きるのだろう」


 僕はため息をついて、ダンセポのくれた指輪を眺めた。この指輪は通信装置だと言っていたが、あの陰険で暴力的な同級生ケケトナを撃退することができた。この指輪には通信装置以外の機能もついているようだ。


 買ったらものすごく高そうだ。


 僕はスマートフォンで通販サイトで指輪型端末を調べていた。だが明らかにこの指輪は現代の技術を遙かに超えた力を持っている。


 そうこうしているうちに、僕は眠っていた。


 疲れていたのでぐっすり眠った。


 戸外では蝉がものすごい勢いで鳴いているが、僕の耳には届かなかった。


 ドンドンドン。


 僕は荒っぽいノックで目が覚めた。


 目を開けると、太陽が傾いていた。


 「ピーター、居るの?ご飯できたよ。」


 パートから帰ってきた母親の声だ。


 僕が寝ぼけた顔で出て行くと、母親が驚いた顔をしていた。


 「ピーター、どうしたの?そんな傷だらけで。」


 「う、傷だらけ?道理で体中が痛いはずだ・・・」


 「どうしたのよ?」


 心配そうな顔でのぞき込んでくる。


 母親に心配は掛けたくない。僕は適当に言った。


 「みんなで工事現場に入り込んだんだけど、穴に躓いて転んだんだよ。」


 「まぁ。そんな危ないところに入り込んで・・・」


 心配が怒りに変わるのが分かる。


 「工事現場に入ったら危ないでしょ!この子はもう!」


 「大丈夫、工事してなかったし、」


 母親の言葉を遮って、TVをつけた。夕方のニュースが流れる。注意を反らそう。


 「ピピピ - 速報です。本日午後より断続的に弱い地震が発生しています。震源はスカチアコ。ただし、通常の地震とは異なる波長で・・・まるで地下で爆発が断続的に起きているようです。」


 「あらまぁ、隣町のスカチアコで爆発?なんだか怖いわね。」


 速報のおかげで母の注意は一気にテレビに移った。


 しかし、これは、もしかしなくても・・・地底でダンセポが戦っているのだろうか。地震として観測されるなんて、どれだけ激しい戦いが起きているんだ。


 僕は食後に部屋に戻ってから、指輪に話しかけたり、こすったりしてみた。しかし、何の反応もない。まさか、倒されてしまったのではないだろうか・・・、恐怖を感じる。


 父親に相談すべきだろうか?


 僕は家族でテレビを見ながら、父親を見た。


 冴えない僕と同じく、冴えない父。


 僕がじっと父親を見ているのに気づいて、父親が口を開いた。


 「どうした、ピーター。何か言いたいことがあるなら、聞いてやるぞ。」


 僕と同じく冴えない父が、おどけた声で言った。


 「何でもない。」


 やはり、この人に相談したところで、何の役にも立たなさそうだ。僕は冷たく言って、部屋に戻った。


 僕が部屋の扉を閉めると、外で両親の会話が聞こえてきた。


 「ピーター、今日傷だらけなのよ。きっと何かあったのよ。」


 「男の子だからな。男には両親に話せないこともあるよ。大丈夫、ピーターは僕らの素直で可愛い子供だ。もう少ししたら話してくれるさ。今は陰から応援してあげよう。」


 父は頼り甲斐こそないが、悪い父親ではない。


 僕はB5ノートを開いて一人で戦略会議を始めた。


 そのノートに書かれているのは、人には見せられない。日記と空想。ノート一杯に、様々なキャラクターとその必殺技が詳細に記されている。


 だが今日からそのノートに記されるのは、真実の記録。古代文明とその失われた技術だ。慣れた手つきでペンを走らせる。


  ■(自分)ピーター・コセイリ

  |経歴:人間。高校生。勉強も運動も苦手。

  |装備:古代文明が残した指輪型端末。

  |   通信機能+外敵排除の電撃の機能を持つ。


  ■(仲間)白の騎士 - ダンセポピレプ

  |経歴:数万年前の古代文明の生き残り。機械人間。

  |   助けてくれた。

  |   指輪をくれたことからも敵ではない。

  |装備:不明


  ■(敵)黒の機械兵士 - ブットテナイ

  |経歴:数万年前の古代文明の生き残り。機械人間。

  |   世界征服を高らかに宣言している。

  |装備:不明


 明日になっても連絡がなければ、もう一度、工事現場に行ってみるしかないだろう。ただし、一人では心許ないな。


 そうだ。明日、博士に会って聞いてみよう。僕は博士に明日面会を申し込む。


 博士とは、本人曰く大学の偉い先生だ。僕のプログラミングの師匠でもある。だが、いつも家に居るし、着ている服はボロボロだし、部屋も汚い。どう考えても偉い先生のはずはない。


 翌日。僕は博士の家を訪ねる。




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