15.必要なのは「それっぽさ」
デメリット。
なんでも来いとは格好つけたが、本が読めなくなるような疵瑕だったらどうしようか。
いやでも、わたしの「ギフト」が読書を前提としている時点で、直接的にそれに干渉したり、妨害したりするようなデメリットはないではないかと思うのだけれども。
わたしの思考を読み取った様に、神様は口角をあげた。
「でもまあ、アタシはね、カ・ミ・サ・マ。世界の発展は吝かではないのよねー。それに、同じ穴の狢っていうか? あんたのことアタシ割りと好きだしね。
いやまあ、デメリットがなくなるわけではないんだけどねー! あっはっはー!」
「同じ穴の狢? ええとそれは……」
「まあそれは置いとくとしてね。この図書館はなんかこう……カミサマぱぅわー的なあれで、ミッドガルドとは別の時間換算になってるのよね。それに伴って、この中の言語体系も地球換算になっているというか……んんん」
神様ぱぅわー。あまりにも聞きなれない単語が聞こえたが、前後の文脈から意味を類推する。
多分神様がどうにかしてくれるってことかしら。
うんうん唸って頭を使っている神様を、これ以上悩ますこともなかろうて。
脳の中のウェルニッケの波を捕まえたのか、神様は顔を上げた。
「つまりはさ、この図書館とここミッドガルドは、別の法則に則って動いてんの。だから時間も言葉も別になってんのよ。で、そこを関係させようとしてもさ、なんも関連がなさ過ぎてお手上げになっちゃうわけ。
とりあえずなんか一つでも異世界と地球のものを揃えられるなら、あとはカミサマぱぅわーでどうにかなるんだけど、さあどうしましょ、って訳」
縁もゆかりも何もないもんに、「それっぽい」感じの共通点をつくるって、イミわかんないんだけど。
ぼやくように吐き出して、神様は空中に寝そべった。
図書館のよくある机の上、言葉通りの上の方、肘をついてごろりと神様は横になった。
わたしも息を吐きだすように、ふむ、と音をこぼした。
共通点。二つ以上の物事のどちらにも当てはまること。
目をやってあたりを見回せば、そこに広がるのは市井のよくある図書館である。
木製の机に、頑丈なつくりの椅子。少し色あせ毛羽だった赤色のカーペット。本が納められた木製のラック。少し黄ばんでしまった、淡い色合いのカーテン。
この内装が異世界仕様ならば、それだけで共通点なりえたのではないか、という思考が頭の片隅をよぎった。
ぶんぶんと頭を振って、望みの環境を壊すような、不埒な思考を片隅に追いやった。
こんなに夢のような図書館なのだ。
どこかでみたことのありそうな内装といった「図書館らしさ」を完全に完備していることに加え、本の種類や量も申し分なく、+αのオプションまで常備されているのだ。
わたしが望めば、紙と筆記具がどこからともなく現れることをはじめとし、飲み物や軽食がいつの間にか用意される。ご丁寧に飲食スペースまで用意されている。勿論検索システムや、怪我をした際のばんそうこうまで完全完備。
あまりにも居心地が良すぎるので、いつまでも籠れてしまうのだ。それこそ、自分の使命をそっちのけてしまえるくらいには。
頭をよぎった、あんまりにも僭越な感情を、頭を振って脳内から塵ひとつ残さず追い出した。
ふと、シェイクされた脳が、ひとつの考えに思い至った。
図書館における共通点となりえるもの。
「……時間制限」
どうにか形になったので怒濤の投稿ですー
ゆっくりお付き合いいただけると有難いです。




